【名前は湾曲した葉脈の形を、ツルが羽を広げ舞う姿に見立てて】
キジカクシ科マイヅルソウ属の多年草。北海道から九州まで広く分布する山野草で、主に山地の針葉樹林の下に群生することが多い。草丈は10~25cmで、5~6月頃、茎の先に長さ2~5cmの短い総状花序を立て白い小さな4弁花を20個ほど付ける。花弁は反り返り、雄しべ4本が飛び出す。主に東日本に自生する近縁種ヒメマイヅルソウは全体的に小型で、葉が細長く裏に毛が生えているのが特徴。
舞鶴草の名は葉脈が先端に向かって湾曲する様子を、ツルが羽を広げて舞う姿に見立てたという。その葉脈の模様が家紋の「舞鶴紋」に似ていることから、ともいわれる。さらに、2枚の大きなハート形の葉を広げて花が咲く様子を舞うツルにたとえたとの説もある。いずれにしろ、地味な花姿の割には優美な名前を付けてもらって満足に違いない。
マイヅルソウには北のものほど大きく、南に行くほど小さくなる傾向がある。例えば葉の長さ。北国では10cmにもなるが、南限といわれる屋久島では1~2cmほどしかないという。固有種が多い屋久島は矮性植物が多いことでも知られる。マイヅルソウは和歌山や兵庫県などの絶滅危惧種、ヒメマイヅルソウも愛知や茨城、福島県などで絶滅危惧種に指定されている。マイヅルソウの花言葉は「清純な少女の面影」。「少女らのおもかげありて舞鶴草 白くさやかに咲きひろがりぬ」(鳥海昭子)