【リュウキンカの変種、六甲高山植物園から昭和天皇に30株を献上】
キンポウゲ科の多年草で、全国各地の山地の湿地や渓流沿いなどに群落をつくる。5~6月頃、細い茎の先に直径3cmほどの黄金色の花を1~2輪ずつ付ける。花びらのように見えるのは萼片(がくへん)で、通常5枚の花が多いが、それ以上のものもある。多数の雄しべも鮮やかな黄色。葉は艶のある円心形~腎円形で、縁にはギザギザの鋸歯が入る。
リュウキンカ(立金花)の変種。リュウキンカの花茎がまっすぐ立ち上がるのに対し、エンコウソウは茎が斜めに伸びて四方に広がる。その様子を古く「猿猴」と呼ばれたテナガザルの手足になぞらえて命名されたという。花が終わると花茎は倒れて地を這い、茎の節から発根して翌年新しい子株ができる。キンポウゲ科の植物にはアルカロイドなどの有毒成分を持つものが多いが、このエンコウソウも低毒ながら有毒成分を含む。
六甲高山植物園(神戸市)には湿性植物区にエンコウソウの群落があり、例年この時期に見頃を迎える。1981年5月25日、同園を訪れた昭和天皇はその群落に強い関心を示され、後日宮内庁を通じて要請を受けた同園は30株を献上し皇居吹上御苑に移植したという。環境省のレッドリストにエンコウソウは載っていない。ただ都道府県段階では近畿~関東を中心に絶滅危惧種としているところも多い。京都府は「レッドデータブック2015」で、変異が大きいとして「エンコウソウ(リュウキンカ)」と区別せずに絶滅寸前種に指定している。