【別名「トリモチノキ」、近縁種がない1科1属の珍しい常緑高木】
ヤマグルマ科ヤマグルマ属の常緑性の高木。日本や朝鮮半島南部、中国南部、台湾などに分布し、高さは10~20mにも達する。日本では東北南部以南の山中の岩場や急な斜面などに多く自生する。花期は5~6月頃で、枝先に長さ10センチ前後の総状花序を伸ばし、黄緑色の花を10~20個付ける。花には花弁や萼(がく)がない。
「山車」の名は枝先に互生する葉の節間が詰まって輪生状に見えることや、花が子房を中心に多数の雄しべがぐるりと囲んで小さな車輪のように見えることによる。学名(属名)の「トロコデンドロン」も「車輪の木」を意味する。和名から植物学者のシーボルトが命名した。ヤマグルマは1科1属で、近縁種がほとんどない。広葉樹にもかかわらず導管組織を持たないのも特徴の一つで、根から吸収した水分は針葉樹のように「仮導管(かどうかん)」を通じて上に運ぶ。
別名「トリモチノキ」。これは樹皮から鳥や昆虫を捕まえる良質な鳥黐(とりもち)が取れたことによる。「トリモチ」や「モチノキ」などと呼ぶ地方も多い。ただ「モチノキ」は別のモチノキ科の樹木の標準和名になっている。モチノキから取れる鳥黐を本モチや白モチ、ヤマグルマから取れる鳥黐を赤モチと呼ぶことも。ただ鳥黐を使った狩猟が鳥獣保護法で禁止になってから需要は激減しているそうだ。京都市左京区の東禅寺にあるヤマグルマの巨木は「区民の誇りの木」になっている。