シドニーで金メダルを取り、“最強の柔道家”と呼ばれた井上選手。
最後の試合でもその最強の得意技で勝負を賭けた。
敗れはしたが、「得意技で負けたら仕方ない」と、今の自分の実力と
限界を悟り、悔いなく畳を降りたようだ。
引退はしても、今後も語り継がれるであろう日本の柔道を支えた
名選手のひとりであることは間違いなく、とにかくお疲れさまでした、
と言いたい。
ところで、断片的に言葉だけを拾って申し訳ないのだが、俺はこの
「仕方ない」という言葉がとても好きで、大阪では「しゃあない」という。
俺のブログでもたぶん何度となく出てくるであろうこの「しゃあない」と
いう言葉には、現代人が見失いつつある「潔さ」があると思う。
科学やITの発展で、実現可能なことがどんどん増えてるし、今や旅行
もインターネットでバーチャル体験しただけで満足する人も増えてきて
るという。そんな世の中やから、明らかな「自分の身の丈の範疇外」の
ことでも簡単に諦めようとしない。そこから無茶苦茶な発想が湧いて
きて、結果ロクでもないことをしでかす奴らが異常に増えている。
そんな中で、自分に「できること、得意なこと、一番輝くこと」だけを
ひたすら追究し、それで人に負けたら仕方ない、と諦めた井上選手の
姿勢は本当に美しく立派だった。
昨日いきつけの中華料理店で飯を食べてたら、このニュースを見てた
店のママが言った。
「ええがな、きれいな奥さんもろたんやし」
一生懸命店を守っているママもまたやはり、「しゃあない」ということを
よく知っているんやねぇ。