先週の日曜日(9/28)、就職のため、長女が沖縄に移住した。
実家にいる間には、とにかく成長して欲しいと思うあまり、小言ばかり
言ってしまったが、駅まで送っていった時にはどうしても涙がこらえき
れなくなってしまった。こっちが涙を見せると、相手が悲しくなるので
泣いてはといつも思っているのに、いつもそれができない。情けない
父親だと思う。
そして送ったあと、家に帰り、がらんとなった長女の部屋を見たら、今
度はもう涙がとめどなく流れて止まらなくなってしまった。まったく情け
ないにもほどがある。
娘は以前に、アメリカに1年、千葉に1年住んでいたが、それぞれに
送り出す時、俺はほとんど涙を流すことはなかった。それが何故今回
はここまで泣いてしまうのだろう。
それはたぶん、俺は、今回はいよいよ娘の“本当の旅立ち”だと感じ
ているからなんやろね。
前の2年間もとにかく娘の成長を願うのみだったので、送り出す時の
気持ちに変わりはないんやけど、それぞれがまだ、夢を叶えるための
“助走”みたいなもんやと感じてた部分があったんやと思う。おそらく
娘もそうやったんとちゃうかな。
でも今回は違う。目標としていたCAとして空の上に飛び立つ時がいよ
いよやってきた。まずは国内線からやけど、いずれは最終目標である
国際線のCAとして世界を飛び回る日もそう遠くはないやろう。
まさしく親元から空へ、本当に巣立っていく時がきたのだ。
親として一番嬉しいはずの子供の親離れ。でもそれが現実になろうと
する時、嬉しさと同じだけの寂しさも襲ってくる。まったく親というのは
なんと大変な仕事なんだろうとつくづく痛感させられる。
でも、この経験を通して再確認させられたことがある。それはやはり、
「親になるほど人間として勉強させられることはない」ということ。
娘達にも何度も話したけど、ホンマに俺は子供達に育ててもらった人間
で、きっと子供がいなかったら今よりもっとどうしようもない人間になって
いたことは間違いないと思うもんね。
まだ、結婚願望のない長女に話したことがある。
「結婚する、しないは自分で決めたらええけど、お父さんは女性はやっ
ぱり結婚して子供を生み育ててこそ自然やし、そこにこそ成長も幸せも
あると思う。だって女性が子供を産まなくなったら人類は滅びてしまうん
やから」と。
こう言ったことを長女はどう感じているのか知らんけど、願わくば仕事の
夢を叶えたあとは、結婚して親になって欲しい。
俺もそれまでにせめて、君の部屋をしっかりと見れるくらいまでにはなる
からね。
今それぞれに巣立った娘が2人、実家、つまり俺の家にに帰ってきている。
それぞれに事情があって、短期的にいるだけで、すぐまた独立した場所へ
戻っていく訳やねんけど、先日俺はその娘たちに説教をたれた。
まぁ、内容まではここでは差し控えるけど、娘達がいわゆる節度に欠けた行
動をとろうとしていたので、未然に注意したわけよ。注意した内容は客観的
に見ても正しいことやし、俺に非があるとすれば、ちょっと言い方がきつかっ
たかな、くらいのことやねんけど、それでえらく娘達がご立腹で、嫁から聞くと
もう二度とお父さんの顔なんかみたくもないし、口も利きたくない、というてた
らしい。
どうも言われた内容より、言われ方に腹を立ててるみたいで、全くなんという
のか、とても二十歳を越えた大人のすることじゃない、とは思うんやけど、まぁ、
そういう感情むき出しにできるのが親子の関係でもあるわけで、それはそれ
でええのかも知れんけどね。
いずれにしても俺は父親として子供に好かれようなんてことは一度も思った
ことはなくて、嫌われようがうっとうしがられようが、親として子供を成長させ
るような言動をすればいい、と思ってきた。
だから当然今回のことでも、後悔なんかしてないし、言い方だって親としてビ
シッというただけのことであり、なにも正す必要はないと思ってるわけで、つ
まり、嫌い、顔もみたくないと言われれば、それならさっさとこの家から出て
行けというだけで、それは本望。上等やないかい、ということや。
俺も親に何度も逆らってきたけど、俺が父親として年齢を重ねてきて、やっと
親に「いつか分かる時がくる」と叱られた内容が分かるようになってきた。
きっと二人の娘達もいつか俺の言ったことを分かってくれる―理解から納得へ
変わる―時がくるやろう。
だから最愛の娘たちよ、その時がくるまで、とにかく父親を何と思おうが勝手
やけど、社会の一員として人に迷惑をかけず、思いやりのある、しっかりと自
立した人間になるよう、努力することだけは忘れずにいて欲しいと思う。
「憎まれ甲斐」くらいは、せめて父親に残しといてくれんと困るしね。
大阪市中央区に月に約2回、お昼休みにとってもおいしいドーナツ屋さんが
やってくる。ドーナツ屋さんといっても店は自転車。だから必然的に運べる量
だけでの商売になるので、その数は知れている。加えてそのおいしさゆえに
大人気なので、すぐ行列ができ、30分もすればすぐに売り切れてしまう。
この間そこのドーナツ屋さんにえらい迷惑なおっさんが来てた。
そのおっさんは俺のすぐ前に並び、かなりの数のドーナツを注文したんやけど、
小銭の持ち合わせがなく、1万円を出しよった。まぁ、誰かに頼まれた分も入っ
てたりで、小銭を用意してこなあかんような小規模のドーナツやさんやとは思っ
てなかったのかも分からんから、これは仕方ないかも知れん。でもあかんのは
その後や。
もちろん、ドーナツ屋さんは、いつも100円単位の仕事をしてる訳で万札からの
お釣りなんか持ち合わせていない。「すいません、お釣りないんですわぁ」と
そのおじさんに言うと、おじさんは一応、「そうかぁ、ほな小銭探すわ」と言って
さいふをごちゃごちゃ探し始めた。そしたら結局注文した代金に50円足らない
小銭しか見つからなかったみたいで、「すまんけど、あと足らん分は今度払う
からこれで勘弁してーや」やって。
ええおっさんが、何十円を今度払うちゅうのも小さいし、そこらにコンビニ山ほど
あるんやからなんぞ買って両替してこよか、という考えが浮かばへんのもアホ
やし、何より、ほんならドーナツを1個減らして、ということが言えへんのがほん
まに悲しいまでに情けなかった。
でも、このドーナツ屋さんはえらいで。年の頃はまだ20台後半くらいやろうけど、
ドーナツを減らしてください、とも言わずに「はい、分かりました。また今度お願い
します」とだけ言わはったがな。
この人の長々としたトラブルのおかげでさらに長く長くなってしまった行列の人
たちをこれ以上待たせたらあかん、ということや、今後の商売のことも考えると、
このおっさんを適当にやり過ごしたほうがええ、というようなことを総合して考え
たんやろうけど、このおっさんとは正反対の見事な判断やったね。
きっと会社の女子社員達に「○○さーん、あそこのドーナツおいしいの。お願い、
買って来てくれなーい?」なんてことを言われてデレデレと買い物に来た情けな
いおじさんと、暑い暑い大阪市のビル街を自転車をドーナツ店にして頑張ってい
る青年。
穴の開いた人と穴を開ける人との力の差をみたような気がしました。