昨年以来、八ヶ岳山麓で10カ所の巣穴(ニホンアナグマ5、キツネ2、タヌキ2、放棄?1)を調査したので、結果をまとめておく。
(巣穴から顔を出した仔ギツネ)
(1)ニホンアナグマの巣穴: 3頭のニホンアナグマが冬眠に利用していたと思われる。7~8個ほどの出入口。
キツネが巣穴の近くに出没。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/1aaf33be40ea26ccba56c6a4395ec435
冬季(1月)の調査では、冬眠中のニホンアナグマは撮影されず、タヌキが巣穴の周りで撮影された。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/eb357ac09d26f5079c8aed521d142c1f
(2)キツネの巣穴: キツネが2頭の子育てに利用。数か所の出入口。
ニホンアナグマが巣穴の前に出没。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/e03c65d76c3f22bfc568dd56fe2cdda7
(3)ニホンアナグマの巣穴: 数か所の出入口は作られたばかりのようだった。
キツネの巣穴(2)から20メートルほどの距離。キツネが覗きに来ていた。ハクビシンが巣穴に侵入していた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/3ec5ac21481479a344ec7570521de2ee
(4)放棄?:10ヵ所ほどの出入口。
ニホンアナグマかキツネが作った巣穴の可能性があるが、これらの動物の出入りは確認できず、放棄された巣穴である可能性がある。
ハクビシンが侵入するのが撮影されたが、継続的に利用しているかどうかは不明。
調査したのは秋であり、春にはキツネか他の動物が子育てに利用した可能性がある。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/408db0a483dbaaf2da03d2ab1a922d24
(5)ニホンアナグマの巣穴: 1頭のニホンアナグマの出入りを確認。ニホンアナグマは、巣穴に戻る時に落ち葉を集めて巣穴を隠していた。
出入口は1ヵ所しか見当たらなかったが、他の出入口が落ち葉で隠されている可能性がある。
キツネとタヌキが巣穴の近くに出没し、野良猫が巣穴を覗き込んでいた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/100b808a5c7ca9e37a4aa5cea2877d13
(6)タヌキの巣穴: タヌキが子育てに利用。出入口は1ヵ所。
ニホンアナグマが巣穴を覗きに来ていた。ネズミが頻繁に巣穴に侵入していた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/bfbb17606c281bc2d50d8ea357b881f4
(7)タヌキの巣穴: (6)の巣穴から200メートルほどの距離。2メートルほど離れた2ヵ所の出入口。
少なくとも2頭のタヌキが出入りしていた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/a54363fdaffc4105a192ebe6d0d3000c
(8)ニホンアナグマの巣穴: タヌキの巣穴(7)から20-30メートルほどの距離、3ヵ所の出入口。
ニホンアナグマが新しい出入口を掘っている様子が撮影できた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/a9fde9ae7b7d0f47aa9aea5ad31b24d4
(9)ニホンアナグマの巣穴: タヌキの巣穴(6)から500メートルほど、ニホンアナグマの巣穴(8)から700メートルほどの距離。
明確な出入口は1ヵ所だが、掘りかけと思われる小さい穴がいくつかあった。
1頭のニホンアナグマが出入りし、ニホンジカが巣穴の前の獣道を利用していた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/92d7691c34114a15a57e659136a3598f
(10)キツネの巣穴: 出入口は5ヵ所。キツネが子育てに利用していた。
上記の巣穴(1)~(9)は全て山の中にあるのに対し、この巣穴は市街地近くの土手に作られていた。
https://blog.goo.ne.jp/kiyosato_001/e/158c100dcc770aead5daed8fc98d9c1c
(巣穴の前のタヌキ:左下の草の陰に巣穴の出入口がある。)
ニホンアナグマ(体長40-60cm)は、自分で巣穴を掘り、巣穴には複数の出入口がある。
何世代にもわたって巣穴は拡張され、春になると出入口の穴が増える。
ホンドギツネ(頭胴長52-76cm)は、子育てのみに巣穴を利用し、一年中使うわけではない。
巣穴には複数の出入口があり、親子代々引き継がれ、年々拡張される。ニホンアナグマの古巣を利用することがある。
ヨーロッパでは、アカギツネ(日本のホンドギツネはアカギツネの亜種)とヨーロッパアナグマが同じ巣穴を利用することが知られている。
ホンドタヌキ(体長40-50cm)は、「自身で巣穴を掘るが、キツネやアナグマが掘った穴を利用することもある」とWikipediaには記載されている。
一方、「自ら巣穴を掘ることはないが、アナグマが掘った巣穴を利用することがある」と記載された学術文献もある。
ニホンアナグマの大きな巣穴の一部(ニホンアナグマが使用していない部分)を利用することがあり、これが「同じ穴の貉」の語源になったという。
ハクビシン(体長51-76cm)は、樹洞やタヌキなどの動物が使い古した巣穴などを棲みかにし、民家の床下・屋根裏などに棲み着くこともあるという。
(体長はWikipediaによる。図鑑によっては、かなり違う数値が示されている。地域差もあるらしい。)
(タヌキの巣穴の前に現れたニホンアナグマ)
私が観察した限り、ニホンアナグマの巣穴とキツネの巣穴は良く似ていて、外観(出入口の大きさや形、数、間隔)で両者を区別できない。
複数の出入口がある場合、それぞれの使用頻度はかなり違う(足跡の付き方がかなり違う)。使用頻度の高い出入口ほど穴が大きい傾向がある。
一方、タヌキの巣穴は、ニホンアナグマやキツネの巣穴に比べて出入口が大きい傾向がある。
2ヵ所のタヌキの巣穴は低木が多い藪の中にあったが、ニホンアナグマやキツネの巣穴はもう少し開けた場所にあった。
また、タヌキの巣穴の出入口の前に溜め糞がみられたことがある(数か月後には、溜め糞は消滅していた)。
2例だけの観察ではあるが、タヌキの巣穴は、ニホンアナグマやキツネの巣穴と外観で区別できるかもしれない。
ニホンアナグマの巣穴の周囲には、しばしばキツネ、タヌキ、ハクビシンが出没することが分かった。
キツネ(イヌ科)、タヌキ(イヌ科)およびハクビシン(ジャコウネコ科)は、アナグマ(イタチ科)と近縁種ではないが、サイズの似た中型哺乳類である。
キツネ、タヌキ、ハクビシンは、他者の作った巣穴を利用することが知られているので、穴掘りに長けたニホンアナグマの巣穴は常に狙われているのかもしれない。
小鳥たちがキツツキの古巣を好んで利用するのと似た状況かもしれない。
日本では古くからタヌキとアナグマが同じ巣穴を利用することが知られていて、ヨーロッパではキツネとアナグマが同じ巣穴を利用することが知られている。
キツネの巣穴(2)は、ニホンアナグマの巣穴(3)と20メートルほど離れて隣接しているので、トンネルで連結されている可能性がある。
タヌキの巣穴(7)は、ニホンアナグマの巣穴(8)と20-30メートルほど離れて隣接しているので、トンネルで連結されている可能性がある。
これらの巣穴は、もともとニホンアナグマの巣穴だった場所にキツネやタヌキが侵入したため、ニホンアナグマが巣穴を拡張した可能性がある。
八ヶ岳山麓には、これらの中型哺乳動物が比較的高密度で生息し、お互いに関わり合いながら共存しているようだ。
この地域における中型哺乳類の生態系において、ニホンアナグマは重要な役割を担っているように思われる。
毎年同じ野山を散策している私が観察する範囲では、動物の巣穴は増加傾向にある。
既存の巣穴でも新しい出入口が増えている。
今後も随時調査を継続する。
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