平日ではあるが、40人程度の入り。
「動物園」(小鯛):△+
最初のアホとおじさんの会話で、
強弱や間をいろいろ付けてウケをとりやすくしている。
この男、いろいろ条件を付けているが
本当にそんな仕事があるとは思っていないんだな。
表情の付け方、話し方にイチビっている様子が見える。
動物園にやって来て園長と話し、
着ぐるみを着て檻の中へ。
着る場面は南天ほどこってりとやっていないが、
それでも丁寧にやっている。
「毛を挟む」はなし。
檻の中で仕草は軽く説明し、
あとは丁寧に「ワン」、パン。
ライオンとの一騎打ちで恐がる場面は相対的に長かった。
その後サゲへの転換は少し流れた印象。
「蛇含草」(佐ん吉):△
軽くマクラを振ってネタへ。
うーん。何となく演り慣れていない不安さが感じられ、
それが客席に伝わってしまったように思う。
全体にさらっと演っているが、それでは面白くはならない。
だいたい大食いの男や家の主を丁寧に描写したとて
爆笑をとれるようなネタではないし。
涼しいものを並べていくところ、配置がイマイチ。
金魚の場所はどこだろう。
それに対して暑いものを挙げていくところも
もう少し暑さの実感が欲しい。
そういう点から見ると、冷房が効いている環境でこのネタをやっても
客としてそこまで実感は持てないのかも知れない。
「蛇含草」の説明、「人間が溶ける」だけ伝わると
「何故男が蛇含草を食べる気になったか」が分からなくなるので、
やはり「うわばみにとっては腹薬」の一言は必須だろう。
主人は本気で怒っていない。
2人の関係からすればこれはこれで良いのかも知れないが、
「意地になって」食べる、食べさせる関係を分かりやすくするためには、
挑発、もう少し怒る、それに対してさらに挑発、という様子を
見せておいた方が良いかも知れない。
最初餅をちぎって食べるのだが、
曲食いの際には1個丸ごと食べるのだから、
最初食べる際もちぎらない方が良いと思う。
口の中一杯に詰め込む動き、表情を見せた方が良いだろう。
曲食いはまあまあ。
曲食いの名称、餅が飛ぶ様子、食べる様子に絞るためには、
投げる際の準備動作はない方が良いと思うけど。
餅がいっぱいに詰まっているところ、
もう少し充溢感、「ちょっと動けば溢れ出そう」な感じが必要だと思う。
あと2,3個ならば頑張れば食べられそうに見えてしまった。
帰ってからはまあまあ。
全体に、あまりウケず。
「桃次郎」(雀喜):△
子どもの話をいろいろ振る。
若干引いた感じがあり、大きくはウケず。
シャレた感じで自然でもあり、面白かったのだけど。
ネタもあまりウケていなかったなあ。
前の「蛇含草」もそうだが、
ダイレクトに面白いボケや
ウケを引きずり出すようなツッコミでウケさせるネタではない。
特に「桃太郎」のパロディで可笑しい設定を単発で繰り出していくという、
徐々に盛り上がるとは言えない
(下手すれば飽きて徐々にウケが小さくなっていく)類のネタ。
実際、大ウケはないまま終わってしまった。
「茶の湯」(南天):○-
前の二つで冷めてしまった空気を暖めるべく、か、
ウケを取るようにややクサ目に、押し気味に作っていた印象。
個人的には「茶の湯」のこの作り方はあまり好きではないのだが、
この日について言えば会場の雰囲気を非常に良くしていたので、
これはこれで良いのかな、と思う。
3回回す際に背中側を通して「裏千家」など、よくウケていた。
その後隣の手習いの先生が前で(縦に)回して「表千家」だけでなく、
独楽のように回す人が出てくるなど、
全体に茶碗の回し方のギャグが多かった印象。
掛け軸の「根性」、
反対側に違う掛け軸が掛かっていたのでは?と思ったが
その演出はなかった。
「一文笛」(宗助):○-
泥棒、スリの話をし始める。
「ヒザで一文笛か」と思ったら、案の定だった。
まあ、丁寧に演っている。
スリの男が煙草入れの持ち主と応対する場面、
個人的にはもう少しスリの「ひねた」「心底スリである」汚れや
臭気があった方が良いのでは、と思う。
普通に愛想の良い商人のように感じられた。
兄貴が入ってくる。
特に含みは感じられなかったが、
ここもある程度
「この男が一文笛を盗んで、結果子どもを意識不明の状態に追いやっている」
という気持ちで入ってきているのでは、と思う。
この2人の会話では、スリの(ある種の)無邪気さが出ていた。
もう少し汚れた部分も必要だと思うが、
このような無邪気さ、
他人に迷惑は掛けていない、と思い込む無垢さがあるのだな、と思った。
子どもの状態の説明に
「どこかで頭でも打ったんやろな」や「目は覚ましても頭はおかしいまま」といった
あまり耳慣れない台詞が入っていた。
単に「身を投げた、意識不明」だけでは説明不足と感じられているのかも知れない。
若干理屈に過ぎるかも、と感じたが、
まあ、元々のままで疑問を持つ人が存在するのであれば
入れても悪くないか、というレベル。
サゲは照れくさそうに。
実際には辞める気がなかったことを恥ずかしそうに告白している印象。
うーん、これはこれで悪くないか。
結局このスリ、「泥水をすすって大きくなっている」し、
辞める気はなかったのかも知れない。
このネタも単純な「いい話」ではなく、
「スリしか出来ない人間は、結局スリとして生きていく」と
(ある種)冷たく突き放しているネタなのかも。
「質屋蔵」(雀松):○-
質屋の話から、
無筆の「借りた羽織を七に置いた」小咄を振ってネタへ。
番頭が
「ほたら何ですかいな、三番蔵に化け物が出るもの無理はないとおっしゃるんですか」
と旦那に返すところから入る、枝雀ラインの形。
若干、突拍子のない印象。
雀松の穏やかな口調と、この入り方は合わないのかも知れない。
旦那の説明は、少し台詞にあやふやな部分も見られたがまあまあ。
番頭や丁稚、
熊さんの口調や表情付けが雀松らしい。
もう少し番頭は番頭、熊さんは熊さんらしさが強い方が好みだが、
雀松のニンや売りではある。
よくウケてはいた。
箸を2人で取りに行く件はなし。
旦那が蔵を覗く。
この場面で行司の声や菅原道真の喋り方に特に変化を持たせず、
2人の腰が抜けたところから旦那が覗く、そしてサゲまで
あまり空気が変わらずにそのまま進んでいった。
道真公の喋り方も柔らか目であり、表情も付けてウケをとっていた。
個人的にはここは少し堅めに演じ、
サゲの台詞でまた崩す方が好みではある。
雀松らしいと言えばらしいかも知れないが、
少し流れてしまった印象。
全体には
「蛇含草」と「桃次郎」で悪くなりかけた雰囲気を
「茶の湯」が直し、
仲入り後の「一文笛」と「質屋蔵」で満足させた、というところかな。