月曜は夜繁昌亭へ。
「落語・絶滅危惧種」と名付けられた珍品落語を集めた会。
日経でも取り上げられていたので混んでいるかな、と思ったが、そうでもなく。
半分程度の入りかな。
「忍法医者」(眞):△+
いつも通り「男か女か」といった話から
整形の話をしてネタへ。
顔色の悪い男が紹介されて医者に行ってのドタバタ、という
「犬の目」のような噺。
「裸にマントを被り、下は封筒で隠しているだけ」という
若干下がかった設定があったが、
これは「蘭方医者」の本編には別に関わりないと思う。
「誰にも見られないように「親展」と書いてある」のは面白かったので、
他で使って良いギャグかも知れない。
お腹の中に虫がいるので蛙を呑ませる。
ここで忍術を使ってお腹の中に入れるあたりが
「忍法医者」と呼んでいる所以なのかも。
蛙→蛇→鷹(だったか)→狩人の恰好をした人間、と
中に入れるものが大きくなるに連れて呪文も変えているのだが、
まあ、そこまでしなくても良いかな、と思う。
残った獣が取り付いて蛙のように跳ねたり
蛇のようにグニャグニャになったり、というのが趣向で、
この部分に絞って何か適当なサゲをつけたようなネタにすれば、
もう少し聞く機会が増えるかも知れない。
「明石名所」(染雀):△
マクラで軽く修業時代の話に触れてネタへ。
きっちり覚えて丁寧に喋ってはいるのだが、
途中で眠くなってしまった。
個人的には福笑のイメージが強いネタで、
ボケとツッコミの強弱、間のとり方、
畳み掛けたりすかしたりといったリズムの緩急、などが必要と思う。
単に喜六清八の会話としてやるには、
情景の変化が乏しいし、
人麻呂さんそのものに対する知識も皆が持っている訳ではないし。
「たばこ道成寺」(枝三郎):△+
マクラでうだうだと身の回りの話、
落語ファンをいじるような話を色々。
マニアックな客席と考えて、楽しそうに喋っている。
珍しい小咄なども聞けて良かった。
ネタは初めて聞いた。
タバコ好きな男がいろいろな家で嫌がられ、
「タバコののみ比べをする」という紀州の人間を紹介されて
そこで競争をする。
勝てないと思って逃げ出し、道成寺と絡めて、といった話。
枝三郎がダレているのか、
台詞が曖昧なところ、ハメの入り方や乗り方に雑な部分が散見された。
そのため、ネタと相俟って、
どこで楽しめば良いのか、全体に分かりづらくなってしまった。
珍しいネタではあるが、嫌煙ばやりの今日、
特に最初の色々な家で嫌がられるあたりなどは
意外に受け入れられるかも知れない、と感じるのだが。
「タバコののみ比べ」というのが、何を競うのかがよく分からなかった。
量を競うのか、珍しいタバコを競うのか。
このあたり、最初に「タバコ強いんやな」といった話を聞かせておいて、
「どちらが強いタバコを吸うか」に限定しておいた方が
客として付いていきやすいと思う。
船頭に渡してもらい、道成寺へ。
個人的には、何となく「タバコのヤニ」と聞くと
「うわばみの嫌いなもの」という(「田能久」で聞いただけか?)
イメージがあるので、そこに掛けるのか、と思ったがそうでもなく。
珍しいネタを自信を持って演じる、というスタンスで押し切れば、
もう少しウケたかも知れない、と思うのだが。
あと、もう少し「道成寺」に絡めた設定があった方が良いのでは、と感じた。
若干、勿体ない印象。
「墓供養」(三喬):○-
マクラで貴布禰神社の神主さんの話をいろいろ。
そこから日本人の宗教の話をしてネタへ。
まあ、このネタ、別に信教の話をしなくても良いかな、と思う。
「墓供養」の説明は少し危なっかしく。
「絶滅危惧種」といいつつ、よく演っているであろうネタなので、
安心して聞いていられた。
最初の「手伝いをしている連中」の中で文紅の名前を入れるあたり、
この人へのリスペクトが感じられる。
「よし、書いとこ」で転換する繰り返しだが、
以前に比べて隣の人間と会話する場面が増えているように感じられた。
それでもきちんと「帳面を付ける」とは別の話に
客を集中させられているのは流石。
最後のドモリ、その後のサゲもよくウケていた。
ドモリがメインになるから放送しづらいのだろうが、
三喬以外ももっと高座に掛ければ良いのでは、とは思う。
「さんま芝居」(九雀):△+
若手の頃南座で芝居を見た話など。
「さんま芝居」そのものは昔、文我ででも見ているような覚えがある。
演出はけっこう変えているように感じた。
旅の一座が漁村に行き、秋刀魚を出してもらうのだが大根がない、
というあたりでの騒動。
芝居は「伽羅千代萩」の「床下」がメインで、
硝煙を焚こうとしたが湿っていて煙が出ず、
仕方なく秋刀魚の煙で仁木弾正が上がっていく、という話。
いつから芝居を始めるか、や
何故「大根役者」というか、
秋刀魚を食べる場面や大根がないので食べられない、といった場面が長く、
芝居の場面はあまり長くない。
「鰯の餌にする」といった脅しは良かったが、
芝居までの場面は少しダレる感じがする。
男之助の声は良いが、
鼠を踏まえて見得をする際の首の動きが良くない。
あまり見得をしているようには見えなかった。
サゲは大根役者に大根を掛けるもので、
まあ、「さんま芝居」ならば予想通りの掛け方ではある。
サゲへの持っていき方や誰がサゲの台詞を言うか、など、
全体的なバランスを含めて、手を付けられる余地はまだあると感じた。