第139話. メンテ学(2) 強く暗めの色の壁の民家 新しい窓フレームの色 リフォーム時の注意点

2018-07-16 15:48:56 | ★メンテナンス考
湖畔人です。

メンテ学の2回目です。
今回は、家の色についてです。
最近、強い色、濃い目のブルー、紺とか、濃いグレーとか、ブルーグレーとか、モスグリーンとか、ブラウンとか、結構強くて暗めの色を部分的に、または全体に使用した新築の民家をよく見かけるようになりました。これは、以前、第20話にてメンテを前提にした街作り、家作りを構想すべきだ、と言う話をしましたが、その視点から見てとても面白い試みだと思うのです。やはり、壁が白っぽいと汚れも目立ちやすく、それを放置しているのは精神衛生上余り宜しく無いと思うのですが、一方で、お金が掛かり過ぎるのでしょっちゅう外壁のペンキの塗り替えは出来ませんし、であるならば、汚れを目立たなくし、メンテの間隔を長くできれば、精神衛生上も悪くないし、お財布にも優しいし、メンテと言う視点から見て正しい行為、と言う事になるかと思うのです。ですので、メンテ的な視点から見て、壁に暗めの強い色を使って汚れを目立たなくさせるのは“正解“と言う事になります。ただ、”正解”と言うには、あくまで、汚れが目立たない状況が数年に渡りキープ出来るのが大前提でして、後になってみて、壁の色が暗い色であっても実は汚れは相変わらず目立ってしまう、と言う事実が後になって判明したりするとなると、私は、前言撤回をせざるを得なくのですが、その点は、しばらく様子見、要検証ですね。数年後、壁がどうなっているのか、要確認です。でも本質的な対応の仕方としては、まずは汚れが付きにくい素材の開発が最重要で(もしかして、もうあるのかもしれませんが・・)、次は、自動で壁を掃除するロボット機能の追加が必要で、その次が、今推奨している濃くて暗い色の壁で汚れを目立たなくする、という順番になるかと思います。建築業界、素材メーカーの皆様には是非奮闘いただきたいですね。

また、ちょっと話が変わりますが、壁の色だけでなく、最近変化を感じるのは窓のアルミサッシの色、フレームの色の変化です。もしかすると、随分前から存在していた色なのかもしれませんが、最近よく見かけるのは、淡いシャンパンゴールドのような色彩の窓枠です。メーカーによって言い方は色々違うようで、シャイングレーとか、アーバングレーとか、シャンパングレーとか色々な呼び方をされているようですが、この淡いシャンパン色に輝くこのフレームは様々な壁色に合うので、家の色彩コーディネートに大分選択の幅を持たせており、色彩コーディネートを大分やり易くしているように見えます。知的で落ち着きがあって、とても良い色だと思うのです。窓枠の色は様々なバリエーションがあって良いと思うので、是非新たなる色彩の窓枠の開発を、窓枠メーカーの皆さんには期待したい所ですね。

また、ちょっと話がズレますか、最近気になっているのがリフォーム時の壁色の選択です。リフォームの際、どうもリフォーム業者は、ユーザーの意向を出来るだけ取り入れようとし過ぎるのか、かなり自由に、かなり大胆に元の色から壁色を大きく変えてしまい、その結果、大分残念な結果になってしまうケースをよく見掛けるのです。(例えば真っ青な色の家とかドピンクの家とか)でも、家の壁の色として、まとまり良く、見飽きず、且つ知的に見える色彩の組み合わせパターンと言うのは、そうそう数多くあるはずもなく、鑑賞に耐えうる色彩パターンにはかなり限りがあると思えるのです。で、あるにも拘らず、かなり観念的な色彩の素人である一般ユーザーの意向を聞いて壁色を決めるのはかなりリスクが大き過ぎると思うのです。数十万から数百万円のお金を掛けて家の壁の色を変えて、その後何年間もその色で過ごす訳ですから、そうそうやり直しがきかないので、壁色の選択には慎重であるべき、と思います。ですから、一番良いのは、元々あったオリジナルの色はプロが選んだ色なのですから、その色をそのまま使う事が一番間違いが無いと思います。次に良い手だと思うのは、家のデザインをしている色彩のプロのご意見を聞いて色の選択を任せる事、それが出来れば次に良い選択です。兎に角、色彩の素人であるユーザーや壁塗りの職人さんに色を決めさせると、滑稽な感じになってしまう可能性が高いので、要注意だと思います。リフォーム業者の職人も、あくまで壁塗りの技術のプロであって、色彩のプロではありませんから、彼らに色の選択を任すのは危険だと思います。リフォーム業者が施工成功例として彼らのHPで見せている実例を見ると、“よくこれを成功例と言えるな”、と言うような残念なケースが数多く掲載されていて驚かされるのも事実です。ですから、リフォーム時の壁色の変更は、やり直しが効かない高い買い物になりますので、余り軽く大胆に変えようとは思わず、基本はオリジナルの色のままが良くて、でも、どうしても変えたい場合は、色彩のプロの意見を聞いてから決めるのが良いですよ、もしくはプロの真似(メーカーの用意する新築の家の真似)をするのがよいですよ、いずれにせよ、慎重な対応を心掛けましょう、と申し上げたいです。

湖畔人

2018年8月4日改訂

第20話. 伊勢神宮, メンテナンス前提の遷宮システム=伊勢イズム

2016-10-23 03:07:06 | ★メンテナンス考
湖畔人です。

天皇家の肉体先祖であり、日本神道の八百万の神々の最高位に君臨する女神、天照大神を祀る、日本神道の中心地、伊勢神宮。その伊勢神宮の内宮は、それはそれは美しい造形美を持った日本の美の象徴のような建造物です。ジョブスも真っ青のミニマリズムの極地のようなシンプルで洗練され完成されたデザインを誇る究極の建造物です。まるでプラトンの言うイデアの世界にある神殿の原型が立ち現れたかのような神々しいお姿です。
伊勢神宮の凄さは、その造形の美しさだけでなく、その式年遷宮と言う永続システムにもあると考えます。
20年毎に隣の敷地に別のお宮を新築し神様をお移してきました。20年に一度、唯一神明造という飛鳥時代から伝わる古代建築技術と御装束神宝などの調度品を連綿と後続に伝授し続け、永遠に途絶えない常若を実現しているスゴいシステムです。持統天皇の頃から約1300年の永きにわたって行われています。これは、ある意味、諸行無常、全ては古くなり朽ち果てると言う前提を潔く受け入れた考え方であり、ハード的に永続は無理と割り切り、設計方法や製造技術等ソフトを繋ぐ事で、永遠に新しくあろうと言う常若の思想です。
よく外国の方から羽田空港や成田空港はよく手入れが行き届いている、よくメンテが行き届いている、と褒められる事が多いのですが、結局、どんなに新しくデザイン的に斬新な建造物を建てたとしても、その後キチンと手入れ、メンテナンスがされず、壁のペンキが剥がれ、ゴミが溜まり、壁にヒビが入り、トイレは汚れ、草が生え放題と成ってしまうと、折角のハード的な斬新さや魅力も半減してしまうし、やはり、その土地に住む人達の民度、心が映し出されてしまうと思うのです。どうせなら、建物でも街でも綺麗な状態を保ち、その環境の管理により、住民には、心地良さと、明るさと、規律と、誇りと、ポジティブな刺激を与え続けたいものです。この世に存在するあらゆる物は、例外なく時の中で朽ち果て、メンテナンスを必要とします。そうであれば、伊勢神宮のようにメンテが要るという前提を受け入れ、割り切ったシステム、仕組みを採用し、メンテがし易い構造を予め持たせた家なり社会インフラなりを考案すべきです。街のインフラを見ても、水道管も下水道も電線もあらゆるインフラが時の中で老朽化します。最近も電線が古くなり火災を起こし都市機能をマヒさせましたが、そうしたインフラもいつか交換が要るわけです。それが判っているのであれば、交換を前提とした設置の仕方をすべきです。道路の下の地中に土管を埋め、工事の度に、道路を一車線工事中とし、片側通行にして渋滞を作るなんていうのは何とも考え無しな感じ、知恵の不足を感じるのです。古い街であれば致し方ないとしても、新しい街を作る時は、何れメンテが確実に来るものに関しては、後日修理や交換等メンテがし易くなるような仕組みを予め作っておくべきと考えます。民家と民家の間に通路的な空間を設け、そこに後日メンテが要るインフラをまとめて入れるとか、何んらかの対応が出来るはずです。それこそ、伊勢神宮のように、街ごと隣に引っ越せるようなやり方もあるかも知れません。今住んでいる町の隣に、町一つ分の敷地を用意し、普段は緑地の公園か駐車場にしておいて、今住んでいる町が老朽化したら、その緑地を宅地化し街を新たに作り、丸ごと引っ越してもらい、民家があった場所を今度は真っ新にして緑地にしてみたいなサイクルを作る事もあるかもしれません。街と言う大きな単位で無くても、もっと身近な民家であっても、メンテは必要です。一戸建てのメンテの大変さと高額さには時々閉口する事がございます。数年に一度壁の塗り替えも必要ですし、その度に数十万円以上掛かりますし、庭だってかなりの頻度で手入れしないと草だらけになってしまいますし、芝もどんどん根が伸び広がって行くし、本当にメンテナンスには手間とコストと時間がかかります。芝刈りロボットも是非開発して欲しいし、壁だって壁専用お掃除ロボットが予め付いている家があったっていいし、換気扇周りのように外壁にシートが付いていて剥がせるスタイルがあってもいいかもしれません。いずれにせよメンテは必ず要るのですからメンテがし易い仕組みなり構造なり技術なりがもっとあって然るべきです。部屋のつくりだって、お掃除ロボットが掃除をし易い造りだって提案できるかもしれません。それと、伊勢神宮の式年遷宮の凄いところは技術伝承だけでなく、その経済効果にもあります。多くの人員と物資が動きますので、20年に一度の好景気が期待できます。これを街等、地方自治体単位で実施応用すれば、それはちょっとした景気対策になります。政府にも20年に一度人工的に起こせる景気浮揚策として街自体の移転なんて大きな話を推奨してもよいかもしれません。色々と応用が利く発想です。メンテ自体が大きな産業にも成りえるのです。もっと知恵を絞れる箇所だと思います。アカデミックに学部を設け学業の対象にしてもいい位です。
何れにせよ、日本の中心である伊勢神宮がそうしたメンテ前提のシステム、“伊勢イズム”と言ってもよいメンテ前提の考え方を取っているのですから、我々一般日本人も、家でも街でもあらゆる物にメンテナンスが必要だと割り切り、予めメンテし易い仕組みや構造を持たせた物なり家なり街なり技術なりを開発していただき、伊勢神宮のように、常に新しく清潔で快適な住環境を実現頂きたいものです。そして、そこで得た技術なり仕組みなり物なりを、今度は売り物として、世界に広く売り込んでいただきたいものです。そうした事をよく考える事が多い今日この頃です。

この記事が何らかのヒントになれば幸いです。

湖畔人