チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

綾の手紬

2008年05月22日 09時07分40秒 | 日記
「小石丸が上がった」
蚕の話です。

宮崎綾町に工房を構えて31年、秋山さんは小石丸を育て、
全部の作品を国産の絹で染織しているわが国では数少ない一人。

チャコちゃん先生は今から30年前に取材で伺い、其の後も二度ほど、
そして4回目の訪問は18年ぶり。
秋山さんには東京や京都でお会いはしているがーー。

本当に小石丸が小ぶりの品の良い繭を作り上げたほやほや。
昔ながらのまぶしの中に行儀良く整列している。

奥方がさも愛おしそうにそっと撫でる。

藍釜も一気に増えていて
30個はくだらない。町の青年やベテランの男たちが、特産の焼酎を振舞って、
藍の機嫌をとっている。

藍も彼らも本当に楽しそうに時間を共有していた。
藍が大好きな灰汁もこの町の人の手によると言う。
もちろん小石丸を育てているのもこの町の養蚕農家。

30年かけて秋山さんが藍染、養蚕、織り、貝紫の染色、着物のデザインと、
プロを多く育て上げた。中には伝統工芸士も誕生。
ここまで育てるのは大変だったことだろう。

桑畑はさすが南国、
もう桑の実も熟れかかっていた。
「来週はフアンクラブの人たちが東京からいらして、ジャム作りをするんです」
秋山フアンは全国に大勢。もちろんチャコちゃん先生も其の一人。

この桑の畑はもともと鹿などの動物が下の川に水を飲むために通る獣道だったので、
「桑の葉を全部食べられてしまうこともある」
でも獣道を私たちが使っているんだから、
「どうぞ」
と言うしかない、と淡々と奥方。

「サルが大根を両脇に抱えて山に帰っていく姿っておかしいですよ」
ははは、と一緒に笑うが、ココに暮らす人にとっては死活問題だ。

同行の塩野屋の面々は、
志を同じくする秋山さんと日本の蚕の話、撚糸、糸取り、織りなどの情報交換に盛り上がる。

基本的に生繰りという、
繭の中で蚕が生きている間に、糸を取るのだが、
ヤハリそれが蚕の意志にもあっていると意見が合う。

小石丸は糸が細く繭が小さい、
其の糸を繰り上げるには、針の穴より細い穴に通して、
糸を取る。

私など針の穴に糸を通すのさえ困難状態なので、
この作業を難なくなさっている、この土地の女性を、
熱い尊敬の目で眺めていた。

沖縄生まれの秋山さんは、
沖縄の織りの技を生かし、ロートン織りや花織りを随所に入れる。

出来上がりは琉球王朝の格と、
藍の美しさに息を呑む。
見るものミーーーーーンナほしい。
ほしーーよ。特に藍白のロートン織り、ホシイホシイ。

話はココへ来てある問屋が
「比佐子好み」
と言うくくりで、チャコちゃん先生の好きな着物をまとめて売る企画をしたいという申し出。

もう6人は決めたので、秋山さんも加えてーーーニコニコニコ。

作る人たちの応援ができればこんな嬉しいことはない。
コメント
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