三年目を迎えた桑畑、やっと蚕の飼育が出来るということでうれしいと写真をよこした若い友人
昨年の千葉の二度にわたる台風で桑の苗がすべて流され養蚕をするという夢破れてしまった
田んぼの跡地に植えたために水が湧き出て根こそぎ流れていった
この残念無念の気持ちを察してその跡地を見に行くのをためらっていたが、今日また写真が送られてきた
気を取り直し田んぼではなく高台に土地を借りて桑の苗を植えるという、もう一度やり直したいということでアドバイスを求めてきた
運よく桑を育て蚕を飼育し、糸を取り機を織っているSさんがいらしていたので、早速電話をかわる
懇切丁寧なアドバイスはこちらも参考になりうれしくなった
桑の種類も前回は一ノ瀬だったが今回は菊葉にしようということになり、その育て方はS氏が直接指導するという話になった。蚕の品種もそこからまたどういう糸を作るかによって考えていこうと
S氏は日本のどっかに一軒だけでも江戸の中期前の糸づくりができる人を残したいと、いつもは人に教えるのはめんどくさいという御仁なのに今日は熱弁をふるっている。若い友人も
「この話を聞くために2000本の桑の苗が流されたのですね、もっといい仕事が出来そうで嬉しいです」
「いいタイミングにご連絡いただいたわね」
元気出してねと応援
「劣性三眠蚕はいいですよ」
「小さいでしょう?むっつかしくない?」
「いや強いですよ」
この蚕は2000年の歴史を持つ蚕でずっと東大農学部で育てられていたらしい
それを今10年前からS氏がもらい受け育ていて、いい糸を作っている
チャ子ちゃん先生その糸でできた着物持ってるんだ!(じまん、エッヘン)
東京博物館で展示されている着物の生地が江戸中期とそれ以前では全く生地風が違うという感想を話したら、江戸中期以前の糸は縒りがなく糸の質其のものが非常に敏感で美しかったはずで、チャ子ちゃん先生が言う通り江戸中期以降から着物にいろんな加工をするようになって、糸が段々太くなり粗雑になったとS氏は言う
だから自分は一貫して江戸中期以前の糸づくりに生涯をかけていると。本当にその通りの生き方をしていらっしゃる
図録を見せながら安土桃山や江戸の初期の糸には品格があるわねえと話が尽きない