昨日突然昔の知人が訪れた
東映映画華やかなりし頃の宣伝部の男だ
「カミさんが東京医大で診察待っているので、いっしよに待っていてもね、ちょっと顔を見ようかと思って、長居はしないよ」
カミさんは肺がんだそうで、彼が介護を引き受けているという
「こちらは87歳、カミさんは85歳老老介護だよ」
カミさんの代わりに買い物したり料理作ったり洗濯したり主夫やってるんだとこぼす
「あなたがいい仕事ができたのは、奥様はあなたを支えたのだから、それくらいやんなさい、あたりまえでしょう?」
「まあね因果応報かな」
「そういうものの考え方ではなくて、恩送りという風に思ったら主夫も楽しいかもよ」
真夜中まで仕事をして、ロケにはついていって何か月も帰らない、そういう夫を待って暮らしていたんだもの昔の主婦は、夫は好きで面白い仕事をしているので毎日が充実している、妻はそういう夫を待って子育てし、家を支えていた
今やっと夫を取り返して夫にサービスしてもらう生活
それでも昔の主婦は気持ちのどこかで「すまないなあ」と遠慮しているはず
そういうと
「たしかに、何かと動こうとするんだ、無理するなとは言うのだけど」
「そういう時一言、ずっと世話をしてくれたから今度は俺の番だ、ゆっくり養生しようね。と言葉で言いなさい!」
「そうだね、そうする」
「介護はたいへんだけど、それでも楽しくなるよきっと」
「あと持って半年といわれている、寿命かな」
「寿命て書いてごらん、命の寿、生きたことへのお祝いだよ」
「大事にするよ、やっぱり来てよかったありがとう」
お金の心配はないのだという
「給料が良かったからね、家も持てた、つましく暮らせば子供達には残せないけど、不自由はない」
「それが一番よ、自分たちのために使い切りなさいよ」
東映時代の裏話をこんど「チャコちゅぶ」で話してくれることになった