私の地元、愛媛県松山市でよく使われる食材の1つに、「松山あげ」があります。
生の油あげに代わる干油あげと呼ばれていたものらしく、江戸時代には豆腐油あげとも呼ばれていたようです。
以前は帰省のたびに買って帰っていましたが、3年ほど前に近所のスーパーで取り扱っているのに気づいてからは、いつでも食べたい時に買えるようになりました。
いわゆる一般的な油揚げの方が珍しく感じるくらい、子どもの頃からしょっちゅう食べていた食材です。この写真を見てお分かりかと思いますが、乾燥していてふわふわした見た目をしています。
旨味とコクがあるので、味噌汁に入れたり、煮物に入れたり、炊き込みご飯に入れたり、和風パスタソースにも加えたり、様々な料理に使えます。火をしっかり通してもいいし、仕上げに加えてさっと火を通すのもいいので、おいしいだけでなく使い勝手も良いのです。しかも賞味期限が常温保存で90日ほどと長いのも嬉しいところです。
「松山あげ」は松山市内にある「程野商店」で製造・販売されています。別名「干油あげ」とも云われているようですが、いつ頃から、なぜ作られ始めたのかは分からないそうです。
上京する直前まで働いていた鍼灸整骨院に、飄々とした雰囲気の高齢の男性が毎週のように通われていました。
私は身体にはその方の人生・生き様が現れていると感じることが多いのですが、この男性の場合は手にも足にも腰にも、どれだけ働き続けてきたのだろうと感嘆させられるものがありました。しばらくしてこの方が程野商店の先代の社長さんと知りました。一所懸命に「松山あげ」を作り続けて会社を大きくされたと聞き、いろいろ納得がいったのを覚えています。
昔は数カ所で製造されていた「松山あげ」も、現在は程野商店だけとのこと。何事も移り変っていくのが世の常ですが、今は存分においしさを堪能しようと思います。
きっと「松山あげ」を知らない人の方が多いと思いますが、もしどこかで見かけたらぜひ一度食べて頂きたいです。