東大教授ら発表 長寿酵素の関与解明
摂取カロリ-を抑えると、加齢に伴い聴覚が低下する「老人性難聴」になりにくくなり、それには長寿に関係する酵素がかかわっていることをマウスの研究で解明したと、田之倉優東京大教授(食品科学)らが18日付米科学誌セル電子版に発表した。 田之倉教授によると、老人性難聴は内耳で音の刺激を電気信号に変換する「有毛細胞」や、それを脳に伝える神経細胞が加齢とともに死滅するのが原因。教授は「今回の結果は、老人性難聴の予防法や治療薬の開発に役立つ」と話している。田之倉教授らは、カロリ-制限でマウスの寿命が延びるとの研究報告や、長寿との関係が知られる「Sirt3」という酵素を作る遺伝子に注目。生後2ヵ月のマウスを使った実験で、与える餌のカロリ-を25%減らすと10ヶ月後でも聴覚は正常だったが、この遺伝子を働かなくしたマウスで同様の実験をすると、大きな音しか聞こえなくなっていた。カロリ-制限をしない場合は、いずれも大きな音しか聞こえなくなった。難聴になったマウスは、有毛細胞や神経細胞が生後2ヵ月の約25%に減っていた。田之倉教授は、カロリ-制限によってSirt3が活性化し、難聴にかかわる細胞が壊れるのを防いでいるとみている。