幸せさがし 価格:¥ 1,260(税込) 発売日:2007-09-07 |
かまた・みのる=1948年生まれ。諏訪中央病院名誉院長。 著書に「がんばらない」など
そう悩まずとも大丈夫・・・・・評・栗林 佐知(小説家)「がんばるな」な んて、言われたって困る。ベストセラ-「かんばらない」で有名な鎌田 實先生のお名前を聞くたび、マジメなかせんばり屋の私(評者)は、口 をとがらせたくなる。信州の地で三十年、病の苦しみに寄り添ってきた 鎌田先生は、実に多くの人とつながっている。本書は、その数々の出 会いから見出した「幸せの法則」をつづったものだ。閉鎖寸前の動物園 を「日本一」にした園長、営業ウ-マン、病と共に歩む女優やジャ-ナリ スト、左手しか使えないピアニスト、日本やチェルノブイリの患者さんや 医師たち。それぞれの生き方のすばらしい点を、先生は数え上げる。そ して見つけた法則とは・・・・、「相手に対する想像力を持つ」「目標を低 めに設定する」「発想の転換が大事」「何物にも支配されないこと」「作 り笑いでもいいから笑う」「精いっぱい生きればいい」「「『がんばらない』 と『かんばる』のバランスが大切」などなど。苦戦を抱えた人々の、明る さ、しなやかさには、じわじわと勇気づけられる。だけど先生、困ります。 「がんばる」と「精いっぱい」はどう違うんですか?などと、また口をとがら せたくなるのだが、読み終えて、心も心身も軽くなっているのだから驚く。 考えてみれば「幸せとは」なんて、たとえば禅を学ぶ人が「不立文字」な どと言うように、「明確に言葉で示せるものではない」のだろう。そう思つ たら、表紙の先生の笑顔が、あるひょうひょうとした名僧の姿に重なった。 その趙州という唐代の禅僧は、師から深刻な問いかけを受け、答える代 わりに、履いていた「くつ」をひょいと頭に載せたという。この逸話の解釈 はさまざまだが、ごく簡単に思うに、こんな答えを返されたら、誰でも意表 をつかれてふっと笑い、考えすぎて自分を追いつめていたことに気づくだ ろう。「そう悩まなくても、大丈夫だよ」頭に靴は載せていないけど、先生 はそう、読者に笑いかけてくれているように思う。
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