夢の動物園 旭山動物園の明日 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2008-12-25 |
坂東 元著
世界的な自然環境破壊が続く中、野生動物と人間が共生していくた めに、動物園には何ができるのか。旭川の旭山動物園副園長で獣 医の著者が、日本の動物園の歴史や現状、自身の取り組みなどを 踏まえた上で、動物園の未来を問いかける興味深い一冊である。い までは年間入園者数で、全国一を争うほどの人気を集める旭山動物 園。閉鎖の瀬戸際まで追い込まれたにもかかわらず、行動展示など 新しい発想で人気動物園へと再生させた成功への歩みは、マスメデ ィアや多くの出版物を通してたびたび紹介されてきた。だが、その感 心は集客力などの経営的な成功に向きがちである。多くの公立動物 園は、赤字を垂れ流し続けてきた。それに対し旭山動物園は、パンダ のようなスタ-動物がいなくても、ユニ-クな発想で成功を収めること ができたという取り上げ方である。なぜ旭山動物園は成功できたの か。著者は必死に来園者のことを考えたからだと述べている。一方で ウケを狙って集客アップを図ろうとした瞬間、例えば動物園ではなくな ってしまうとも述べている。利益追求ではなく、来園者と動物のことを 本気で考えてきたのが、旭山動物園の本当の強さの理由ということに なるだろう。動物園のもつ役割は、レクリエ-ション、教育、研究、保 護・保全の四つにあるという。それらが調和する先に旭山動物園が目 指す未来を、具体的に明らかにする本書は、野生動物と人間との共生 についてだけでなく、公共的な文化施設のあり方についても、考えさ せられる一冊である。(中舘寛隆=北海道読書新聞社編集長)
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