貸し込み 価格:¥ 1,470(税込) 発売日:2007-09-26 |
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2002年秋、ロンドンの著者の自宅に、日本から一本の電話が入っ た。著者が日本の大手都市銀行に勤務していたころ、「知的判断能 力を失った脳梗塞患者に巨額な過剰融資をしたとして、返済不能に なった患者が起こした裁判で名前が出ている」というのである。著者 は同年すでに、国際金融小説「トップ・レフト」でデビュ-していた。 裁判で銀行側は五年間にわたり、「K(著者の本名)は退職して行方 不明」と言い続けていた。まったく見に覚えのないことだった。東京地 裁に陳述書を提出し、患者側証人として法廷で「銀行のうそ」を証言し た。「作家としての稀有な体験。これを書かなければ名折れになる。 必ず書こう、と」。作品はフィクションで肉付けし、日本とアメリカが舞 台の経済ミステリ-に仕立てたが、「関係者の立場に配慮して、構 想だけで2、3年はかかった」。どこまで実体験か興味深いか゛、融 資責任をめぐる関係者の言動は実にリアルだ。これにやり手の女性 弁護士や週刊誌記者など個性的な人物たちが加わり、小説のおもし ろさを際立たせている。融資先へ危険を承知で貸しに貸し込み、収 益増を図る。「もはや、そんなもうけ至上主義の時代ではない。今は 個人が泣き寝入りをしない。リスクマネジメント(危機管理)をしっかり しないと、小さな出来事が企業を崩す。それと-」と作品の中と同様、 矛先を向けたのが司法の現状。「法廷で裁判長が居眠りしたり、資 料をきっちり読まないで判決を書く人がいるのを知りました」 この作品は携帯読書サイトで今年1月から8月まで配信された、いわ ゆる「ケ-タイ小説」に加筆して刊行された。 空知管内秩父別町出身の五十歳。中学、高校では陸上部に所属し た。深川西校を卒業後進んだ早大で、瀬古利彦選手がいた競争部に 入り、3年生と4年生のとき、箱根駅伝を走った。3年では3区で瀬古 選手からたすきを受けた。 近く発売される月刊文芸雑誌で箱根駅伝を題材にした自伝的小説の 連載(タイトルは「冬の喝采」の予定)が始まる。「故郷の秩父別や深 川、函館などの場面が出てきます」と、ロンドンからメ-ルが送られて きた。
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