昨年は、食の「偽」が問われ続けた。食文化の根本にかかわる問 題だ。だが「偽」があるということは、「真」もあるということ。では、 食における真偽とは何だろう。社会的問題として取りざたされたの は、製造日、賞味期限などの数字。食品を作り、日付を記入する 側が故意に偽れば、明らかな「偽」。基本的な信頼を損ねる。ただ、 表示された数値に偽りがなければ、その食品は果たして「真」と言っ て良いものか、考えてしまう。大量生産と流通、保管のために、保 存料などさまざまな添加物が使われ、うま味調味料などで日本全 国、あるいは全世界で共通の味にする。それが合法的でも、「真」 の食品とは思えない。すべてを避けるのは不可能なので、当然口 に入れるが、添加物で味自体が変わっている食品も多い。要する に、おいしくない。食品には賞味期限内でも、時間の経過とともに 決定的に風味の落ちるものがある。逆に、チ-ズやキムチなど発 酵食品の中には、印字された賞味期限を超えて熟成が進むものも ある。どの時点までおいしいと感じるか、あるいは食べられなくなる か、それぞれの舌次第といえる。数値に換算し、線引きした情報に とらわれ過ぎると、食における本当の真偽は見えなくなる。星の数 とか、大量のグルメ情報に左右されるのも同じ。最終的に頼れるの は、自分の嗅覚と味覚のみだ。(坂本充浩)
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