鍵握る情報と信頼 安定供給と価格が課題
「アグリク-ルは無登録農薬に該当する」。昨 年11月、携帯電話に飛び込んできたニュ-ス に、空知管内由仁町の農業三田村雅人さんは (46)は目を疑った。1年前までナスやピ-マン に使用していた「農薬を使わない植物保護液」 アグリク-ルに、農薬が入っていたのだ。三田 村さんは約20年前から減農薬・自然農法に取 り組んできた。アグリク-ルは農薬を使わずに 害虫を避ける狙いで6年間ほど使用した。三田 村さんは事実を確認後、作物を直販する顧客に 直ちにおわびの手紙を出すと同時に、札幌や苫小牧などの小売店に 足を運んで事情を説明して回った。今は「商品の表示を信用し、本 質を見抜けなかった」ことを悔やむと同時に、「100%の安全・安心 の難しさ」をひしひしと感じている。
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昨年10月にはホクレンの市販用玄米製品「玄米さらだ」から農薬 が検出された。ホクレンは生産履歴を厳しく管理しており「農薬を 使った事実はなく、消去法で考えれば、隣の大豆畑の農薬が飛 散したとしか考えられない」と話す。30年以上前に使用されてい た土壌中の残留農薬「ヘプタクロル」が道南などでカボチャから検 出される例も昨年、一昨年と相次いだ。安全・安心の落とし穴は 少なくない。冷涼な気候ではぐくまれた道内の農作物は、クリ-ン イメ-ジが強い。確かに耕地面積あたりの農薬使用量は府県の半 分以下だが、「夏場に道内で収穫するジャガイモやタマネギは、寒 冷期の府県産よりは農薬使用量は多い」(道農政部食品政索課) という実態もある。石狩管内新篠津村で無農薬野菜を手がける農 業組合法人「オ-ガニック新篠津」の小原博さん(66)は昨秋、細 菌性の病害にむしばまれたダイコンに悩まされた。普段の3割程度 しか出荷できない日が十日も続いた。小原さんは「収量が落ちるの も問題だが、何より除草などの手作業が大変」と無農薬の苦労を 語る。除草のコストは、除草剤を使えば十ア-ル四千円程度、手 作業なら二万円ほどの人件費がかかる。だが、これらのコストをま るまる転嫁して売れるわけではない。
写真=有機・無農薬農産物への消費者の関心は低くないが、売れ 行きは大きくは伸びていない=ス-パ-北雄ラッキ-発寒店
札幌市西区のス-パ-北雄ラッキ-発寒店では「オ-ガニック新 篠津」などの有機野菜コ-ナ-を設けているが、小畑芳弘副店長 (52)は「まだ有機は野菜全体の売り上げの数%。もう少し値段が 下がれば」と語る。まがい物の「植物保護剤」を使ってしまったもの の、丹念に顧客との信頼回復に努めた三田村さんは「高くて買えな い有機では駄目。安全・安心だけでなく、安定(供給)も大切」と指 摘。「きちんと情報を示して、害虫被害などでどうしても農薬が必要 な時には、お客さんに納得してもらえるような信頼関係を築きたい」 と話している。
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