建倉 圭介 著 「デッドライン」を読みました。
第二次世界大戦末期、欧州戦線から米本国に帰還した日系二世のミノルは、世界初のコンピューター、「エニアック」の開発に参加する中、日本への原爆投下が間近であることを突き止める。
母国にいる家族を守るため、一刻も早く「降伏」を促さなければならない。
ミノルは、酒場で出会った日系人の踊り子エリイと共に、日本への密航を企てる。
すべてを投げ捨て、アメリカ大陸を北に向かう二人。
一方、原爆投下計画の漏洩を察知した米政府は、ミノルとエリイの日本上陸を阻むべく、追跡チームを送り込む。
二人の壮大な逃避行がはじまる―。
北米大陸を横断し、アラスカを経由し、アリューシャン列島から樺太へ、そして北海道から東京へ、さらに広島へと向かう。
願いはただひとつ、原爆投下の阻止。
ミノルとエリイの激しい愛、ミノルを追う米軍側の日系人たちとの息詰まる攻防、そしてサスペンス漲(みなぎ)る終盤の対話と奔走。
単なる冒険小説にとどまらず、
コンピューターや原爆の開発史・開発秘話などの歴史的な側面も掘り下げられています。
また、白人vs日本人をはじめとする黄色人種・インディアン・エスキモー、日本人vs混血児・アイヌなどの人種(民族)差別、マイノリティ差別も丁寧に描かれています。
第二次世界大戦中に気高く生きた日系人たちの、命をかけた戦争を描く秀作です。