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嘘の裏の真実

 我が家のすき焼きイベントで肉は主役ではなかった。「お肉はね、おダシなの。おいしいお味がみんな出ちゃってカスなのよ。しょうがないからお父さんとお母さんが食べてあげるけど、子供たちはおいしいおネギやお豆腐をたんとお食べ」と潜在意識の隠しポケットの底にあるメンコの裏にまで刷り込まれた。

 普通こういう呪縛は、サンタクロースが来なくなる頃までには解けるものである。しかし、小学校や中学校で友達とすき焼きの話なんかしないですよね。情報遮断と、両親の綿密な連係プレイにより、私にとって真実は成人式を迎えるころまで行方知れずであった。

 1970年、米帝との安保闘争に敗れ、アメリカ館の月の石でも見に行こうかと、はじめて新幹線に乗り大阪万博に向かった。宿泊は薬剤姉の嫁ぎ先の津。車で会場まで連れて行ってもらったが、アメリカ館をぐるぐる巻いている人の列を見てあきらめました、本当に見たかったのに。

 夕食は松坂の和田金。網焼き、あんな肉の塊食ったの初めて、イヤーうまいもんだ。その後ですき焼きが出てきた。うん?肉だけ焼いて、どうぞですか?周りを見ると皆うまそうに肉を食っている。その瞬間、二十数年の記憶が暴れ馬のように頭の中を駆け回った。も、もしかするとだまされていたのか?

 インターネット上にすき焼き占いというのがある。早速やってみると、あなたはすきやきのタネで言うと「肉」ですと出た。

 「いつも中心的な存在、、、パーティーなどでは必要不可欠な、、、義理人情を重んじ、周囲から信頼、、、どんな困難な状況にあってもパニックになることなく、、、」

 これ、全く違っているのですけれど。逆です。パニック症候群など、人体実験に献体しようと考えているくらいなのに。

 占いが外れるはずは無い、きっと解釈が間違っているのだと考えると、合点がいった。私は確かに「肉」である、ただしダシに使われる「肉」なのだ。衆院選の刺客のように、使い捨ての運命なのである。そういえば人生において何度「俺をダシに使いやがって」とつぶやいたことか。

 親の有邪気な嘘が、子供の将来をスポイルしたとしか思えない。すき焼きでは肉が主役と教えてくれてさえいれば、今頃は社長か大臣、、、

 最近やっぱり肉より豆腐のほうがうまいのじゃないかと思うことが多くなってきた。年をとったからかなあ。あっ、それと写真は和田金ではありません。


謝辞:この文章はシャロンさんの文に触発され書かれたものです。


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