万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国WTO加盟の盲点-その2-

2007年07月21日 17時31分18秒 | 国際経済
 中国のWTO加盟に際して見落としてしまった視点は、中国政府による人民元管理のみではありません。もうひとつ重要な問題点と挙げるとしますと、それは、被害報告が世界各地で報道されていますように、中国製品の安全性に関する合意が欠けていたことです。

 そもそも関税率削減や数量制限の撤廃といった貿易の自由化を主たる射程としてきたWTOは、市場のグローバル化に対して、必ずしも充分な対応能力を持つわけではありません。WTOは、”量”には関心を払っても”質”には無頓着なのです。このため、危険性のある製品や健康被害を起こすような製品に対しては、輸入国側が、国内法に基づいて検疫を行ったり、輸入禁止措置を設けたりして対応することになりました。この措置ですと、被害が発生してから対処する場合が多く、消費者は、中国製品に対して不安を持ち続けることになります。

 WTOの加盟に際して安全基準を課すべきなのか、あるいは、安全性に関する国際的なルールづくりを進めるべきなのか、といった問題は、中国問題に限らず、今後、国際社会において議論を要する課題であると思うのです。

 

 

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