万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

中国は尖閣諸島の領有権を争うなら法廷で

2016年08月09日 15時06分18秒 | 国際政治
中国公船また領海に=接続水域に最多15隻―沖縄・尖閣沖
 尖閣諸島の周辺海域では、連日のように中国公船が領海侵犯を繰り返しており、日中間の緊張は高まる一方です。日本国政府による抗議に対して、中国側は、”釣魚島は中国領”の主張を繰り返すのみであり、あくまでも、自国領として海上警備の管轄権を及ぼそうとしています。

 仮に、中国が、尖閣諸島は歴史的にも法的にも自国領であると主張するならば、この問題の解決は、国際司法の法廷に訴えるのが筋というものです。”自分が欲するものが自分のもの”では、泥棒のメンタリティーと変わりはありません。武力による一方的な現状変更は、国際法でも戒められており、中国の行為は、自らの暴力的侵略性を自らの行為で証明するようなものです。

 この件に関しては、最近、ネット上で発見した記事があります。日本側に不利とされる資料に触れないのはアンフェアなので、敢えて書きますが、それは、70年代末に、在日英国大使館が、本国に対して尖閣諸島の日本領有に対して疑問があるとする公電を打ったとする記事です。イギリスが疑義を抱く根拠として、1846年にイギリスが、尖閣諸島の測量について、中国の福州に設けられていた琉球王国の「琉球館」に対して、清国の福建布政司への申請代行を求めた一件を挙げています。この時、福建布政司は、測量を拒否したものの、イギリスは、勝手に測量したそうです。琉球王国の正史として編纂された『球陽』にも記載されているそうですが、原文に辿りつくことができず、当ネット記事が正確であるのかは不明です。何れにしても、当ネット記事では、この事実を日本国側にとって”不都合な事実”とし、日本領有説が覆されると主張しているのです。琉球王国が、尖閣諸島を清国領とみなしていた証拠として…。しかしながらこの主張には、以下の諸点において反論が可能です。

・当事、イギリスは、尖閣諸島を琉球王国領であると見なしていた(日本国政府の反論でもあるらしい…)。
・福建布政司側が拒否したにもかかわらず、イギリスは測量しており、尖閣諸島に対する清朝による実効支配は成立していない(近代国際法上の先占の要件を清朝は充たしていない)。
・当時の琉球王国は、薩摩藩と清国との二重朝貢関係にあり、外事に関しては、清国に判断を任せた可能性がある。
・女真族の王朝であり、かつ、既に消滅した清国の版図を、そのまま今日の領有権の根拠とすることは出来ない。
・福建布政司が、正確に尖閣諸島の位置を把握していたか疑問である。

  こうした諸点からしますと、尖閣諸島が歴史的に中国領であるとする主張は、「九段線」と同じくらい怪しいのですが、中国が、この一件を根拠にICJといった国際司法機関に訴えるならば、日本国政府は、応訴することでしょう。平和的にこの問題を解決する手段がありながら、敢えて、中国はそれを用いないとなりますと、やはり中国は、国際社会の平和を破壊する”侵略国家”である、と言わざるを得ないのです。

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コメント (2)
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