万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日本国政府は常設仲裁裁判所の活用をー単独提訴でも大丈夫

2016年08月16日 15時17分18秒 | 国際政治
尖閣海域、小康状態に=接続水域4隻、領海ゼロ―中国公船
 尖閣諸島周辺海域では中国公船の活動が続いており、日本側も、厳重な警戒態勢を敷かざるを得ない状況に至っております。昨日も、竹島に韓国の国会議員が上陸しており、領土をめぐる諸外国との対立は地域の不安定化の要因でもありますが、これらの問題は、法の支配の原則に照らし、司法解決が望ましいことは言うまでもありません。

 司法解決については、尖閣諸島については中国側からの提訴の動きはありませんし、竹島については、韓国による不法占拠以来、日本国政府は、国際司法裁判所(ICJ)での解決を訴えてきました。しかしながら、ICJの手続きでは当事国の双方が提訴に合意する必要があり、中国が司法解決を回避し、韓国も拒絶している現状では、ICJでの解決は極めて難しいとしか言いようがなかったのです。ところが、先月12日に南シナ海問題について下された仲裁裁定は、俄かに、一方の当事国による単独提訴に対する関心を高めることとなりました。南シナ海問題では、国連海洋法条約上の手続きに従って常設仲裁裁判所(PCA)がフィリピンによる訴えを受理しましたが、同仲裁裁判所の訴訟手続きを見ますと、他の問題でも単独提訴が可能なようなのです。常設仲裁裁判所では、近年、「仲裁ルール2012」が制定されおり、この手続きでは、提訴に際して当事者双方の合意を条件に付していません。また、領土や境界に関する問題も扱っており(国連海洋法条約のように境界画定等に関する適用除外の宣言を認めていない…)、例えば、2013年に、東チモール共和国が、2002年5月20日に締結されたチモール海条約に違反するとして、オーストラリアを提訴しております。このケースでは、オーストラリアは応訴しておりますが、今般の中国の態度のように、応訴しない場合には、反論権の放棄と見なされるようです(「仲裁ルール2012」第32条)。

 日本国内では、ICJに関心が集中しがちでしたが、中国や韓国といった諸国に対しては、単独提訴可能なPCAの方が遥かに効果的です。否、日本国政府は、平和裏に司法解決できる手段が存在しているのですから、積極的にPCAを活用すべきです。たとえ仲裁裁定が無視されても、日本国側の主張を認める仲裁裁定を得ることは、中国や韓国の主張や行為の違法性を国際社会において明確にすることでもあるのですから(もちろん、この方法は、北方領土問題でも適用可能…)。

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コメント (2)
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