万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

尖閣危機ー日中漁業協定は怖くない

2016年08月12日 15時42分31秒 | 日本政治
尖閣諸島の接続水域内、中国公船が新たに2隻
 日本国政府の強い抗議にも拘わらず、中国の尖閣諸島に対する挑発的な行為は収まる気配がありません。こうした中、ネット上では、日中漁業協定を挙げて中国を擁護する声も聞かれます。

 1997年11月11日に署名された日中漁業協定が中国擁護論とされる理由は、尖閣諸島周辺を含む北緯27度以南の水域(協定第6条(b))を対象に、同協定に付属する交換書簡の形式で、日中両国が、中国国民に対して日本国側の関連法令を適用する意向がないことを確認し合っていたるからです。日本国側の譲歩ぶりば、尖閣諸島の領有権についても、日本国政府が中国側の言い分を認めたからではないか、と言いたいのでしょう。しかしながら、この措置は、確かに不平等条約的ではあっても、あくまでも、日本が優遇待遇を中国国民に限って特別に認めているだけのことであり、当水域に対する日本国側の管轄権を否定しているものではありません。

 また、北緯27度以南の水域に関して、同協定の対中譲歩については、現在に至るまで両国間の水域の境界線が未確定であり、かつ、当時、沿岸国の間で発生していた大陸棚の境界線とEEZとの重複について、国連海洋法条約における解釈が曖昧であったという事情を考慮する必要があります(日本国政府は、沖縄トラフまでを中国の大陸棚とする中国側の主張に対して、中間線を主張…)。今日では、沿岸国双方からの中間線とする方向で固まりつつありますが、当時にあっては、この問題の先行きは不透明であったのです(日韓漁業協定でも同様の問題がある…)。

 なお、同協定の第14条2では、最初の5年の期間が満了した後では、6か月前に文書による予告を与えることで、双方とも協定を終了させることができます。中国側に有利とされる協定ですから、尖閣諸島に対する中国の挑発的態度に対する対抗策として、日本国政府側から同協定を終了させることも一案なのです。問題含みの日中漁業協定は、中国擁護論者からは日本国政府にとっての”不都合な事実”と見なされておりますが、怖がる必要は全くないと思うのです。

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