万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

日中韓外相会談ー”敵の味方は敵”では?

2016年08月24日 15時19分12秒 | 国際政治
北朝鮮ミサイル対処で連携=首脳対話実現へ協力―日中韓外相が会談
 本日、日本国の岸田文雄外相、中国の王毅外相、並びに、韓国の尹炳世外相の三者が、東京で開かれた日中韓外相会談で顔を合わせました。折も折、北朝鮮が日本国の日本海に向けてミサイルを発射したため、三カ国外相は、”敵の敵は味方”とばかりに対北協力での連携を強調しています。

 しかしながら、この三国、”敵の敵は味方”、即ち、敵である北朝鮮に対して三国揃って”味方”となったのでしょうか。現実には、三国の間には埋めがたい溝があります。南シナ海問題の仲裁裁定を無視した中国は、尖閣諸島に対しても領土的野心をもはや隠そうとはしていません。また、北朝鮮の相次ぐ核・ミサイル実験により、韓国政府が米軍のTHAAD配備を受け入れたため、中国は、韓国に対して怒りを顕わにしています。日中関係も中韓関係も悪化の一途を辿り、そして日韓関係も、竹島や慰安婦問題等をめぐり、両国国内には不満が鬱積しており、決して良好ではないのです。こうした状況にあって、唯一、参加国を結束させたのが北朝鮮のミサイル発射なのですが、この表面上の結束も要注意です。何故ならば、中国は、北朝鮮の”敵”を偽装している可能性が極めて高いからです。国連決議による制裁を受けても、北朝鮮が体制を維持し、今なお核やミサイル実験が実施できる背景には中国の背後からの支援があることは、最早、公然の秘密です。対北支援は国連の”制裁破り”なのですが、北朝鮮の崩壊が自らに飛び火するのを恐れるあまりに、中国は、内心においては苦々しく思いつつも、北朝鮮を”生かし”続けているのです。国連安保理の常任理事国でありながら、安保理決議の遵守よりも自国の利益を最優先として北朝鮮の延命を選択するのですから、中国の”敵ポーズ”ほど当にならないものはありません。つまり、中国は、北朝鮮の敵ではなく味方なのです(両国は一党独裁体制の絆で結ばれている一種の運命共同体…)。

 共通の敵の出現は、常々、疎遠な国同士の結束を強めるものですが、”敵の敵は味方”の論理で中国を味方に位置付けますと、その先には思わぬ落とし穴が待っていることでしょう。”敵の味方は敵”という現実を直視し、対北結束で中国に対する警戒感を解いてはならないと思うのです。

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コメント (2)
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