万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

慰安婦資料「世界の記憶」申請を日本国の名誉回復のチャンスに

2016年08月19日 15時14分18秒 | 国際政治
 本日、産経新聞の一面に、慰安婦資料のユネスコ「世界の記憶」登録問題に関する記事が掲載されておりました。今回の申請は、韓国、中国、日本、オランダ、フィリピン、並びに、台湾の民間団体による国際共同申請であり、今年5月に共同申請書が提出されたそうです。

 「世界の記憶」については、昨年登録された「南京大虐殺文書」や「明治日本の産業 革命遺産」の登録プロセスにおいて、日本政府の対応が不十分、且つ、譲歩的であったことから、慰安婦資料についても日本国内には強い警戒感があります(前回の中国単独申請では却下されている…)。登録手続きについては制度改革が実現したものの、日本国政府が対応を誤りますと、前回の登録時の二の舞になる怖れがあるからです。慰安婦問題については、昨年末の日韓合意で「国連などの国際社会においてお互いに避難・批判することは控える」とされたものの、ソウル市が登録のための活動を行っている民間団体に資金援助を実施しており、この合意は、誠実に順守されているとは言い難い状況にあります。一方、日本国政府も、事実に関する情報発信は合意に含まれないとする立場にありますので、民間団体による「世界の記憶」の申請手続きは、日本国側にとりましても、絶好のチャンスともなります。

 当記事によりますと、慰安婦資料の殆どが元韓国人慰安婦の証言であり、数少ない公文書形式の資料も、オランダ、アメリカ、イギリスのもののようです。オランダの資料は、「スマラン事件」の裁判記録なのでしょうが、この事件は、占領地で起きた軍規違反の犯罪であり、朝鮮半島における国家的動員としての組織的強制連行の証拠とはなり得ません。日本国政府が、韓国や中国には証拠となる資料がなく、慰安婦の証言頼りである現状を説明し、かつ、事業者に雇用されていた’職業婦人’であったことを証明する内外の資料を提示すれば、説得力も増します。また、アメリカでは、韓国側の主張に反して、”職業婦人”であったと記す公文書も公開されていますので、これを活用することもできるでしょう。

 昨年末の慰安婦合意では、日本国側が戦時の韓国人犯罪被害者に対して10億円の人道的支援を約すことで、一先ずは決着を見ましたが、日本国の名誉回復の問題は積み残されております。慰安婦資料の「世界の記憶」への登録申請は、日本国が国際社会において歴史的事実を発信し、名誉を回復する数少ないチャンスの一つなのですから、日本国政府は、この機会を逃してはならないと思うのです。

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