万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

若者のワクチン接種問題

2021年07月09日 11時51分53秒 | 日本政治

 コロナ・ワクチンは64歳以下にも接種対象が広がったことから、職域接種や大学での接種が既に始まっています。遺伝子ワクチンについては治験が終了しておらず、安全性が確認されてはいないだけに賛否の分かれるところなのですが、年齢が下がるほどワクチン否定派は増加する傾向にあります。この状況に危機感を覚えたのか、日本国政府は、若者層への効果的な接種拡大策を模索しているようです。メディアもまた、’若年層が懐いているワクチン接種への不安感を取り除くのが接種拡大への鍵’とばかりに、ワクチン安全説を一方的に振りまいています。しかしながら、政府もメディアも、心から若者を大事に思っているのでしょうか。

 

 若年層にワクチン接種を拡大させたい政府の思惑とは、先ずもって集団免疫の実現があります。人口の6割から7割程度が接種すれば集団免疫は成立すると想定されており、政府にとりましては、この数値が達成すべき’ノルマ’なのでしょう。理論上においては集団免疫が成立すれば経済活動に対する規制も解除できるため、政府の基本的なスタンスは、’社会全体のために若者はワクチンを接種すべき’ということになりましょう。そして、’大人’の立場から教育的な意味を込めて、’ワクチン接種は自分だけのためではなく、皆さんの大切な人たちを護るためでもあります’とアピールし、若年層に対して利他的精神、あるいは、自己犠牲の精神の発揚をも求めているのです。

 

 結局、政府やメディアといったワクチン推進派の人々は、一先ずは教育者の視点から若者層に対して’理解’という名の’犠牲’を説いていることとなるのですが、その一方で、ワクチンの安全性を危惧する人々は、全く別の見方をしています。そもそも、ワクチン警戒派の人々は、マスメディアが喧伝するような’情弱者’や’騙され易い人’ではなく、むしろその逆です。その多くは、政府やメディアが流す一方的なプラス情報に納得せず、様々な角度からのマイナス情報を自発的に収集したからこそ、ワクチンに懐疑的にならざるを得なくなった人々なのです。実際に、政府が目標としている集団免疫については、少なくとも新型コロナウイルス感染症に関しては条件が揃う可能性が極めて低く、成立し得ないと見なしています。つまり、ワクチン推進派の目的そのものに対して否定的なのです。

 

加えて、ワクチン警戒派の人々は、医科学的な見地からも遺伝子ワクチンが100%安全ではないことを確信しています。アメリカのCDCやイスラエルの保健当局も認めるように、青年層に心筋炎や心膜炎が発症するリスクが高いことは統計において裏付けられています。また、ワクチン推進派は’デマ’として一蹴しているものの、将来的に身体に何らかの直接、あるいは、間接的なマイナスの影響を及ぼす可能性も否定はできません。本ブログでも再三述べているように、各種臓器の機能不全、自己免疫性疾患、免疫不全、癌や腫瘍の誘発、認知症などの脳疾患、不妊、視力低下や失明など、様々なリスクが指摘されています。ワクチン接種によって一生を台無しにしかねないのですから、将来的なリスクを考慮すれば、若年層にワクチンを接種されることは’酷’であると考えるのです。

 

このことは、ワクチン警戒派の多港は、たとえ集団免疫が成立しなくとも(もっとも集団免疫の成立は無理…)、即ち、自分たちがワクチン未接種の若者層から感染したとしても、それを甘受するつもりであることを意味します。言い換えますと、ワクチン警戒派の人々は、自らを感染リスクに晒してでも、若者の命や将来を護ろうとしているのです。この考え方では、自己犠牲の精神は、むしろワクチン警戒派である’大人’’の側にあることになるでしょう。

 

もちろん、自ら進んで積極的にワクチンを接種したい若者もおりますので、こうした人々に対しては、その自由意思に任せるしかありません。しかしながら、ワクチン接種に消極的な若年層を言葉巧みに接種に誘導しようとする政府やマスメディアの方針につきましては、やはり、見直すべきではないかと思うのです。別の角度から、若者たちの未来を、そして国の行く末を思う人々もいるのですから。


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孫氏のロスチャイルド発言が暴露する私的世界支配の問題

2021年07月08日 11時46分26秒 | 国際政治

 先日、ソフトバンクグループを率いてきた孫正義氏が、19世紀にあって産業革命を牽引したのはユダヤ系金融財閥のロスチャイルド家であったとして称賛し、自らも’現代のロスチャイルド’となる決意を表明したと報じられておりました。何故、この時期にロスチャイルド礼賛発言があったのか、不思議なところなのですが、デジタル社会化の波が押し寄せている今日、同氏の発言は、本人の意図を越えた’何か’を暴露しているようにも思えます。

 

 近代という時代はヨーロッパにおいて啓蒙思想が広がり、人は生まれながらにして自由で平等な存在であるとする意識が根付いた時代でもありました。ギリシャ哲学に起源を遡る同思想が(古代ギリシャの民主主義が再生…)、近代人権思想、延いては民主主義の定着に貢献したことは疑いなく、自由、民主主義、法の支配、平等・公正といった諸価値は、今日、自由主義国家にあって制度化されています。人類史からしますと、人道が普遍性の下で全世界に広がった点において近代という時代にあって’光’の側面であったと言えましょう。

 

 しかしながら、近代は、’光’のみをもって語られる時代ではなかったことは、誰もが知るところです。そして、近代の’闇’の部分とは、まさしく産業革命から生まれているのです。もちろん、産業革命は、生産力の飛躍的な向上により人々の生活を豊かにし、様々な発明によって利便性を増したことは、’光’の側面として指摘することはできます。しかしながら、物質面における’光’は、必ずしも人道面におけるそれとは限りません。産業革命の時代にこそ、炭坑や工場での過酷な労働条件下での重労働のみならず、都市のスラム化、農村における伝統的なコミュニティーの崩壊、賃金労働や株式発行による人や企業の商品化、拝金主義など、人類の精神的な危機にも繋がる重大な問題を抱え込むことともなったのです。戦争が激化したのも、近代兵器や生物化学兵器の開発など、無制限なテクノジーの発展を許したからに他なりません。

 

 産業革命という時代は、一般の人々の意向などお構いなく、テクノロジーの発展に丸投げする形で遂行された時代でもありました。ようやく芽吹いた民主的な制度も、産業革命による社会全体の大変革には為す術もなかったのです(社会の社会主義・共産主義化や全体主義化もその一環では)。そして、孫氏いわく、こうした時代を画する大変革を実現した立役者こそ、産業革命の強力な推進力ともなったテクノロジーの開発に巨額の投資を行ったロスチャイルド家ということになるのでしょう。孫氏の歴史観によれば、近代という時代を動かしたのは資本家であり、デジタル化が人類に大変革をもたらしつつある現代にあっても、見習うべきモデルと見なしているのです。

 

 そして、ここで考えるべきは、ロスチャイルド家とは、一民間ユダヤ人、あるいは、民間のユダヤ系一族に過ぎないことです。つまり、孫氏が褒め讃えるように産業革命を成し遂げたのがロスチャイルド家であるならば、一人の個人、あるいは、一つの血縁集団の人間の私的な意志によって、全世界が大改造されてしまったこととなるのです。ロスチャイルド家は、政治の枠外にありますので、統治の正当性を有しているわけでもなく、国民、あるいは、人類から統治権を託されているわけでもありません。言い換えますと、最も金融力を有する一個人、あるいは、一族による私的支配が成立してしまったとも言えましょう。

 

この側面からしますと、資本主義と民主主義とは全くの別物です。人類に人道主義や民主主義を広げた近代啓蒙思想は、産業革命の波を受けて脇に追いやられ、結局、近代固有の対立構図を形成した資本主義も共産主義も、共に’闇の子’なのです。民主主義は、自由主義国にあって表面上は命脈を保ちつつも、政治の世界を含め、人類は、私的な金融支配の許に置かれることとなったのです。

 

ロスチャイルド家を以って資本家を世界の改革者、否、支配者であると公言した孫氏の発言は、図らずも、陰謀論として揶揄されてきたディープ・ステート論の信憑性を高めたことにもなりましょう。ディープ・ステートと言う表現が怪しげに響くのであれば、本ブログにあってしばしば登場する私的な超国家権力体と表現してもよいかもしれません。何れの表現であれ、グローバルレベルの金融ネットワークを以って全世界の経済のみならず政治にまで多大な影響を与える私的な勢力の問題は深刻です(ロスチャイルド家はその一角に過ぎず、イエズス会や東インド会社の系譜を引くより規模の大きな勢力、すなわち、イルミナティ―である可能性も…)。

 

日本政府が進めているムーンショット計画も半ばカルトである点は再三指摘がありますが、今日、パンデミック化によって全世界を覆うコロナ禍も、先端的バイオテクノロジーやナノテクノロジーがより徹底した人類支配の目的のために投入された結果であるのかもしれません。そして、今日にあっても、産業革命時と同様に、テクノロジーによる利便性の向上は、人道や民主主義といった諸価値に優先されるかもしれないのです。

 

孫氏を含めて同勢力が牽引する全面的なデジタル化やAIの導入、あるいは、量子コンピューターなどの次世代技術が全人類の完全管理を現実のものとする中、超国家権力体が推し進めるテクノロジーの発展の先に何があるのか、人類は、しっかりと見極めるべきと言えましょう。全人類が、私的勢力の支配に服さなければならない理由や根拠など、全くないのですから。


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’ワクチン警戒派デュープス論’を三次元構造で見ると

2021年07月07日 13時20分28秒 | 国際政治

 本日、ネット上に興味深い記事が掲載されておりました。それは、「SNSの偽情報を信じて中国やロシアのデュープスになる人々(JBpress)」と題する記事です。ワクチンの危険性を訴えている人々を’デュープス’、即ち、愚か者扱いしているのですから、堂々と喧嘩を売っている、あるいは、’挑発’しているようなものです。しかしながら、冷静に考えてみますと、この記事こそ、’陰謀’、あるいは、ネット工作であるのかもしれません。

 

同本記事の論旨は至って単純です。現在の国際社会は情報戦に満ちている⇒中ロは前回の米大統領選でも影響工作を実行している⇒Qアノンやトランプ支持者も中ロの影響下にある⇒遺伝子ワクチンに関するリスク情報の流布も中ロによる情報操作である⇒ワクチン・リスク情報を信じる中ロに操られる’愚か者’である、という三段論法です。この論法は、先日、全てのワクチン・リスクを’デマ’と断言した河野太郎ワクチン担当相の主張とも通じています。何れにしましても、ワクチン・リスクを懸念する人々は思考力に劣り、偽情報に騙される’愚民’という烙印が押されているのです。そして、言外に述べられている真の結論とは、’故に、ワクチンのリスク情報を信じ込んでいる人々も早く目を覚まし、安心して遺伝子ワクチンを接種すべし’なのでしょう。

 

 しかしながら、当初、デマとして嘲笑された新型コロナウイルス武漢研究所流出説が今では信憑性を増してきているように、フェイクとされていた情報が後から事実と判明する事例は枚挙に遑がありません。否、工作を目的として政治的な意図のもとで流布された情報であっても’真っ赤な嘘’ではなく、事実が混ぜ込んであるからこそ、多くの人々が同情報を信じるとも言えましょう。バイデン氏の長男であるハンター氏に関するチャイナ疑惑も事実に基づくものでした。フェイク・ニュースというものは100%の作り話ではなく、人々を信じさせるに十分な事実が含まれている場合が多く、しばしば正真正銘のリークであるケースも少なくないのです。国民の知る権利に照らしてフェイク・ニュースの排除が問題となる理由は、それに内包する事実をも同時に葬り去るリスクと背中合わせであるからに他ならないのです(フェイクの名の下で、国民が知るべき事実も闇に葬られてしまう…)。

 

 そして、ここで、一つの疑問点が浮かび上がってきます。同記事の筆者は、中ロの工作活動に対する批判からワクチン接種を薦めています。その基本的なポジションは、’敵国’の工作から自国民を護ろうとする’愛国者’のものです。しかしながら、その一方で、ワクチン・リスクは、デマとして片付けられるレベルのものではありません。ワクチン接種後の死亡や重篤な有害現象は多数報告されておりますし、医科学的な根拠を伴うリスクの指摘も少なくないからです。即ち、ワクチンは安全とする主張は、医科学的に証明されているわけではなく、’因果関係は評価できない’あるいは’絶対にこれを認めない’とする頑ななまでの信念に過ぎないのです。SNS情報信じる人々を’デュープス’とするならば、確かな根拠もなく因果関係を頭から完全否定する人々も、’デュープス’ということになりましょう。そして、ワクチンのリスクは実在するのですから、同記事の筆者は、愛国者の立場を強調しながらも、逆に、自らの国民に対して命を危険に晒す、つまり、結果的には自国民の’自滅’となりかねないワクチン接種を薦めているということになるのです。こうしたあたかも’愛国者の仮面’を被ったアンチ愛国者であるかのような態度の謎を解くカギは、近代以降、国際社会を覆ってきた三次元構造にあるのかもしれません。

 

国際社会を平面的に捉える見方からすれば、同記事の筆者の見解は、自由主義国(アメリカ)対全体主義国(中ロ)という二項対立、二次元対立に基づいています。同構図において、アメリカの製薬会社であるファイザー社やモデルナ社が開発した遺伝子ワクチンは、自由主義国の救世主であり、多くの国民をコロナ禍から救っていることになります。つまり、ワクチン接種は、中ロという脅威を前にした国民間の結束の要に位置することとなりましょう。

 

その一方で、国際社会における構図を把握する視点を二次元から三次元に転換しますと、同記事こそ、’影響工作’である可能性も見えてきます。国際社会における三次元構造とは、表面的には平面的な国家間対立の様相を呈しながら、その実、敵対する両者をさらに上から操る’上部’が存在しているというものです。所謂’両頭作戦’双方を巧妙に欺く’偽旗作戦’というものなのですが、’上部’の目的が’人類にできる限り多くのワクチンを接種させる’というものであるならば、二次元における国家間の対立構図を巧みに利用して、自由主義国において一定数を占めるワクチン警戒派の人々を接種に追い込むという手法が選択されても不思議ではありません。

 

同記事がファイザー社の意向を受けて執筆された可能性もありますが、今日の国際社会は、もはや単純な平面図では理解できない状況にあります。三次元の立体構造として冷静に観察すればこそ、危機の本質が把握され、それからの脱出方法も見出されるかもしれません。あらゆる可能性を考慮しつつ、騙されないことこそ、肝心なのです。


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ワクチン安全説からリスクを読み取る

2021年07月06日 16時01分18秒 | 社会

 ワクチン接種をめぐっては、政府やマスメディアが安全アピールに傾斜する一方で、ネットやSNSでは健康被害の報告が後を絶ちません。ようやく大手メディアもワクチン接種会場にあって60歳代の男性が倒れ、救急搬送先の病院で亡くなった事例を報じるようになりましたが、6月下旬の段階でワクチン接種後に356名もの死亡例が報告されたことは厚生省も認めるところです。

 

 現状にあって、政府は、ワクチンに関する情報を全てデマと決めつけ、疑わしい健康被害についても全ての因果関係は悉く否定しています。因果関係さえ認めなければ、あらゆる健康被害は’なかったこと’にできますので、たとえ医科学的な根拠に基づいてワクチンのリスクを訴えても、門前払いとなるのです。それでは、ワクチン・リスクは、安全神話のシャワーを浴びて、人々の意識から洗い流されてしまうのでしょうか。諦めるのはまだ早く、何か方法があるのかもしれません。そして、その一つが、ワクチン推進派の人々の主張からリスクを読み取ることなのではないかと思うのです。

 

本ブログでは、6月28日付の記事で河野太郎ワクチン担当相がデマの根拠として挙げた資料からリスクを見出すという作業を試みてみました。同資料の他にも、ワクチン効果のアピールが同時にリスクを示唆する場合があります。例えば、ファイザー社は、自社のmRNAは遺伝子操作されているため、抗体産生効果が自然感染による抗体の十倍から数十倍に飛躍的にアップしていると自慢しています。その一方、このことは、短期間で消滅する自然のmRNAとは違い、人工的に修飾されたmRNAは、ヒトの体内あってスパイク蛋白を大量に作り続けていることを意味します。この事実こそ同ワクチンが劇薬とされる所以なのでしょうが、全てのワクチン接種者ではないにせよ、接種直後から体内に大量のスパイク蛋白質が生成されれば、ヒトの体に相当のダメージを与えることは容易に推測できます(血栓の原因となると共に、期間は不明なものの臓器への滞留や心筋症や心膜炎の原因に…)。

 

また、先日、ワクチン接種によるメモリーB細胞のリンパ節における長期的活性が同ワクチンの効果の持続性を示唆しているとの研究結果も報じられていました。これが事実であれば、ワクチンによる抗体効果が半年から8か月後には消滅するとする懸念については、完全に払拭されましょう。その反面、この報告も、安全説が言うほどにはワクチン接種の影響は一時的なものではなく、永続性を証明することにもなります。そして、メモリーB細胞の長期的活性は、RNAウィルスにありがちなADEのリスクを高める可能性もありますし、将来的には体内の慢性的な炎症、自己免疫疾患、あるいは、免疫不全等を誘発するかもしれません。また、メモリーB細胞によるワクチン効果が永続化する条件として、同抗体が効かない変異株が出現しない点を挙げていますが、このことも、変異株が登場すれば元の木阿弥となる可能性を示しています。

 

加えて、mRNAワクチンは、人工的にRNA鎖の塩基配列を即座に造り出せるため、変異株に対して即応できるとされています。この即応性のメリットも、変異株が出現する度にワクチンを打たなければならなくなりますので、過剰なワクチン接種のリスクを意味するデメリットともなりましょう。

 

政府や製薬会社側が積極的にリスクを証明する実験や検証を行うとは思えませんので(本来、生体検査や精密な解剖でリスク証明はできるはず…)、ワクチンに内在するリスクをワクチン安全派の人々にも理解してもらうためには、むしろ安全派の人々が主張する根拠に基づいてリスク面を説明するしかないのかもしれません。遺伝子ワクチンの劇的な効果こそ、自らのリスクを自ずと語っているのかもしれないのですから。


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環境政策が環境破壊の元凶となる矛盾

2021年07月05日 13時19分18秒 | 日本政治

 梅雨の季節となりますと、長引く雨による地盤の緩みが災害を招くことは多々あります。しかしながら、昨日、熱海市で発生した土石流は、過去に類を見ないほどに凄まじいものでした。山肌から怒涛の如く流れ下る濁流に次々と住宅がのみ込まれる様子に言葉を失った方も少なくなかったことでしょう。

 

 過去に事例を見ないような破壊的な土石流は、激しい風雨や記録的な豪雨がもたらしたものではなく、当時、同地方の天候は長期的に降雨が続く状況にあったそうです。このため、住民の方々も、早急な避難が必要なほどの危機感はなかったと言います。それにも拘わらず、大規模な土石流が発生した要因として挙げられているのが、起点にあった盛土の存在です。静岡県は、因果関係は現時点では不明としながらも、盛土との関連性を調査する意向を示しております。

 

 それでは、この盛土、何故、熱海市の森林に存在していたのかと申しますと、メディアの報じるところによれば’開発目的’なそうです。そして、この開発とは、メガソーラの建設であった可能性が極めて高いのです。全国有数の観光地でもある熱海市周辺や伊豆半島では、以前より、観光業に従事する人々や住民の反対を押し切る形でメガソーラの建設が推進されてきました。豊かな自然は重要な観光資源でもありますので、同地では、既に、環境政策が環境破壊をもたらすという矛盾が政治問題として表面化していたのです。

 

こうした経緯があればこそ、土石流の発生直後から、ネット上ではメガソーラ原因説が拡散されたのですが、大手メディアは、何故かこの点については積極的に触れようとはしていません。その理由として推測されるのが、菅首相が掲げた2050年を目標とする脱炭素政策です。僅か30年足らずで日本国のエネルギー源を化石燃料から自然由来に全面的に転換しようというのですから、この政策は無謀とも言えるのです。そして、この目的を実現するためには、早いペースで再生エネを普及させる必要があり、その成否の鍵の一つとなるのが、伊豆地方のみならず全国で推進されているメガソーラの建設なのです。政府としては、日本全国の山林を切り開く、あるいは、休耕田を利用して太陽光パネルを敷き詰め、可能な限り再生エネの発電量を増やしたいのでしょう。

 

仮に、メガソーラの設置が今般の土石流の原因ともなれば、太陽光発電の拡大計画は大幅に見直さねばならなくなりますので、同目標を国際公約として掲げている菅政権が、これを’不都合な事実’と見なしたとしてもおかしくはありません。マイナス情報は極力排除するのが菅政権の基本方針ですので、土石流メガソーラ原因説もできることならば国民には伏せておきたいのでしょう。

 

 しかしながら、今般の熱海市での土石流の被害はあまりにも酷く、たとえ政府が情報を隠蔽しようとしても隠し通せるとは思えません。今後の展開を予測しますと、今後、全国のメガソーラ設置予定地にあって、住民等による反対運動が起きることでしょう。自らの住む土地の環境や景観が著しく損なわれる上に、森林の保水能力の低下によって土砂災害の危険が増すともなれば(深層崩壊が発生しやすくなる…)、誰もが反対することでしょう。しかも、森林は、二酸化炭素を吸収する役割を果たしていますので、幾重にも矛盾が重なっているのです(加えて、熱海市の事業者は韓国系とする情報もある上に、ソーラパネルの最大生産国は中国…)。。

 

近年、菅政権をはじめ世界各国の政府とも、’計画原理主義’という側面において社会・共産主義の方向に歩んでいるように見えます。国民が払う犠牲や現実を顧みることもなく、強引に自らの’計画’を進めようとするのです。環境政策、あるいは、脱炭素が環境を破壊するといった本質的な矛盾など、お構いなしなのでしょう。新自由主義者がしばしば用いる’工程表’という表現にもこの傾向はよく表れているのですが、その先には、一体、何が待ち受けているのでしょうか。今般の土石流は、無謀な計画の実行による悲劇を象徴しているようにも思えるのです。


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「ワクチンパスポート」のナンセンス

2021年07月02日 11時30分20秒 | 国際政治

 EUでは、いよいよ「ワクチンパスポート」の運営が開始されるそうです。メディアの解説によれば、夏季における観光地へのバカンス客の出足復活を期待しての導入とのことですが、その真の目的は、国民のデジタル管理の強化とする有力説もありますので、否が応でも人々の関心を集めています。日本国政府も、EUの動きに呼応するかのように7月末からワクチン接種証明の発行を行う方針を示していますが、「ワクチンパスポート」ほどナンセンスな制度はないのではないかと思うのです。

 

 第1の理由は、医科学的な見地からのものです。ワクチンパスポートの最大の欠点は、感染拡大防止の観点からしますと、ワクチンの接種は全く以って’安全証明’とはならない点です。その理由としては、(1)生成される中和抗体の量・質両面における個人差(免疫反応の弱いワクチン接種者が感染源となるリスク…)、(2)ワクチンによってもたらされる中和抗体や免疫力の短期消滅、(3)同一の人における接種時期による効果の違い(接種直後と半年後では雲泥の差…)、(4)ワクチンメーカーや製造法の違いに因る効果差(二度の接種を必要とするワクチンの扱いや効果のレベルなど…)、(5)変異株の出現による効果の激減、(6)変異株に感染したワクチン接種者の見落とし(変異株の持ち込みやADEの発生もあり得るため、むしろワクチンパスポートの取得者の増加が感染拡大に繋がる)…などを挙げることができます。こうした致命的な欠点に満ちているのですから、「ワクチンパスポート」は導入の根拠とされる安全証明の役割を果たすことはできず、受け入れ国の側からしても安心材料とはならないことでしょう。つまり、「ワクチンパスポート」は’ざる’なのです。

 

 第2の理由は、他にも多くの選択肢がありながら、自ら選択肢を狭めているところにあります。確実に無感染性を確認する方法とは、精度の怪しいPCR検査よりも病原体となるウイルスの直接的な検出や抗原検査なのでしょうが、感染性の有無を調べる方法としては、他に採り得る選択肢はあります。ところが、「ワクチンパスポート」の導入を推進している人々は、ワクチンパスポートの無感染性証明力が著しく低いにもかかわらず、同制度こそ、人々の移動の自由を取り戻す唯一の方法としてアピールしているのです。こうした非科学的、あるいは、非合理的な態度こそナンセンスなのです(この点は、新型コロナ対策として、治療法の確立よりもワクチン接種を偏重する態度にも見られる…)。

 

 第3の理由は、非接種者に対する理不尽な差別です。本当のところは、非接種者ほど高い割合で無害である可能性が高いと推測されます。コロナ禍にあっても感染していないということは、元より免疫力が強い、あるいは、抗コロナの体質であり、「ワクチンパスポート」保持者よりも安全な人々であるのかもしれないのです。たとえ無症状の感染者であったとしても、他者に対する感染リスクはワクチン接種者とは然程には変わらないことでしょう。少なくとも、全ての非接種者は感染者ではないにも拘わらず、全員が’感染者’と見なされて様々な局面で自由の制約を受け、隔離的な扱いを受けるのはナンセンスであると共に、著しい人権侵害にも当たると言わざるを得ないのです。

 

第4の理由は、「ワクチンパスポート」の存在が、海外渡航者へのワクチン接種の暗黙の義務化をもたらしてしまうリスクです。今般のワクチン接種は、日本国を含めて大半の諸国では、ワクチン接種は任意であって法的に義務化されているわけではありません。しかしながら、とりわけ海外出張を伴うような職務にある人々にとりましては、ワクチン接種の拒否は、配置転換や失業を意味しかねません。同制度がなければ、こうした苦しい二者択一の選択を迫られることはなくなるのです。その一方で、ワクチン接種そのものによる健康被害のリスクのみならず、ワクチンを接種したパイロットが血栓症により死亡する事例を報告されています。海外渡航の目的でワクチンを接種したところ、航空機への搭乗によって命の危機にまで直面するとなれば、これ程のナンセンスもありません。

 

 以上に述べてきましたように、「ワクチンパスポート」は、どう考えてもナンセンスな制度です。それにも拘わらず、政府レベルにあって強引に同制度を導入しようとしているとしますと、そこには隠れた意図があるのではないかと勘繰られても致し方がありません。そして、その最もあり得そうな目的こそが、冒頭で述べた人類のデジタル管理の強化なのです。例えば、ワクチン接種による免疫効果の個人差問題の解決策として、政府は、国民に対してあらゆる生体情報の提供を義務付けようとするかもしれません。あるいは、国境を越えたワクチン接種の統一的な運営を根拠として、全人類を網羅する個人情報のデジタル・プラットフォーム化が推進されるかもしれません。「ワクチンパスポート」がナンセンスであればあるほど、人々の自国政府、あるいは、その背後に潜む超国家権力体を見つめる視線は厳しさを増していくように思えるのです。


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二階幹事長の’側近’が示唆する日本政治の危機

2021年07月01日 14時42分19秒 | 日本政治

 中国によるウイグル人弾圧を非難する国会決議案の採択を見送ったため、自民党も公明党も、すっかり内外からの信頼を落としてしまいました。決議案の内容も、名指しによる批判を避けた生ぬるいものに修正されたにも拘わらず採択が見送られたのですから、両党による強固な拒絶反応が伺えます。その元凶は、親中政党である公明党、並びに、二階俊博幹事長率いる自民党内の親中派にあることは疑い得ません。

 

 国民の多くが二階幹事長に対して批判的な中、メディア各社によって奇妙な記事が報じられることとなりました。それは、6月14日に日本・チベット国会議員連盟の下村博文会長と日ウイグル議連会長の古屋元国家公安委員長等が決議案の採択を求めて二階幹事長の許に直談判に訪れた際に、同幹事長は、一旦、同要請に応じようとした時のことです。ところが、いざ、決議に必要な署名の段となると、二階氏の‘側近’が同幹事長を制止し、結局、了承が得られなかったというのです。

 

 FNNプライムオンラインの記事では、この側近、初出の際には氏名が伏せられており、’側近’とのみ表記されています。しかしながら、翌15日に設けられた最終決定の場となるはずの自公両党間の「二幹二国」にあって、「二階氏側近の林幹事長代理からは、党の部会で協議したことについての説明があった…」とする一文が見えますので、署名を阻止した‘側近’とは、林幹雄自民党幹事長代理なのでしょう(もっとも、何故、はじめから同氏の氏名を表記しなかったのかは謎…)。何れにしましても、日本国の国会による非難決議の成否を決定したのは、‘側近’ということになるのです。

 

 もっとも、同情報は、決議見送りに対する世論の反発に慄いた二階幹事長が、その責任を’側近’に転嫁するために流したフェイクであるのかもしれません。しかしながら、早速、Wikipediaで林幹雄議員を調べてみますと、既に同非難決議をめぐる経緯に関する記事が掲載されており、公明党との協力を重視した同幹事長代理が、「こういうの(ウイグル問題)、あんまり興味ないんだ」と言い放ったとありました。このことから、‘側近’とは、林幹事長代理でおよそ間違いはなさそうです。そして、この‘側近’の存在は、今日、日本国の政治、並びに、民主主義が危機に瀕している証ともなりましょう。

 

何故ならば、今日の日本の政治にあっては、真の決定者が誰であるのか、国民には、分からないからです。以前より、二階幹事長には数人の側近が張り付いており、その言動をチェックしているとする指摘がありました。高齢による認知症が発症しているとの説もありましたが、もしかしますと、同幹事長は、‘側近’によってほぼ完全にコントロールされているのかもしれません。公職とは、その任務を果たすための職権を伴うものですが、誰か別の人物がそれを行使していたとしても、現状では、国民が知ることができないのです。たとえその人物が、中国といった海外勢力のコントロール下にある人物であったとしても…。

 

今般のケースでは、対中非難決議という国民の関心も高い重大問題であったことから’側近’問題が表沙汰となりましたが、水面下にあってはこうした’側近政治’が蔓延していることは想像に難くありません。しかも、’側近政治’の問題は二階幹事長に限ったことではなく、首相をはじめ他の公職にあっても同様のケースを見出すことができましょう。林幹事長代理は、"媚中三人組"の一人としてその名が挙がっているそうですが、事実上の幹事長職の実権を同氏が握っているとしますと、中国が、最も重要視し、目立たないようにバックアップしているのは同氏である可能性もありましょう。二階幹事長は表の‘演じ役’に過ぎず、林幹事長代理らの‘側近’達は、裏の振り付け役であるのかもしれません。そして、シナリオの作成元は、別のところにあるのかもしれないのです。

 

本日は、中国共産党生誕100周年の日に当たります。自民党は、二階幹事長の名義で電報を送ったと報じられており、祝電なのでしょう。中国共産党という政党が暴力革命や文化革命、そして、天安門事件により多くの中国国民を殺害し、今なおもチベット人、ウイグル人、モンゴル人等に対してジェノサイドを行うと共に、香港の自由を奪っている現状を考慮しますと、日本国民の大半は、到底、同党の誕生をお祝いする気持ちにはなれないはずです。そして、今般の一件から、政治と民意とが甚だしく乖離してしまう原因の一つとして、不透明極まりない’側近政治’の問題も見えてきたようにも思えるのです。


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