8世紀、東北の黄金を求めてその民を支配しようとする朝廷と、
迎え撃つ蝦夷(えみし)の若き英雄・阿弖流為(アテルイ)
阿弖流為をリーダーとする北の将たちの二十年にも及ぶ大戦を
描いた歴史巨編。
昨年、“アテルイ”って言葉が気になって、かるーく調べたらこの小説に
たどり着いた。
ときは都が平安京に遷都された桓武天皇の頃。
史実にある大和朝廷の蝦夷討伐の話。
決して自ら戦を起こすわけでなく、大軍で攻めてくる朝廷軍を
策をもって迎え撃つ蝦夷たち。
ただ自分たちの住むところと民を守るために闘う男たち。
民の気持ちをひとつにする阿弖流為と策に長けた母礼(もれ)
技に長けた阿奴志己(あぬしこ)と飛良手(ひらて)
とまぁ、大和版三国志のような感じ。
地の利をもって、数で攻めてくる朝廷軍に勝利するのがあざやか。
人間模様はあまり描かれていなくて、何年もかけての戦のことばかり
なんだけど、裏切り者が出るんじゃないか、とか
策が失敗して誰かが死んじゃうんじゃないかとハラハラしながら、
どんどん入りこんでしまう。
騎馬だろうと、歩兵だろうと、それは人の殺し合いで戦争なんだけど、
敵を翻弄し攻めて駆け抜ける阿弖流為たちがかっこいい。
阿弖流為と母礼が最後にたてた策は、自らを犠牲にして
蝦夷の地から戦をなくし、再び平和な生活をとりもどすこと。
最後の方は涙なくしては読めない

電車の中で鼻水たらしながら読んで、止まらなくなって
駅のホームでさらにぐずぐずになりながら読みきった。
戦の神のような存在だった阿弖流為は
民に愛されて、蝦夷の永遠の神になった。
その強さにやられた。
この坂上田村麻呂と蝦夷のことを演じてる
劇団☆新感線でやった『アテルイ』
TSミュージカルの『悪路』観たかったなぁ。