Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

神話、完結。

2012-05-21 12:53:46 | コラム
開催中のカンヌ映画祭について書こうと思っていたのだが、受信BOXがパンクするほどのメールが届いた。

映画小僧を自称しているが、スコセッシがオスカーを取ったときよりも多い。
自他共に認めるAV狂ではあるが、中西里菜(=AKB)が「やまぐちりこ」としてAVデビューしたときよりも多い。

他者にとっては自分、映画小僧やAV狂よりも前に、格闘技マニアであったらしい。
まぁいいんだが、少しだけ意外。
だって彼は、死んだわけではないのだから。

いやアスリートにとっての引退は、いちど死ぬことを意味するのか。

かつて「人類最強」「60億分の1」と称された格闘家エメリヤーエンコ・ヒョードル、引退。

ここ数ヶ月は「化けの皮が剥がれた」だのナンヤカンヤ批判を受けるほどの「弱さ」を露呈させたが、
大晦日、石井慧を大の字にさせたパンチのスピードを見ると「まだまだ、いけるんじゃないか」と思わせる幻想力があった。

そう、ヒョードルは「人類最強」という幻想とともに生きた。
2000年代、その幻想が補強され神話となる。

と書くとまるでフィクションのように感じられるかもしれないが、一時期、ヒョードルはほんとうに人類最強だったのだと思う。
ほんの一瞬ではあったものの、神話は現実だったのだ。

ヒョードルは特別な存在、とくに日本人にとっては―それを思えば、この異常なメールの数も理解出来る。

怒りの表情は見せるが、喧嘩上等ではない。
対戦相手への敬意を忘れず、しかし格闘技への深い愛情から、度の過ぎたパフォーマンスをするファイター(小川直也やジョシュ・バーネット)に対しては嫌悪を露わにする。

それでいて遊園地が大好きで、試合の翌日はきまってディズニーランドや富士急ハイランドに出没する。痣だらけの顔のままで。

異様に絵が巧く、ちょっと引いてしまうほど正教に傾倒している。
とくに近年は、試合直前まで首にかけた十字架を外さなかった。
「ストライクフォース」ヘビー級トーナメント(まさかの1回戦敗退)開催前のビデオ撮影の際、ほかのファイターがパンツ以外を脱ぎ捨てて臨んだのに対し、ヒョードルだけはディレクターの「外してくれ」という要求にNOをつきつけ、十字架を「死守」したのであった。

勝敗についても引退についても「神のみぞ知る」というほどのヒョードルが、自身で引退を決意した。
それでもヒョードルはきっと「神が決めたことだから」というのだろう、うん、それでいいし、それでこそヒョードルなのだと思う。

間近に観たのは、対小川直也戦が最初。
ミルコとのタイトルマッチ(=文末の煽りVを参照)では、身体が硬直するほど緊張して観戦した。

2007年の大晦日―『やれんのか!』で、初めて握手をして会話までさせてもらった。

日本語で「大好きです」といい、
日本語で「アリガトウ」と返されただけの、わずかな会話だったけれど。


現在35歳、老け顔といえばそうだが、自分より3つも下だったか。
「白くて」「でっかい」「きゅーぴーちゃん」、といったのは、確かネットで知り合った女子である。
いい得て妙、その人懐っこい感じが人類最強という称号とミスマッチで、神話の存在なのに近寄り難さというものはなかった。
その後の人生が気になるところだが、プーチンとも親交(トップ画像)があり、友人のひとりはアクション俳優のジャン=クロード・ヴァン・ダムときたもんだ、自分なんかが心配しなくてもうまいことやっていけるだろう、魔裟斗ほどの世渡り上手じゃないとしても。


ひとつだけ、はっきりしたこと。
数年前からそうであったが、ヒョードルの引退により、米総合格闘技『UFC』が格闘技の最高峰となった。

かつて最高峰と呼ばれた『PRIDE』の舞台・日本は、完全に遅れを取った形になる。
遅れを取ったでは生易しいか、はっきりいえば「過去」になってしまった。

寂しいし、悔しいが、北米の躍進を恨めしく眺めている場合ではないということ。

もういちど、最初からやってみよう。
ヒョードルだったら、「それが神の意思です」というだろうし。


皇帝、ほんとうに、ほんとうに、おつかれさまでした。


※映画の完成度、素晴らしい煽りV



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本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

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明日のコラムは・・・

『黙りなさい―と、映画の神はいっている』


コメント (2)
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