Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

master、piece!!

2012-05-17 00:15:00 | コラム
少々早い気もするが・・・

いやいや自分は基本「先走り野郎」であるし、
年間の総括も11月下旬~12月上旬にアップするため、
5月中旬で上半期も終わり―と表現しても、なんの問題もないだろう。

というわけで。
12年度上半期の映画界を、軽く振り返ってみる。


まず、期待はずれだった作品から。

『テルマエ・ロマエ』
『貞子3D』
『バトルシップ』

とくにこの3本がひどかった。
面白くなくてもいい、いや出来れば面白くあってほしいのだが、それよりもまず「映画である理由」が知りたい。
スクリーンと対峙すれば、大抵の映画はその理由を教えてくれる。
「はっきり」でなくとも、そのヒントくらいはくれる。
しかしこの3本は、うんともすんともいってくれない。「これくらいで、いいっしょ」と、受け手をなめている気がした。

久し振りの『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ!オラと宇宙のプリンセス』は、水準以上の出来ではあったものの、期待値が高過ぎて若干の物足りなさを感じた。


1800円の入場料が、安過ぎると感じた10本+1本。
スクリーンに映像が映し出された瞬間に、「映画である理由」を教えてくれた傑作群。

順位はつけないが、気に入りの順に並べてみた。
・・・って、それが順位ってことじゃないか!

『ヒミズ』

『ヒューゴ』

『KOTOKO』

『ル・アーヴルの靴みがき』

『ムサン日記~白い犬』

『SHAME―シェイム―』

『メランコリア』

『コーマン帝国』

『灼熱の魂』

『アーティスト』

『別離』


「スマッシュ」はあるが「大」ヒットがひとつも含まれていないのが、相変わらず自分らしい。

もうこれはしょうがない、そういう映画が好きなのだもの。
だいいち皆が知っている作品など、自分が取り上げなくてもほかのひとがやってくれているわけだし。


『ヒミズ』と『ヒューゴ』、『ル・アーヴルの靴みがき』については本コラムで既に言及している。
きょうは、『KOTOKO』について。

このまま歌い続けたら死んでしまうのではないか―と思わせる歌い手Coccoと、孤高の映画監督・塚本晋也が組んだ「受け手の覚悟が問われる」格闘の映画。

園子温(=『ヒミズ』)の勢いに押されている感じはするが、日本インディーズの雄といえば、いまだって塚本晋也のはずだと確信している。
時代が追いついて『鉄男』シリーズが再評価を受ける流れはあるものの、「ああいう感じの映画しか撮れないのではないか」などという意見も聞かれ、
いやいや、なかなかに器用なひとで、そういう意見を吐く前に『六月の蛇』(2002)と本作を観ろといいたい。

けっこう痛い描写が出てくる割にはPG12という「理解のあり過ぎる」レーティングはなんで? という疑問は残るが、
子どもへの強い愛情から「精神の均衡」を失う母親を描き、こころに深く突き刺さる。

その作風により「THE男」な雰囲気が漂う塚本晋也はしかし、女優を美しく撮ることで知られる監督である。

よくテレビで和田勉が「女優を美しく見せる撮りかた」を語っていたが、はっきりいうと、和田作品で女優が美しく撮られていると感動したことはない。
自分が思うに、米国ではデヴィッド・リンチが、欧州ではフランソワ・オゾンが、そして日本では塚本晋也が最も女優を美しく撮る映画監督、、、なのではないか。

だから野心的で覚悟もある女優たちは、塚本映画に出たがる。
いつも血だらけになるが、それだけの価値があるからだ。

そう塚本晋也の映画は、受け手にも演じ手にも覚悟を要求する。
もちろん、塚本本人の覚悟もそーとーなものだろう。


さて、準備が出来たキトクなひとは、塚本映画を浴びてみよう。

嫌いは大嫌い、しかし気に入ったら確実に虜となり、死ぬまでこの映画監督から目が離せなくなるはずだ。


樹海の糸……Coccoのうたでは、いちばんすき。




…………………………………………

本館『「はったり」で、いこうぜ!!』

前ブログのコラムを完全保存『macky’s hole』

…………………………………………

明日のコラムは・・・

『にっぽん男優列伝(156)木村拓哉』


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする