Cape Fear、in JAPAN

ひとの襟首つかんで「読め!」という、映画偏愛家のサイト。

『Cape Fear』…恐怖の岬、の意。

にっぽん女優列伝(106)京マチ子

2019-03-21 00:10:00 | コラム
24年3月25日生まれ・94歳。
大阪出身。

ファムファタール(=魔性の女)より、ヴァンプ(毒婦)ということばがぴったり。

その肉体と男好きのする顔で、いくつものヴァンプを演じてきた京マチ子(きょう・まちこ)さん。

近しいひとの発言によると、まだまだ元気だそうですが、芸能活動そのものは「ほぼ引退」状態であり、最新の出演作が増えることはありません。

ですから新規の映画ファンがマチ子さんのヴァンプぶりを拝む機会は減るばかり。
映画を学ぶ学生くらいしか黒澤や溝口健二の映画に辿り着かない現状は、やっぱり間違っていますよね。

せめて『羅生門』(50)と、



『雨月物語』(53)くらいはテレビ放映があってもいいのではないかしら。



自分が多襄丸(三船)だったとしても杣売り(志村喬)だったとしても旅法師(千秋実)だったとしても旦那(森雅之)だったとしても、真砂には騙されたと思いますもの。

というか、騙されてもいいと思いますもの笑



<経歴>

日本初の「億ション」コープオリンピア(表参道)を購入したことでも知られる。
また、スキャンダルが「なかったわけではない」ものの、こんにちまで独身主義を貫く。

49年、大映に入社し『花くらべ狸御殿』で映画女優デビューを飾る。

同年だけで『最後に笑う男』『地下街の弾痕』『三つの真珠』『痴人の愛』『蛇姫道中』などに出演、1年目にして大映の看板女優となる。


【50年】
『遙かなり母の国』『浅草の肌』『美貌の海』『復活』『火の鳥』

そして『羅生門』がベネチア映画祭で金獅子グランプリに輝き、海外にもその名が知れ渡るように。

【51年】
『偽れる盛装』『恋の阿蘭蛇坂』『情炎の波止場』『馬喰一代』『源氏物語』『自由学校』『牝犬』

【52年】
『浅草紅団』『長崎の歌は忘れじ』『滝の白糸』『美女と盗賊』『大佛開眼』『総理大臣と女カメラマン 彼女の特ダネ』

【53年】
『黒豹』『あにいもうと』

ベネチア映画祭銀獅子賞を受賞した『雨月物語』で若狭(おばけ)を妖演、



さらに『地獄門』がカンヌのパルムドールだけでなく翌年のオスカー外国語映画賞にも輝き、世界的に最も知られる日本の女優へとのぼりつめる。

【54年】
『或る女』『愛染かつら』『春琴物語』『浅草の夜』『千姫』『馬賊芸者』『春の渦巻』

【55年】
『薔薇いくたびか』『楊貴妃』『藤十郎の恋』『新女性問答』

【56年】
『新・平家物語 義仲をめぐる三人の女』『虹いくたび』『赤線地帯』『月形半平太 花の巻/嵐の巻』『八月十五夜の茶屋』

【57年】
『いとはん物語』『スタジオはてんやわんや』『踊子』『女の肌』『地獄花』『夜の蝶』『穴』

【58年】
『有楽町で逢いましょう』『悲しみは女だけに』『母』『忠臣蔵』『大阪の女』『赤線の灯は消えず』『夜の素顔』『娘の冒険』

【59年】
『あなたと私の合言葉 さよなら、今日は』『細雪』『女と海賊』『夜の闘魚』『次郎長富士』『浮草』

谷崎潤一郎の原作小説を市川崑が技巧を凝らして描いた『鍵』

【60年】
『ぼんち』『三人の顔役』『顔』

女スリを演じた『足にさわった女』
田中絹代が監督に挑戦した『流転の王妃』

【61年】
『お伝地獄』『婚期』『女の勲章』『濡れ髪牡丹』『小太刀を使う女』『釈迦』

【62年】
『黒蜥蜴』『仲よし音頭 日本一だよ』『女の一生』


五社協定が効力を失う60年代以降は・・・

『女系家族』(63)、『甘い汗』(64)、『他人の顔』(66)、『千羽鶴』(69)、
『華麗なる一族』(74)、『金環蝕』(75)、『妖婆』(76)、『男はつらいよ 寅次郎純情詩集』(76)・・・などなど、東宝や松竹の映画にも出演しました。

映画の最後の出演作は、84年の『化粧』。


もし伝記映画が創られるとしたら、誰がマチ子さんを演じるのでしょう。

沢尻エリカ?
二階堂ふみ?
神楽坂恵?

いずれにしても、難役になるでしょうねぇ。。。


次回のにっぽん女優列伝は、京野ことみさんから。

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明日のコラムは・・・

『高ぇ!! と思うもの』
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にっぽん女優列伝(105)木村佳乃

2019-03-20 00:10:00 | コラム
76年4月10日生まれ・42歳。
東京出身。

公式サイト

木村文乃さんと漢字一文字ちがいの木村佳乃(きむら・よしの)さん、
佳乃さんのほうが年上で先輩ですがね。

ちょっと気の強い美人・・・というイメージでしょうか、正直このひとで疼いたことはないのですけれど、演技は達者ですし街で見かけたら「お!」とは思うでしょうやっぱり。


※松たか子をサポートしたのは、子どもたちではなく、佳乃さんや岡田将生でしたものね



<経歴>

旦那は、歳をとってもアイドルらしいアイドル、少年隊の東山紀之。




高校生のころより読者モデルとして活動、
97年、ブームを巻き起こした『失楽園』で映画女優デビューを飾る。

原作はどうかと思いましたが、黒木瞳のハダカと森田芳光の演出が気になって公開初日に行きました。

全体的には笑っちゃう創り―でも脚本の筒井ともみと天才モリタって、傑作『それから』(85)のコンビなのですよね―だったものの、役所広司の娘を演じた佳乃さんには、なにか光るものを感じました。


『ISOLA 多重人格少女』(2000)、『走れ!イチロー』(2001)、
ひょっとしたら早過ぎた傑作かもしれないのでもういちど観なくちゃいけないと思っている珍作『模倣犯』(2002)、
『船を降りたら彼女の島』(2002)、『阿修羅のごとく』(2003)、『自由戀愛』(2005)、『蝉しぐれ』(2005)。

よい女優さんだけど真面目過ぎるな・・・と思っていたところに『寝ずの番』(2006)で「勇気あるヒロイン(落語界の重鎮に、自分のアソコを見せる)」を好演、やるじゃん佳乃さん!! と思いました。

『バックダンサーズ!』(2006)、『さくらん』(2007)、『ドリーム・クルーズ』(2007)、『監督・ばんざい!』(2007)、『伝染歌』(2007)、『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)、

とくに2008年の活躍は目覚ましいものがあり、
『全然大丈夫』、『相棒 ―劇場版― 絶体絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン』(2013年の『相棒シリーズ X DAY』にも出演)、
『次郎長三国志』、日本・ブラジル・カナダ合作の『ブラインドネス』、『空へ―救いの翼 RESCUE WINGS―』、
そして『おろち』では一人二役に挑戦し高評価を受けました。




『誰も守ってくれない』(2009)、『キラー・ヴァージンロード』(2009)、『告白』(2010)、
結婚して以降は「やや」ペースダウンしているものの、
『ホットロード』(2014)や『星ガ丘ワンダーランド』(2016)、『嫌な女』(2016)、『パパはわるものチャンピオン』(2018)などに出演、映画の出来はどうあれ佳乃さんの演技そのものは安定感バツグンです。


あまりそういう話題作り(?)には興味を抱かないタイプなのですけれど・・・
この夫婦であれば、共演作というのをちょっと観てみたい気もします。

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にっぽん女優列伝(104)木村文乃

2019-03-19 00:10:00 | コラム
87年10月19日生まれ・31歳。
東京出身。

公式プロフィール

ふと気づいたら、そこそこの売れっ子になっていた・・・という印象の強い木村文乃(きむら・ふみの)さん。

ですが、デビューから数年間は鳴かず飛ばず、さらにアトピーの症状も悪化し肌を晒すことが怖くなったようで、実際に芸能活動をセーブした時期があったそうです。

分からないものですよね、放っておいても売れそうなキュートさを宿しているのに。

ただ、映画キャリアは多いものの、自分が文乃さんを映画女優と認識するようになったのは、ごくごく最近のことです。


ここ数年、役に恵まれるようになったことが大きいのではないでしょうか。

本人の努力はもちろん、ツキも回ってきたのだと思います。


※有吉ちゃんもいっていたけれど、あんまり口を開けないで喋るのには意味があるのかな、このCM



<経歴>

映画『アダン』(2006)のオーディションに応募しヒロインに選ばれ、同作品で映画女優デビューを飾る。

同年公開の『風のダドゥ』でも主演を務めるなど、飛躍を予感させる滑り出し・・・ではあったものの、あとがつづかずスランプに。

前述したように芸能界から距離を置き、さまざまなアルバイトで自分を試していたそうです。

しかし、というか、やっぱり、というか女優の夢を諦めきれず、2010年代より再び芸能の世界に戻り一からキャリアを築き始めました。

『Paradise Kiss』(2011)、『極道めし』(2011)、『目を閉じてギラギラ』(2011)、『ポテチ』(2012)、『今日、恋をはじめます』(2012)、『ボクたちの交換日記』(2013)、『上京ものがたり』(2013)、『すべては君に逢えたから 「遠距離恋愛」』(2013)。


大きな役にせよ端役にせよ、なんらかの印象を残せる存在になったなぁ・・・そんな風に感じられるようになったのは、2014年あたりから。

『小さいおうち』(2014)、『ニシノユキヒコの恋と冒険』(2014)、『太陽の坐る場所』(2014)、
『くちびるに歌を』(2015)、『イニシエーション・ラブ』(2015)、『ピース オブ ケイク』(2015)。

2016年、一般男性と結婚。
交際期間は2~3年だそうですから、旦那さんとの出会いがツキを呼んだのかな?


『十字架』(2016)、『スキャナー 記憶のカケラをよむ男』(2016)、『RANMARU 神の舌を持つ男』(2016)、
『追憶』(2017)、『火花』(2017)、『伊藤くん A to E』(2018)、『体操しようよ』(2018)、

演者全員賞を贈りたい『羊の木』(2018)、




そして最新作は、ピエール瀧さん騒動により公開に不安が残る『居眠り磐音』(5月17日公開予定)、さらに『ザ・ファブル』(6月21日公開予定)が控えています。

30代に突入し、役柄の幅も増えてくると思います。

不幸のどん底、、、みたいなキャラクターも似合うと思います。

自分、性格悪いですかね?笑

でも、見てみたいな。

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D・A・T・E

2019-03-18 00:10:00 | コラム
ひとまわり下の知り合いの男の子から、

「こんどキャバ嬢とデートするんですけど、どこ行ったらいいっすかね」

と質問を受けた。


なぜ自分に?

そんなにモテるわけでもないし、頻繁にデートしているわけでもないし、キャバクラにハマっているわけでもないのに。

と問うと、

「そうなんすか、まっき~さん、いろいろ遊んでいそうだし、しょっちゅうデートしている気がします」と。


まぁ、そう思われるのは悪い気がしない。


しかしデートといったって、自分はこんな感じ? だし、
さすがにトラビスのようにポルノ映画館に連れていこうなんていう発想は浮かばないけれど、

複数で観ても害のない映画―基本ひとりで観たいものでね―を観て、焼き肉を喰らうというのが大定番であり。

それで満足する子としか付き合ってこなかったから、洒落たデートプランなど教示出来るわけもなく。


あ、ひとつだけあったわ。

ある程度の年齢でないと「冷やかし」と思われて長居しづらいが、モデルルームの見学。

お金かからんし、最新のシステムキッチンを試せるし、それ以上に、ふたりの距離がグンと縮まったりするんだよ。


きっかけは、へーベルハウスのキャラクター「へーベルくん」のぬいぐるみがほしいといった(当時の)彼女のリクエストから。



見学しにいくと、もらえるんだよね。


・・・っていうのは、どう?

と薦めてみたら、彼は渋い顔をしていた。


彼にはまだ早過ぎたようだ、
だから芸はないが、この映画は絶対に外さないから、、、と公開中の『スパイダーマン:スパイダーバース』をお薦めしておいた。


※しかしデートっていうのは、よい響きだねぇ。

いくつになっても、ドキドキするものだ。



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『拝啓、〇〇様』(14)

2019-03-17 00:10:00 | コラム
~北野武の巻~

第一夜:北野武のキャリアを我流紹介
第二夜:北野武への手紙

きょうは、その第二夜。


拝啓、北野武様。

自分は『元気が出るテレビ』や『ひょうきん族』の直撃世代であり、実際に毎週欠かさず観ていましたが「芸人」ビートたけしのことが「大」好きだったわけではありません。

もちろん嫌いということはなかったです、
しかし明石家さんまのほうが「より」好きでしたし、「さんまとからむ」ビートたけしのことを好きだったような気がします。

さらにいえば、このふたりの後輩にあたるダウンタウンのほうが芸人としては好きでした。

自分が映画にのめり込む時期と、ビートたけしが北野武と名乗る時期が重なったこともあり、芸人としてではなく映画監督として評価するようになったのです。

受け手の勝手な思いですが・・・
笑わせなくていい、革新的な映画で驚かせてくれ! と。


芸人として、そして映画監督として、あなたの言動に感心したことは沢山あります。

フライデー襲撃事件は、ただただ漢として格好いいと痺れました。

バイク事故会見での「顔面マヒナスターズ」発言は、あなたのキャリアで最高のギャグだと感動しました。

『その男、凶暴につき』(89)の「(拳銃は)通信販売で買った」という台詞は、まちがいなくあなたの発想で書いたものでしょう。
大幅な改変で脚本を担当した野沢尚と揉めた作品ですが、プロの脚本家では生み出せない台詞ですから。

『ソナチネ』(93)の、「あんまり死ぬの怖がってるとな、死にたくなっちゃうんだよ」も同様です。




ところで『3-4X10月』(90)も『ソナチネ』も、自分は初日に観にいきましたが客席はガラガラでした。

ガラガラの劇場でも幸福でしたよ、いまでも観返すほど自分にとっての宝物なのです。

しかし興行戦争の視点で捉えれば、大駄作『稲村ジェーン』(90)に惨敗したのは事実であって。

不思議な世の中です、高視聴率を誇るバラエティの「主」が映画を撮ったらコケるというのは。


バイク事故からの復帰後―。

『キッズ・リターン』(96)の初日、テアトル新宿はどの回も満員御礼でした。

感慨深かったですねぇ。

観る前から誰もが知っていた最後の台詞「まだ始まってもいねぇよ」を聞いて、元気を出したかったひとが多かったのかな・・・などと思いました。


98年、『HANA-BI』でベネチア金獅子賞受賞。

映画監督としての風向きが大きく変わったのは、このあたりからです。


「賞を取ると傑作になる」と皮肉をいう識者も居ましたし、
津川雅彦も「自分だけ賞を取って、役者も育てない、経済にも貢献しない、そんな映画とんでもない」と発言。

バランス感覚を失った状態で東条英機を演じたあなたが、なにをいう!? と自分は腹を立てましたが、と同時に、北野武が自由に映画を撮れなくなるのではないか、、、そんな不安を抱くようになりました。


「権威よ死ね」みたいなスタイルでキャリアを展開していたひとが、実際に権威になってしまった。

フランスにおける北野映画の持ち上げかたは、少し異様にも思いましたもの。

だからこそあなたは、式典で妙な格好をしたりおどけてみせたりしたのでしょう、しかしそれがうまくいっているようには思えず、率直にいうと痛々しかった。


2005年―『TAKESHIS’』を発表、タイトルからも想起出来るように「フェリーニ、やってみました。」ということなのだと思います。

『監督・ばんざい!』(2007)も『アキレスと亀』(2008)もそうで、自分は勝手に「迷走期」と位置づけています。

「この路線がつづくのだったら、劇場にいくのやめようかな」と思っていたほど、自分は冷めていました。

が、3つとも(興行批評の両面で)コケて「オイラの柄ではなかった」とちゃんと気づいてくれました、そうして『アウトレイジ』のシリーズ(2010~2017)を創ってくれたのです。




師匠? でもあるオオシマもいってましたものね、「監督だって人間だから。得手不得手があるんだよ」と。


あなたのようなひとにも、不得手があった。

あなたはすでに権威でもあるから、王様にハダカだ! といえるものは少ないと思います。

迷走がずっとつづき、暴走へと変わる可能性だってあったはず。


大きくなるほど、えらくなるほど、失敗を認めるわけにはいかなくなってくるものだと思います。

しかしあなたは失敗を認め、還るべき場所へときっちり帰還を果たした。


格好いいです、すごく格好いい。
誰もが出来ることではないですよね。


そういうことが出来るおじいちゃんに、自分はなりたいです―。


敬具。

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