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◎2009年5月16日(土)―I男と
自分にとって和賀岳は3度目になる。過去2回ともに、せっかく現地まで行っていながら雨で断念している。いずれも岩手からのルートで計画していた。今回は秋田から入る。I男に声をかけたら、土曜日中の戻りを条件に行ってもいいと言う。翌日は免許証更新の講習会があるそうだ。主に1人歩きばかりやっている自分には多少窮屈な所もあるが、道中が長い場合は複数で出かけた方が何かと楽しい面もある。前回は片道525kmだったが、今回は540km。仕事帰りのまま籠原駅から19時20分出発。車はI男のデリカ。すこぶる燃費の良い車。高速走っても、6~7km/lだそうだ。コンビニ経由で羽生インター。上河内SAで夕食。ここのお薦めは宇都宮餃子らしいが、こんなのをご飯で食べたのでは眠くなる。オレはソバ、I男はカレー。北上JCTから秋田道。錦秋湖SAに着いたのはもう1時。ここで寝る。北上するに連れて、どんどん気温が下がっていて、もう7度になっている。焼酎のお湯割で身体を温めてから寝たかったが、あいにくお湯を作る道具もなく、生ぬるくなりかけた缶ビールを1本ずつ飲んで、シュラフに入って寝た。このデリカはいいね。運転席から3列目のシートまで、完全にフラットになる。幅もあるから、2人横になっても窮屈さを感じない。I男にとって、一緒に車泊する常連は決まっているのだろうが、今夜は我慢してもらう。
明るくなると同時に目覚める。外に出てみると寒いくらい。近くに見える山にはまだ雪が付いている。5時半に目覚ましをかけてはいたが、まだ寝ているI男を起こし、5時10分に出発。大曲ICはまだ先だ。天気はすっきりしない晴れといった状態。全体に霞んでいる。ICから下りて、105号線経由で林道に入る。一帯は真木真昼県立自然公園というらしく、真木渓谷は紅葉の時期はさぞきれいだろうなと思うくらいの景観をのぞかせている。林道終点に着いたのは6時半。準備をしていたら、車が2台やってきた。いずれも単独のオッチャン。1人は一眼レフのカメラを首から下げ、ゴム長姿でさっさと登って行った。慣れた感じ。もう1人は登山靴が真新しい。最近、歩き始めたそうだ。鳥海山にスキーに行き、3時間かけて登って、下りは15分だったいうようなことを言っていた。お話好きなようで、I男の車が袖ヶ浦ナンバーだったため、どこから来た?千葉でも和賀岳は有名なのか?と、I男とは話が弾んでいた。このオッチャンを残し、6時52分、水を補給して甘露水口から出発。
I男が最初から飛ばして歩く。空木岳の際もこうだった。必ずバテるなぁと思ったが、しばらくは黙っていた。ただ、彼に付いて行くオレがつらいことは確かだ。今のところ雪はない。事前に大曲の太田支所に電話確認はしたが、どうもはっきりした回答は得られなかった。ネットの情報では、登山道には雪があるようだが、歩行の妨げになるほどではなく、また、最近歩いた人のブログには、山頂を撮った写真が出ていたが、雪はなかった。不安もあるので、アイゼンだけは持参している。I男の分はない。新緑のブナ林を歩いて行く。曲沢分岐、ブナ台を通過。枯葉で登山道が隠れているところもある。滝倉7時半。小さな滝が流れている。下りでここの沢を渡った際、水量が増した感じがした。天気も良かったためか、確実に雪解けは進行している。I男が大汗をかき、Tシャツ1枚になり、帽子を脱いで頭にタオルを巻き始めた。ここで初めて飛ばしを諫める。滝倉避難小屋跡7時41分。
ところどころに残雪が出てきた。層は10cmといったところか。まだこの時間、雪は締まってはいる。ところどころ滑るが、アイゼンを付けるまでもない。先行したゴム長オッサンの足形が残っていたり消えたり。テープに注意しながら歩くが、テープそのものが当てにならないところも数か所。テープの先がヤブになっていたりする。しばらく残雪の上を歩いていたら、足形もテープも消えてしまった。周囲は笹ヤブ。GPSで確認すると、登山道は一旦、北に向かうところを北東に歩いてしまっているようだ。このまま、先に見えている甲山と薬師岳を結ぶ稜線に出てもいいのだが、しばらくヤブが続きそう。I男もいることだし、正規の登山道に向かった方がいいだろう。後でI男から聞いた話だが、オレ達が最初にテープで迷ったところで、後続の話し好きなオッサンが立ち往生している姿が見えたそうだ。大方、オレ達のトレースを追ってきたのだろう。さて、ここからヤブこぎで北に向かう。ヤブには雪が付いていないので、多少は楽だが、幹の部分で滑る。振り返ると、I男が悪戦苦闘している。Tシャツじゃ、かなりキズもつくんじゃないのかな。
笹も少しはおとなしくなり、2つほどの段差を越えると、上に登山道らしきものが見えた。この登山道、結構、ガレたところがあるようだ。その登山道に出るまでが大変だった。ガレ場を登る形になる。雪がまた出てきて、上を歩くと揺れる。慎重に渡りながら、水気をたっぷり含んだ石くれの斜面を四つん這いで登る。やっと登山道。真昼山地の山々が見渡せる。いい眺めだ。北西に雪山が浮かんでいるが、鳥海山だろうか。でも、あの位置では内陸部にあるように見えるが。しかし、相応の山はないはず。よく分からない。神々しくて立派な山だ。薬師分岐9時7分。ようやく和賀岳が見えてきた。山肌には残雪。山頂には確かに雪は見えない。笹の道を3分ばかり歩いて薬師岳。ここからの眺めも最高だ。早池峰山が見える。とはいっても、この時は岩手山とばかり思っていた。少々、休憩。薬師如来を祀る祠には、100円玉が結構あった。信心深い人たち。和賀岳を正面に展望が広がる山頂には、100円を奮発したくなる心境はよく分かる。
おにぎり1個とチョコレートを食べて出発。小杉山との間は薬師平と呼ぶらしい。冷たいぐらいの風が心地よいが、たいしたアップダウンがないため、やがて寒くなる。小さな花を4種類くらい見つけた。写真には収めたが、自分の知識の範囲外。何という花なのか、ちっとも分からない。ただ、いいなぁと思っただけ。小杉山9時52分。やはり、I男がそろそろ疲れ出した。足が上がらないとぼやいている。あと1時間の我慢と言ったが、まだまだ先に高く見える和賀岳を見ながら、うんざりしている気配がその表情に出ている。
まもなく小鷲倉というところで、上からゴム長オッサンが下りて来た。顔は覚えてはいないが、ゴム長で特定はできる。「早いですね」と言ったら、「いゃ、それほどでも」なんて答えられたが、あれが「それほどでもない」歩きなら、オレ達の歩きは相当にノロマレベルということになる。やがて、後ろから来た中年前に抜かれる。すごい早足。どんどん先を進んで行った。小鷲倉10時24分。I男が遅れがちになる。「あと30分我慢」と励ます。下から見えた雪渓が目の前に見える。厚さは1mは超えている。雪庇のままになっているのもある。
下から見上げるほどに急な上りではない。なだらかの部類だろう。このコース、きつい上りは薬師岳直下ではなかろうか。コブを1つ越して雪田。そしてようやく和賀岳。10時54分着。まる4時間か。コースロストとヤブこぎが響いたか。I男の姿がまだ小さく見える。I男が来るまで、中年前としばらく話をした。毎週、山を歩いているそうだ。だから、あんなに早いのか。正面の山はやはり鳥海山だった。秋田駒は知っていたが、隣に見えるのが岩手山で、オレが勘違いしていたのが早池峰。I男には、秋田駒の隣は乳頭山だなんて、適当なことを教えていた。田沢湖の先に浮かんでいる雪山が森吉山であることも彼から聞いた。そして、真昼岳と三角形の女神山。栗駒と焼石。本当に詳しいね。どこから来たのか問われ、つい千葉と言ってしまった。自分の故郷の山なのに、森吉山がどの山なのかすら知らなかったのが気恥ずかしい。秋田県関係者だなんて、とても言えない。
I男の到着を待って食事。下に広がる横手盆地。田んぼが続いている。本当にいい眺めだ。田沢湖と森吉山をセットにした写メールをK女に送ってやった。「やったね」という返信が届いた。彼女も来たがっていた。ただ、そうなれば、この和賀岳は無理だろう。真昼岳にするつもりだった。疲れ狂っている割に、I男の食欲は旺盛だ。空腹で歩けなかっただけの話ではないだろうか。話し好きなオッサンはなかなか来ない。山頂にある鎮魂碑。だれかがここで亡くなったのだろう。「青白き鳥海の峰々を眺め山彦の友はここに憩う」か。やはりここは鳥海山の眺めがいいところなんだね。
11時半下山。長時間休んでいると寒くなる。その間、中年前は「お先に」と下りて行った。しばらく姿を見ていたが、下りは走っていた。スタミナ切れを補ったI男が元気を取り戻し、先をどんどん行き、オレが取り残される形になる。小杉山までの間で3人に出会う。皆、単独。1人は例の話し好きのオッサンだが、道に迷ってしまったとこぼしていたそうだ。何だか、オレ達が余計なトレースをつけてしまい、悪いことをしてしまったようだ。まさか、ヤブこぎはしなかったと思うが。ピッケルを持っている方もいたが、ザックに結わえたままだったから、かなり心配性な方のようだ。
鳥海山が次第に薄くなり、山頂部しか見えなくなった。天気はこちらも下り坂か。出がけに木にメールし、和賀岳の件を伝えたが、「明日はどうせ雨だから夏油温泉にでも入ってこいや」と返事があった。雨まみれになるのを期待したのだろうが、今のところ残念でしただ。
薬師岳から先は慎重にコースを辿ることにする。ガレ場を過ぎて倉方13時8分。ここは来る時に通らなかったポイントだ。正規のルートは残雪部が多いようだ。登山道を雪が覆い隠しているため、随所に赤とピンクのテープが結わえてある。最近の情報で、登山道を整備されている方がテープを付けたということは知っていたが、新しいテープはこれだろう。不思議なのは、高さ3mくらいの枝に結わえたテープはどうやって付けたのだろう。まさかハシゴを使ったのか。それとも、雪の時期に付けたとしても、かなり雪深い山ということになる。妥当な想像では、棒につけた針金の輪で枝を寄せ、それにテープを付けたといったところだろうか。テープも紛らわしいところが随分とある。その時はトレースを拾うのだが、いろんな方向に延びているから、先を見ながら歩かないとすぐに迷ってしまう。雪の塊がポンと跳ね上がる。その度にI男がビクッとする。熊でも出たかと思うらしいが、雪に押さえられた枝が、融雪で雪を跳ね上げるらしい。ようやく見覚えのある滝倉避難小屋跡。ここから先は朝の道だ。
14時17分甘露水口到着。車が3台。薬師岳までの途中で行き会った人達の車だろう。まぁ、何とか天気が良くてよかった。山も予想通りにいい山だった。花が満開になるのは6月末かららしいが、造詣のないオレなんかには、いつでも見頃の山だろうが。I男は「今日はいろんなことを体験させてもらいました」と言っていたが、ヤブこぎをさせられた皮肉だろうか。気にしないことにする。汗だくで気持ちが悪い。中里温泉に立ち寄る。400円。ここは本館と新館に風呂があり、両方入れるそうだが、一旦、着替えて移動しないといけない。最初はそのつもりでいたが、熱い湯のため、本館の風呂に入るだけで十分だった。ハシゴする気にはなれない。脱衣場でジイサンどうしの会話を聞いていたI男が、何を言っているのかさっぱり分からなかったと言っていたが、外国語を話しているように響くのだろうか。オレには何とも自然な会話だったが。
冷たいビールで打ち上げして仮眠してから帰りたかったが、I男は、ここで飲むと熟睡しそうだというので、ポカリを飲んで我慢する。運転はI男だから、ビールを飲んだらと言ってくれたが、まさかね。そそくさと帰ることにする。前沢SAで食事。オレはミソラーメン、I男は牛スジ丼。ミソラーメンは味噌汁ラーメンといった感じ。牛スジ丼は最初はおいしかったが、しまいには飽きたそうだ。宮城に入る頃、I男が「両股が痛い」としきりに言い始めた。明日は大変だね。
自分にとって和賀岳は3度目になる。過去2回ともに、せっかく現地まで行っていながら雨で断念している。いずれも岩手からのルートで計画していた。今回は秋田から入る。I男に声をかけたら、土曜日中の戻りを条件に行ってもいいと言う。翌日は免許証更新の講習会があるそうだ。主に1人歩きばかりやっている自分には多少窮屈な所もあるが、道中が長い場合は複数で出かけた方が何かと楽しい面もある。前回は片道525kmだったが、今回は540km。仕事帰りのまま籠原駅から19時20分出発。車はI男のデリカ。すこぶる燃費の良い車。高速走っても、6~7km/lだそうだ。コンビニ経由で羽生インター。上河内SAで夕食。ここのお薦めは宇都宮餃子らしいが、こんなのをご飯で食べたのでは眠くなる。オレはソバ、I男はカレー。北上JCTから秋田道。錦秋湖SAに着いたのはもう1時。ここで寝る。北上するに連れて、どんどん気温が下がっていて、もう7度になっている。焼酎のお湯割で身体を温めてから寝たかったが、あいにくお湯を作る道具もなく、生ぬるくなりかけた缶ビールを1本ずつ飲んで、シュラフに入って寝た。このデリカはいいね。運転席から3列目のシートまで、完全にフラットになる。幅もあるから、2人横になっても窮屈さを感じない。I男にとって、一緒に車泊する常連は決まっているのだろうが、今夜は我慢してもらう。
明るくなると同時に目覚める。外に出てみると寒いくらい。近くに見える山にはまだ雪が付いている。5時半に目覚ましをかけてはいたが、まだ寝ているI男を起こし、5時10分に出発。大曲ICはまだ先だ。天気はすっきりしない晴れといった状態。全体に霞んでいる。ICから下りて、105号線経由で林道に入る。一帯は真木真昼県立自然公園というらしく、真木渓谷は紅葉の時期はさぞきれいだろうなと思うくらいの景観をのぞかせている。林道終点に着いたのは6時半。準備をしていたら、車が2台やってきた。いずれも単独のオッチャン。1人は一眼レフのカメラを首から下げ、ゴム長姿でさっさと登って行った。慣れた感じ。もう1人は登山靴が真新しい。最近、歩き始めたそうだ。鳥海山にスキーに行き、3時間かけて登って、下りは15分だったいうようなことを言っていた。お話好きなようで、I男の車が袖ヶ浦ナンバーだったため、どこから来た?千葉でも和賀岳は有名なのか?と、I男とは話が弾んでいた。このオッチャンを残し、6時52分、水を補給して甘露水口から出発。
I男が最初から飛ばして歩く。空木岳の際もこうだった。必ずバテるなぁと思ったが、しばらくは黙っていた。ただ、彼に付いて行くオレがつらいことは確かだ。今のところ雪はない。事前に大曲の太田支所に電話確認はしたが、どうもはっきりした回答は得られなかった。ネットの情報では、登山道には雪があるようだが、歩行の妨げになるほどではなく、また、最近歩いた人のブログには、山頂を撮った写真が出ていたが、雪はなかった。不安もあるので、アイゼンだけは持参している。I男の分はない。新緑のブナ林を歩いて行く。曲沢分岐、ブナ台を通過。枯葉で登山道が隠れているところもある。滝倉7時半。小さな滝が流れている。下りでここの沢を渡った際、水量が増した感じがした。天気も良かったためか、確実に雪解けは進行している。I男が大汗をかき、Tシャツ1枚になり、帽子を脱いで頭にタオルを巻き始めた。ここで初めて飛ばしを諫める。滝倉避難小屋跡7時41分。
ところどころに残雪が出てきた。層は10cmといったところか。まだこの時間、雪は締まってはいる。ところどころ滑るが、アイゼンを付けるまでもない。先行したゴム長オッサンの足形が残っていたり消えたり。テープに注意しながら歩くが、テープそのものが当てにならないところも数か所。テープの先がヤブになっていたりする。しばらく残雪の上を歩いていたら、足形もテープも消えてしまった。周囲は笹ヤブ。GPSで確認すると、登山道は一旦、北に向かうところを北東に歩いてしまっているようだ。このまま、先に見えている甲山と薬師岳を結ぶ稜線に出てもいいのだが、しばらくヤブが続きそう。I男もいることだし、正規の登山道に向かった方がいいだろう。後でI男から聞いた話だが、オレ達が最初にテープで迷ったところで、後続の話し好きなオッサンが立ち往生している姿が見えたそうだ。大方、オレ達のトレースを追ってきたのだろう。さて、ここからヤブこぎで北に向かう。ヤブには雪が付いていないので、多少は楽だが、幹の部分で滑る。振り返ると、I男が悪戦苦闘している。Tシャツじゃ、かなりキズもつくんじゃないのかな。
笹も少しはおとなしくなり、2つほどの段差を越えると、上に登山道らしきものが見えた。この登山道、結構、ガレたところがあるようだ。その登山道に出るまでが大変だった。ガレ場を登る形になる。雪がまた出てきて、上を歩くと揺れる。慎重に渡りながら、水気をたっぷり含んだ石くれの斜面を四つん這いで登る。やっと登山道。真昼山地の山々が見渡せる。いい眺めだ。北西に雪山が浮かんでいるが、鳥海山だろうか。でも、あの位置では内陸部にあるように見えるが。しかし、相応の山はないはず。よく分からない。神々しくて立派な山だ。薬師分岐9時7分。ようやく和賀岳が見えてきた。山肌には残雪。山頂には確かに雪は見えない。笹の道を3分ばかり歩いて薬師岳。ここからの眺めも最高だ。早池峰山が見える。とはいっても、この時は岩手山とばかり思っていた。少々、休憩。薬師如来を祀る祠には、100円玉が結構あった。信心深い人たち。和賀岳を正面に展望が広がる山頂には、100円を奮発したくなる心境はよく分かる。
おにぎり1個とチョコレートを食べて出発。小杉山との間は薬師平と呼ぶらしい。冷たいぐらいの風が心地よいが、たいしたアップダウンがないため、やがて寒くなる。小さな花を4種類くらい見つけた。写真には収めたが、自分の知識の範囲外。何という花なのか、ちっとも分からない。ただ、いいなぁと思っただけ。小杉山9時52分。やはり、I男がそろそろ疲れ出した。足が上がらないとぼやいている。あと1時間の我慢と言ったが、まだまだ先に高く見える和賀岳を見ながら、うんざりしている気配がその表情に出ている。
まもなく小鷲倉というところで、上からゴム長オッサンが下りて来た。顔は覚えてはいないが、ゴム長で特定はできる。「早いですね」と言ったら、「いゃ、それほどでも」なんて答えられたが、あれが「それほどでもない」歩きなら、オレ達の歩きは相当にノロマレベルということになる。やがて、後ろから来た中年前に抜かれる。すごい早足。どんどん先を進んで行った。小鷲倉10時24分。I男が遅れがちになる。「あと30分我慢」と励ます。下から見えた雪渓が目の前に見える。厚さは1mは超えている。雪庇のままになっているのもある。
下から見上げるほどに急な上りではない。なだらかの部類だろう。このコース、きつい上りは薬師岳直下ではなかろうか。コブを1つ越して雪田。そしてようやく和賀岳。10時54分着。まる4時間か。コースロストとヤブこぎが響いたか。I男の姿がまだ小さく見える。I男が来るまで、中年前としばらく話をした。毎週、山を歩いているそうだ。だから、あんなに早いのか。正面の山はやはり鳥海山だった。秋田駒は知っていたが、隣に見えるのが岩手山で、オレが勘違いしていたのが早池峰。I男には、秋田駒の隣は乳頭山だなんて、適当なことを教えていた。田沢湖の先に浮かんでいる雪山が森吉山であることも彼から聞いた。そして、真昼岳と三角形の女神山。栗駒と焼石。本当に詳しいね。どこから来たのか問われ、つい千葉と言ってしまった。自分の故郷の山なのに、森吉山がどの山なのかすら知らなかったのが気恥ずかしい。秋田県関係者だなんて、とても言えない。
I男の到着を待って食事。下に広がる横手盆地。田んぼが続いている。本当にいい眺めだ。田沢湖と森吉山をセットにした写メールをK女に送ってやった。「やったね」という返信が届いた。彼女も来たがっていた。ただ、そうなれば、この和賀岳は無理だろう。真昼岳にするつもりだった。疲れ狂っている割に、I男の食欲は旺盛だ。空腹で歩けなかっただけの話ではないだろうか。話し好きなオッサンはなかなか来ない。山頂にある鎮魂碑。だれかがここで亡くなったのだろう。「青白き鳥海の峰々を眺め山彦の友はここに憩う」か。やはりここは鳥海山の眺めがいいところなんだね。
11時半下山。長時間休んでいると寒くなる。その間、中年前は「お先に」と下りて行った。しばらく姿を見ていたが、下りは走っていた。スタミナ切れを補ったI男が元気を取り戻し、先をどんどん行き、オレが取り残される形になる。小杉山までの間で3人に出会う。皆、単独。1人は例の話し好きのオッサンだが、道に迷ってしまったとこぼしていたそうだ。何だか、オレ達が余計なトレースをつけてしまい、悪いことをしてしまったようだ。まさか、ヤブこぎはしなかったと思うが。ピッケルを持っている方もいたが、ザックに結わえたままだったから、かなり心配性な方のようだ。
鳥海山が次第に薄くなり、山頂部しか見えなくなった。天気はこちらも下り坂か。出がけに木にメールし、和賀岳の件を伝えたが、「明日はどうせ雨だから夏油温泉にでも入ってこいや」と返事があった。雨まみれになるのを期待したのだろうが、今のところ残念でしただ。
薬師岳から先は慎重にコースを辿ることにする。ガレ場を過ぎて倉方13時8分。ここは来る時に通らなかったポイントだ。正規のルートは残雪部が多いようだ。登山道を雪が覆い隠しているため、随所に赤とピンクのテープが結わえてある。最近の情報で、登山道を整備されている方がテープを付けたということは知っていたが、新しいテープはこれだろう。不思議なのは、高さ3mくらいの枝に結わえたテープはどうやって付けたのだろう。まさかハシゴを使ったのか。それとも、雪の時期に付けたとしても、かなり雪深い山ということになる。妥当な想像では、棒につけた針金の輪で枝を寄せ、それにテープを付けたといったところだろうか。テープも紛らわしいところが随分とある。その時はトレースを拾うのだが、いろんな方向に延びているから、先を見ながら歩かないとすぐに迷ってしまう。雪の塊がポンと跳ね上がる。その度にI男がビクッとする。熊でも出たかと思うらしいが、雪に押さえられた枝が、融雪で雪を跳ね上げるらしい。ようやく見覚えのある滝倉避難小屋跡。ここから先は朝の道だ。
14時17分甘露水口到着。車が3台。薬師岳までの途中で行き会った人達の車だろう。まぁ、何とか天気が良くてよかった。山も予想通りにいい山だった。花が満開になるのは6月末かららしいが、造詣のないオレなんかには、いつでも見頃の山だろうが。I男は「今日はいろんなことを体験させてもらいました」と言っていたが、ヤブこぎをさせられた皮肉だろうか。気にしないことにする。汗だくで気持ちが悪い。中里温泉に立ち寄る。400円。ここは本館と新館に風呂があり、両方入れるそうだが、一旦、着替えて移動しないといけない。最初はそのつもりでいたが、熱い湯のため、本館の風呂に入るだけで十分だった。ハシゴする気にはなれない。脱衣場でジイサンどうしの会話を聞いていたI男が、何を言っているのかさっぱり分からなかったと言っていたが、外国語を話しているように響くのだろうか。オレには何とも自然な会話だったが。
冷たいビールで打ち上げして仮眠してから帰りたかったが、I男は、ここで飲むと熟睡しそうだというので、ポカリを飲んで我慢する。運転はI男だから、ビールを飲んだらと言ってくれたが、まさかね。そそくさと帰ることにする。前沢SAで食事。オレはミソラーメン、I男は牛スジ丼。ミソラーメンは味噌汁ラーメンといった感じ。牛スジ丼は最初はおいしかったが、しまいには飽きたそうだ。宮城に入る頃、I男が「両股が痛い」としきりに言い始めた。明日は大変だね。
残雪とヤブこぎがあり、I男は楽しんだのでしょうね。いいな
山頂の鎮魂碑にある言葉は何か残るね。
やっぱり東北まで行くと、周りの景色も格別ですね。どの山を取っても、見ているだけで気持ち良さそう。
登るペースは自分で覚えないとと、再確認しています。
筋肉痛はやっと落ち着きましたが、歩くペースを学ばなくてと思いました。。。