![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/14/5d/8394ec26856dcb949ba7f90e52e22fb9.jpg)
◎2008年5月17日(土)─3人
I男が軽井沢にある親戚の別荘を借りたというので、付いて行くことにした。「先日の打ち上げを兼ねてバーベキューでもやりましょうよ!」との誘い。土日には何も用事はないが、ここのところ、遊び歩いている日が多く、家族の手前、自重するつもりでいたのだが、やはり誘惑には勝てず、長野への出張と称して出かけることにした。荷物は、家族の目を盗んで、出発日前夜のうちに車に詰め込んだ。出張なのに、ザックを背負って出かけるのには、言い訳にもかなりの無理が要る。金曜日、仕事が終わり次第、I男の車で出発し、途中、籠原駅前に借りている月極め駐車場に寄り、オレの遊び道具をピックアップしていく段取り。ここのところ暇を持て余し気味のK女にも誘いをかけたら、二つ返事で同行。S男には今回も避けられた。よほど、I男との間で嫌なことがあったのだろうか。親子ほどの年の差があるのに2人ともに大人気ない。意外と原因はオレだったりして。
さて、どうせ行くなら、第2弾の山行をしようかということでいろいろ物色したが、どうもぱっとした感じの山がない。あの界隈、黒斑山、鼻曲山には行ったことがあるし、浅間山では、あの2人を連れて行くには不安が先に立つ。まして、残雪の心配もある。無難なところで、篭ノ登山と水ノ塔山ということになった。「なった」と言っても、これはオレの独断で、浅間山以外の山をまったく知らない2人に相談してみても話が進まないから、勝手に決めた山。しかしながら、K女は篭ノ登も水ノ塔も、どこにあるのかも知らないままに、ネットで情報だけは仕入れて来た。これだけは感心した。仕入れた情報で「赤ゾレ」を連発する。余程、瓦礫の超危険なところと思っているのか。これに対し、I男はただ付いて歩くといった人任せのスタイル。資料の用意もなく、山といったら、眼中には彼女との富士山しかない。
別荘に着いたのは10時。夜も遅いからと、酒盛りは、風呂上りにうがい程度に軽くやるだけのつもりでいたが、I男がかなり悪酔いしてしまった。自棄酒気味な飲み方。何でも、先日、桐生の彼女の実家に挨拶に行き、オヤジに根掘り葉掘り、年収やら信条、家系、支持政党等を尋問された上に、軽くあしらわれ、放り出されてしまったことが気に入らないらしい。かなり凹んで荒れていた。ちなみに、支持政党は社民党と言ったようで、これには大笑い。人前では、せめて民主党とでも言えば良かったのにと、K女にたしなめられていたが、公明党と言ったらどうなっていたか。また新たな問題にもなるだろう。話に切りがなく、オレはさっさと寝たが、しばらくK女がつかまってしまったようだ。翌日は2人ともに腫れぼったい顔をしていた。
別荘からの出発は8時半。小諸から高峰高原に向かう。昼食は前夜のコンビニ仕入れ。18号を通っていた時には、むしろ暑さを感じたが、峠越えルートに入ったら、雲が沸いている。天気は雨にはならない程度の雲行き。つまりはっきりしない天気。浅間山は見えない。雨女がここにいる。サーファーのI男は晴れ男。相殺して曇りということか。途中、カモシカ1頭に出会う。2人とも、結構、感動している。サルは出て来ない。池の平駐車場9時半着。往復3時間もあれば登れるだろうと想定したが、残雪がある。ちょっと気になる。今日のI男の靴は皮製なのだが、タウンユースに近い代物。靴底に型が無い。これでは滑ってしまう。I男の履物、先日の三ツ峠山はスニーカーだったが、今回は一転してこの靴。登山靴は「富士山までには買う予定っす」とのことだが、調教とはいえ、経済的な圧迫になるような強制は出来るだけ避けたい。自発的な購入を望むしかない。たまたま、I男とオレの足のサイズが同じだったので、I男にはオレの山靴を貸して、オレは、予備で持参したゴム長を履く。2人とも、スパッツなんか付けたこともないから、オレが2人分装着させて手間取る。出発9時55分。この間の2人の様子を眺めていて感心したことだが、自分の食糧、つまりは昼飯だけは自分で持てばいいのに、全然、関心が向かない。つまりは、自然に、オレが3人分の昼食を持つことになる。前回とまったく同じ。次回からは注意することにして黙っていた。まだまだ他人任せで危機管理が出来ていない。
結構、人が入っている。残雪を歩くが、こんな時間だから、雪もところどころぬかるんでいる。その度にK女が嬌声を上げる。今回はI男を先に歩かせる。余談ながら、2人とも、今朝は寝不足ながらも、快便だったようだ。信じがたい。神経が相当太い。オレはまったくダメ。そのせいか、やたらとガスが出る。腹の残存固形物が気化してしまうことを願うしかない。
2人とも、さすが2回目だけあって、ある程度は、心得た歩き方をしている。前回のような青色吐息にはなっていない。しかし、ベテラン(つまり=オレ)との気持ちの余裕だろうか、下って来たオッサンの特徴を質問的に聞いたら、からきし覚えていない。あのオッサンの特徴は、雪の上なのに、スニーカーと、くわえタバコだった。もっと余裕があったら、連れの女性を見て、「何か、あやしい感じでしたね」だったはず。少なくとも、オレにはそう見えた。気持ちの余裕は2人ともないようだ。篭ノ登山の直下。石がゴロゴロしている。雪は消えたから、先行する。あっという間に距離が開いた。山頂にはオッサンが一人。写真を撮ってもらった。お礼に、オレも撮ってやる。ようやく2人も山頂に到達。10時35分。雪があったのにまぁまぁの速度だね。
しばらく休む。黒斑山は見えても、浅間は、裾野がチラチラするだけ。それでいて、草津白根はかすみながらもよく見える。このまま戻って、別荘でバーベキューでもいいのだが、これではあまりにも寂しい。2人とも、まだ、余裕はある顔をしている。前回、足の痛みに耐えぬいたK女も、今日は何ともないと言う。毛糸の靴下を履かせたせいだろうか。誘い水をかけてみる。「ここは東篭ノ登山だけど、どうする?西篭に行ってみる?それとも、水ノ塔山にでも行ってみる?」。いずれの山も、一旦、下りきってからの登りだから、しばらく2人とも眉間に縦皺を寄せながら、ルートを眺めていたが、自分が行きたいばかりに「水ノ塔山の方が、標高差で10m程度は楽なハズだよ」の一言で押し切った。K女が「また、ここに戻って来るんでしょ?」と聞いてくるが、「車がこっちにあるんじゃ、しょうがないよ」と冷淡に答えるしかない。彼女には、やはり、戻りの登りが不安なようだ。
いざ、水ノ塔山を目指して下る。北側斜面の林の中だから、今まで以上に残雪部が続く。初心者のI男とK女にはつらい下りだろうが、たいした下りではない。林の中だから、滑落の危険はまったくない。せいぜい、足を滑らす程度。K女の嬌声がまた始まった。その度に、こちらはビクビクする。体重は結構あるはずなのに、どうして、こうも不安定なのだろう。I男はダブルストック、K女はシングル。危ないところは、ストック自体がバランスを崩す原因になるから、オレが持つ係になる。北側だから、雪もある程度は締まっている。鞍部からの登りの単独が来る。こっちは下りだからと2人を待たせ、行かせてやるが、「コンニチワ」も「スミマセン」の一言もない。こんな、挨拶もできないヤツは町のゲーセンで憂さ晴らしでもしていればいいのにと思う。今回の山行で愛相が悪いのは、この若いオッサンだけだった。
赤ゾレ通過11時20分。崩壊しているとはいえ、強風、雨ではない限り、たいした危険地帯でもない。期待していたK女もやや落胆気味。ここで出会う反対側から来たオッサン、仮にA氏としよう。このA氏とは後で再び出会う。岩場っぽいところを登り、残雪をかきわけて水ノ塔山に到着。11時40分。お疲れ様。2人ともに、すごい発汗。それでいて、オレはここまで、無汗のうえに、水もとっていない。K女は水筒を半分開けてしまっている。山頂には若めのカップルだけ。カップラーメンを食べている。銘柄はカップスター。ここで、我々も昼食。コンビニムスビを食べる。前回のように、I男はガツガツしない。予想外に2人とも疲れた素振りは見せない。まだまだの余裕。浅間が見えなくとも、展望は広がっていて気持ちがいい。I男が綿棒をK女からもらって、しきりに耳をかいている。聞けば、1日に2回は耳かきをするそうだ。変なクセだねぇ。山に来てもやるのは、それなりの気持ちのゆとりもあるのだろうか。クセと言えば、これもI男の悪いクセだが、オレのことを職場の役職名で呼ぶ。声も大きいから、あのカップルも、つい、オレの顔を見る。恥ずかしくなってくる。このことは、後でしっかりとたしなめておいた。
下山にかかるが、いくら調教とはいえ、あの残雪部を下って登らして戻らすのも何だから、林道歩きに切り替える。このまま、水ノ塔山の登山口、高峰温泉に下ることにする。やさし過ぎだろうか。石がゴロゴロしていて下りづらい。終点まで行かずとも、林道に下れそうな斜面はあまたありそうなのだが、オレには出来そうだからといって、2人を巻き添えにはできない。何回か偵察に下ってみるが、すべてあきらめた。あの2人なら、絶対に、どちらかがコロコロと滑ってしまう。
雨がポツリ。気はあせるが、2人とも、ちっとも慌ててくれない。出来るだけ合羽着用は避けたい。後で始末が大変。何とか、雨にあたることなく12時45分登山口着。途中、ウグイスやらカッコーの声を聞く。早速、2人ともトイレに向かうが、ここは、温泉利用客しか使えないトイレ。ヘタをすれば、ここの登山口に車を止めたら、駐車代をとられたかもしれない。こんなところで、ゼニゲバしなくてもいいのにと思う。林道歩きはつらい。傾斜も上りになっている。トイレで出しそびれたK女の適当な花摘み場を物色しながら歩くが、まったく手頃な場所がない。橋の下では嫌だとわがままを言う。だったら我慢してもらうしかない。ここで、先ほどのA氏と再会。我々とまったく逆のルートをたどったようだ。この山域で林道歩きを視野に入れたコースを設定する人はあまりいないと思うが、珍しい同類。I男が適当な距離配分から推定して、こっちが勝っているようなことを言ったが、確かにそうかもしれない。何度もカーブにだまされながらも1時間後にようやく林道歩きから解放される。その間、K女は千鳥足のフラフラ。駐車場着13時40分。地蔵峠から来たらしいバイクのツーリングに聞かれる。「このまま、ずっと、こっちはジャリ道ですかね?」。I男が「Yes」と答えたら、そそくさとUターンして、地蔵峠の方に戻って行った。モトクロス用のバイクでなきゃきついでしょうに。
ようやく、I男もK女もきれいなトイレでくつろげた。2人とも、足の痛みは全然なし。よかった。ほっとした。これから、小諸のスーパーで食糧を仕入れてバーベキューの楽しみが待っている。もう何年も使わずにいたダッチオーブンで鳥ダシを作ってラーメンを食べる予定。来る時にカモシカを見た場所で、群馬ナンバーのオッサンが変な車の止め方をして、通過に往生する。しきりにオッサンが「シカがいる!」と、行き交う車に向かっては騒いでいる。そんなに珍しいのか、あきれてしまう。あのカモシカがまだいるのだろうが、車内の話題は、もう、今夜の食の話になっている。シカはもうどうでもいい。K女は気を張って安心したのか、後ろ座席で横になってしまった。オレも、つい居眠り。体力よりも精神的な疲れ。さすが、その夜のバーベキューでは、I男も前夜のようには荒れることなく、むしろ、オレが先に沈没してしまった。
I男が軽井沢にある親戚の別荘を借りたというので、付いて行くことにした。「先日の打ち上げを兼ねてバーベキューでもやりましょうよ!」との誘い。土日には何も用事はないが、ここのところ、遊び歩いている日が多く、家族の手前、自重するつもりでいたのだが、やはり誘惑には勝てず、長野への出張と称して出かけることにした。荷物は、家族の目を盗んで、出発日前夜のうちに車に詰め込んだ。出張なのに、ザックを背負って出かけるのには、言い訳にもかなりの無理が要る。金曜日、仕事が終わり次第、I男の車で出発し、途中、籠原駅前に借りている月極め駐車場に寄り、オレの遊び道具をピックアップしていく段取り。ここのところ暇を持て余し気味のK女にも誘いをかけたら、二つ返事で同行。S男には今回も避けられた。よほど、I男との間で嫌なことがあったのだろうか。親子ほどの年の差があるのに2人ともに大人気ない。意外と原因はオレだったりして。
さて、どうせ行くなら、第2弾の山行をしようかということでいろいろ物色したが、どうもぱっとした感じの山がない。あの界隈、黒斑山、鼻曲山には行ったことがあるし、浅間山では、あの2人を連れて行くには不安が先に立つ。まして、残雪の心配もある。無難なところで、篭ノ登山と水ノ塔山ということになった。「なった」と言っても、これはオレの独断で、浅間山以外の山をまったく知らない2人に相談してみても話が進まないから、勝手に決めた山。しかしながら、K女は篭ノ登も水ノ塔も、どこにあるのかも知らないままに、ネットで情報だけは仕入れて来た。これだけは感心した。仕入れた情報で「赤ゾレ」を連発する。余程、瓦礫の超危険なところと思っているのか。これに対し、I男はただ付いて歩くといった人任せのスタイル。資料の用意もなく、山といったら、眼中には彼女との富士山しかない。
別荘に着いたのは10時。夜も遅いからと、酒盛りは、風呂上りにうがい程度に軽くやるだけのつもりでいたが、I男がかなり悪酔いしてしまった。自棄酒気味な飲み方。何でも、先日、桐生の彼女の実家に挨拶に行き、オヤジに根掘り葉掘り、年収やら信条、家系、支持政党等を尋問された上に、軽くあしらわれ、放り出されてしまったことが気に入らないらしい。かなり凹んで荒れていた。ちなみに、支持政党は社民党と言ったようで、これには大笑い。人前では、せめて民主党とでも言えば良かったのにと、K女にたしなめられていたが、公明党と言ったらどうなっていたか。また新たな問題にもなるだろう。話に切りがなく、オレはさっさと寝たが、しばらくK女がつかまってしまったようだ。翌日は2人ともに腫れぼったい顔をしていた。
別荘からの出発は8時半。小諸から高峰高原に向かう。昼食は前夜のコンビニ仕入れ。18号を通っていた時には、むしろ暑さを感じたが、峠越えルートに入ったら、雲が沸いている。天気は雨にはならない程度の雲行き。つまりはっきりしない天気。浅間山は見えない。雨女がここにいる。サーファーのI男は晴れ男。相殺して曇りということか。途中、カモシカ1頭に出会う。2人とも、結構、感動している。サルは出て来ない。池の平駐車場9時半着。往復3時間もあれば登れるだろうと想定したが、残雪がある。ちょっと気になる。今日のI男の靴は皮製なのだが、タウンユースに近い代物。靴底に型が無い。これでは滑ってしまう。I男の履物、先日の三ツ峠山はスニーカーだったが、今回は一転してこの靴。登山靴は「富士山までには買う予定っす」とのことだが、調教とはいえ、経済的な圧迫になるような強制は出来るだけ避けたい。自発的な購入を望むしかない。たまたま、I男とオレの足のサイズが同じだったので、I男にはオレの山靴を貸して、オレは、予備で持参したゴム長を履く。2人とも、スパッツなんか付けたこともないから、オレが2人分装着させて手間取る。出発9時55分。この間の2人の様子を眺めていて感心したことだが、自分の食糧、つまりは昼飯だけは自分で持てばいいのに、全然、関心が向かない。つまりは、自然に、オレが3人分の昼食を持つことになる。前回とまったく同じ。次回からは注意することにして黙っていた。まだまだ他人任せで危機管理が出来ていない。
結構、人が入っている。残雪を歩くが、こんな時間だから、雪もところどころぬかるんでいる。その度にK女が嬌声を上げる。今回はI男を先に歩かせる。余談ながら、2人とも、今朝は寝不足ながらも、快便だったようだ。信じがたい。神経が相当太い。オレはまったくダメ。そのせいか、やたらとガスが出る。腹の残存固形物が気化してしまうことを願うしかない。
2人とも、さすが2回目だけあって、ある程度は、心得た歩き方をしている。前回のような青色吐息にはなっていない。しかし、ベテラン(つまり=オレ)との気持ちの余裕だろうか、下って来たオッサンの特徴を質問的に聞いたら、からきし覚えていない。あのオッサンの特徴は、雪の上なのに、スニーカーと、くわえタバコだった。もっと余裕があったら、連れの女性を見て、「何か、あやしい感じでしたね」だったはず。少なくとも、オレにはそう見えた。気持ちの余裕は2人ともないようだ。篭ノ登山の直下。石がゴロゴロしている。雪は消えたから、先行する。あっという間に距離が開いた。山頂にはオッサンが一人。写真を撮ってもらった。お礼に、オレも撮ってやる。ようやく2人も山頂に到達。10時35分。雪があったのにまぁまぁの速度だね。
しばらく休む。黒斑山は見えても、浅間は、裾野がチラチラするだけ。それでいて、草津白根はかすみながらもよく見える。このまま戻って、別荘でバーベキューでもいいのだが、これではあまりにも寂しい。2人とも、まだ、余裕はある顔をしている。前回、足の痛みに耐えぬいたK女も、今日は何ともないと言う。毛糸の靴下を履かせたせいだろうか。誘い水をかけてみる。「ここは東篭ノ登山だけど、どうする?西篭に行ってみる?それとも、水ノ塔山にでも行ってみる?」。いずれの山も、一旦、下りきってからの登りだから、しばらく2人とも眉間に縦皺を寄せながら、ルートを眺めていたが、自分が行きたいばかりに「水ノ塔山の方が、標高差で10m程度は楽なハズだよ」の一言で押し切った。K女が「また、ここに戻って来るんでしょ?」と聞いてくるが、「車がこっちにあるんじゃ、しょうがないよ」と冷淡に答えるしかない。彼女には、やはり、戻りの登りが不安なようだ。
いざ、水ノ塔山を目指して下る。北側斜面の林の中だから、今まで以上に残雪部が続く。初心者のI男とK女にはつらい下りだろうが、たいした下りではない。林の中だから、滑落の危険はまったくない。せいぜい、足を滑らす程度。K女の嬌声がまた始まった。その度に、こちらはビクビクする。体重は結構あるはずなのに、どうして、こうも不安定なのだろう。I男はダブルストック、K女はシングル。危ないところは、ストック自体がバランスを崩す原因になるから、オレが持つ係になる。北側だから、雪もある程度は締まっている。鞍部からの登りの単独が来る。こっちは下りだからと2人を待たせ、行かせてやるが、「コンニチワ」も「スミマセン」の一言もない。こんな、挨拶もできないヤツは町のゲーセンで憂さ晴らしでもしていればいいのにと思う。今回の山行で愛相が悪いのは、この若いオッサンだけだった。
赤ゾレ通過11時20分。崩壊しているとはいえ、強風、雨ではない限り、たいした危険地帯でもない。期待していたK女もやや落胆気味。ここで出会う反対側から来たオッサン、仮にA氏としよう。このA氏とは後で再び出会う。岩場っぽいところを登り、残雪をかきわけて水ノ塔山に到着。11時40分。お疲れ様。2人ともに、すごい発汗。それでいて、オレはここまで、無汗のうえに、水もとっていない。K女は水筒を半分開けてしまっている。山頂には若めのカップルだけ。カップラーメンを食べている。銘柄はカップスター。ここで、我々も昼食。コンビニムスビを食べる。前回のように、I男はガツガツしない。予想外に2人とも疲れた素振りは見せない。まだまだの余裕。浅間が見えなくとも、展望は広がっていて気持ちがいい。I男が綿棒をK女からもらって、しきりに耳をかいている。聞けば、1日に2回は耳かきをするそうだ。変なクセだねぇ。山に来てもやるのは、それなりの気持ちのゆとりもあるのだろうか。クセと言えば、これもI男の悪いクセだが、オレのことを職場の役職名で呼ぶ。声も大きいから、あのカップルも、つい、オレの顔を見る。恥ずかしくなってくる。このことは、後でしっかりとたしなめておいた。
下山にかかるが、いくら調教とはいえ、あの残雪部を下って登らして戻らすのも何だから、林道歩きに切り替える。このまま、水ノ塔山の登山口、高峰温泉に下ることにする。やさし過ぎだろうか。石がゴロゴロしていて下りづらい。終点まで行かずとも、林道に下れそうな斜面はあまたありそうなのだが、オレには出来そうだからといって、2人を巻き添えにはできない。何回か偵察に下ってみるが、すべてあきらめた。あの2人なら、絶対に、どちらかがコロコロと滑ってしまう。
雨がポツリ。気はあせるが、2人とも、ちっとも慌ててくれない。出来るだけ合羽着用は避けたい。後で始末が大変。何とか、雨にあたることなく12時45分登山口着。途中、ウグイスやらカッコーの声を聞く。早速、2人ともトイレに向かうが、ここは、温泉利用客しか使えないトイレ。ヘタをすれば、ここの登山口に車を止めたら、駐車代をとられたかもしれない。こんなところで、ゼニゲバしなくてもいいのにと思う。林道歩きはつらい。傾斜も上りになっている。トイレで出しそびれたK女の適当な花摘み場を物色しながら歩くが、まったく手頃な場所がない。橋の下では嫌だとわがままを言う。だったら我慢してもらうしかない。ここで、先ほどのA氏と再会。我々とまったく逆のルートをたどったようだ。この山域で林道歩きを視野に入れたコースを設定する人はあまりいないと思うが、珍しい同類。I男が適当な距離配分から推定して、こっちが勝っているようなことを言ったが、確かにそうかもしれない。何度もカーブにだまされながらも1時間後にようやく林道歩きから解放される。その間、K女は千鳥足のフラフラ。駐車場着13時40分。地蔵峠から来たらしいバイクのツーリングに聞かれる。「このまま、ずっと、こっちはジャリ道ですかね?」。I男が「Yes」と答えたら、そそくさとUターンして、地蔵峠の方に戻って行った。モトクロス用のバイクでなきゃきついでしょうに。
ようやく、I男もK女もきれいなトイレでくつろげた。2人とも、足の痛みは全然なし。よかった。ほっとした。これから、小諸のスーパーで食糧を仕入れてバーベキューの楽しみが待っている。もう何年も使わずにいたダッチオーブンで鳥ダシを作ってラーメンを食べる予定。来る時にカモシカを見た場所で、群馬ナンバーのオッサンが変な車の止め方をして、通過に往生する。しきりにオッサンが「シカがいる!」と、行き交う車に向かっては騒いでいる。そんなに珍しいのか、あきれてしまう。あのカモシカがまだいるのだろうが、車内の話題は、もう、今夜の食の話になっている。シカはもうどうでもいい。K女は気を張って安心したのか、後ろ座席で横になってしまった。オレも、つい居眠り。体力よりも精神的な疲れ。さすが、その夜のバーベキューでは、I男も前夜のようには荒れることなく、むしろ、オレが先に沈没してしまった。