18日の花材のグラジオラスは場所がないので、花瓶につっこんで出窓においてあります。
夫がそれを見て、「グラジオラスって今の時期ではないね」っていいました。
そうですね。グラジオラスは夏に咲くのが一般的ですが、春に咲くのもあるそうです。今は秋咲きもあるかもしれません。
ロシアのグラジオラスのことを以前書いたことを思い出し、読み直してみました。忘れていたことばっかりだったので、そこからいくつか書いてみますね。
ソ連が崩壊する前の1989年春にロシアに行ったときのことです。
モスクワのチェリョームシキン市場に連れて行ってもらったら、日本とまるで同じような植木市をやっていて、そこでお姉さんが小さな台にグラジオラスだけ、種類別に分けて売っていました。日本とは売り方がちがうので、興味をもって見ていたら、売り手のお姉さんは「これはきれいよ」「これもきれい」といいながらグラジオラスの花のスライドのネガを次々に見せるのでした。
どこの店もこの売り方というわけではなく、花の絵が立てかけてあったり、名前と花の特徴を一覧表にしてあったり、それぞれです。日本より園芸好きでどちらかといったら玄人向けの感じですが、ロシアの家庭では大体がダーチャをもっていて、菜園や花壇を楽しんでいるから、みなけっこう詳しいです。今より娯楽が限られていましたしね。
ソ連時代(たぶん今も)グラジオラスは園芸に欠かせない花で、売り方でも分かるように驚くほど種類がありました。品種の名前はロマンチックなものが多く、白雪姫、オリガ・チェーホワ、春のほほえみ、カンタータ、森の歌、セルゲイ・エセーニン……などなど。
今はおそらく品種の名も違っているでしょう。今度調べて紹介しますね。
オリガ・チェーホワは作家チェーホフの妻でモスクワ芸術座の女優だった人、モスクワ郊外メリホヴォにあるチェーホフ博物館ではオリガが訪問したときこのグラジオラスが咲いていたそうです。そういう分かる人にしか分からない迎え方は館長だったアヴデーエフの細やかな感情を現しています。
エセーニンはロシア人にずーっと愛されてきた詩人です。革命後30歳で自殺した悲劇的な生涯もあって、かれの詩は学生時代によく読みました。
久しぶりに死の直前に書かれた有名な詩を読んでみましょうか。内村剛介訳です。
さようなら 友よ さようなら
わが友、君はわが胸にある
別離のさだめ――それが
あるからには
行き遭う日とて
またあろうではないか
お別れだ! 手をさしださず
ひとことも言わず
友よ 別れよう
うつうつとしてたのしまず
悲愁に眉をよせるなんて――
今日に始まる死ではなし
さりとて むろん
ことあたらしき生でなし (1925年)
セルゲイ・エセーニンというグラジオラスは赤い花を咲かせるそうです。その品種は今もあるかしら?
多分ないかな。でも、 今もたくさんの種類があるようです。
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