とっくに過ぎているじゃないか・・・・
おはようございます。
6月11日は、よねの命日だった。
すっかり忘れていた。
そうだ。
11日は、予定外に、うんこを病院へ連れて行った日だ。
うんこは、抗生剤で元気を取り戻してきたにも関わらず、
ほとんど絶食状態が続いていた。
鼻だけじゃないかも・・・そう思っていたら、
急に、「うんちゃん、ちょっと食べてみるから見てて」と言わんばかりに、
私の前でご飯を一口食べて、前足で口を引っ掻くような素振りをして
私を見上げた。
だから、私はうんこを連れて、病院へ走ったんだ。
そうか、そうだった。
よねという猫は、不思議な猫で、
ご飯の用意をしたって、すぐ食べにくるような猫じゃなかった。
呑気で気ままで、実は、いつ食べていたんだろう。
気付くと、いつも皿が空っぽになっていたってだけで、
本当に、よねが食べたのか定かでは無かった。
それでも、顔はいつも真ん丸だったから、まあいいかって諦めていた。
18年間、私はよねの生態を全て把握することは出来なかったんだ。
それなのに、ある日、
座布団で寝ているよねの近くに、いつものようにご飯の入ったお皿を置くと、
よねがむくっと起きて、ぱくっと口を付けた。
出されたご飯をすぐに食べるなんて、珍しくて驚いたが、
「あら?珍しいねぇ。じゃ、あたしゃ歯医者さん行ってくるよ。」と言って
すぐ立ち上がろうとした。
その時、私は歯が痛かったんだ。猛烈に。
しかし、よねは、私の前にテトテトと来て、
「ニャー!」と鳴いて見せた。
「ん?」
すると、今度は短い前足で、口を引っ掻くようにして、もう一度、
「ニャー!」と鳴いた。
「よね、お口が痛いんだな?こりゃえらいこっちゃ」
私は、すっくと立ち上がり、ぬいぐるみを持ち上げるように、
よねを抱き上げ、病院へ走った。
私の歯医者ではなく、動物病院へだ。
そうだった。
うんこも、歯が痛かったんだ。
あの時のよねとそっくりだから、すぐ分かった。
よねの命日に、
よねはうんこに、耳打ちしに来てくれたのかもしれない。
「この人ね、分かりやすいように伝えないと、気付いてくれないんだよね。」
なんて、教えてくれたような気がした。
それが、よねの命日の日だったと気付いたのは、昨日の朝だった。
うんこが食べる様を見て、よねを思い出したんだ。
「うんちゃん、歯はもう痛くないな?」
また痛くならないか、見逃さないように、しゃがんで見守っていた。
「よねの命日、すっかり忘れてたよ、私」
その時、グーッと腹が差し込んだ。
けれど私は、ずっとしゃがんでいた。
よねの命日を忘れていたにも関わらず、
ここで、うんこのことをも見守らないのは、あまりにも気が引けた。
「もう限界かもしれない、いやまだ大丈夫。」
腹の中は行ったり来たりの綱引きが始まったが、
うんこは、ゆっくり味わうように食べている。
「あかん、うんこ?まだ?」
ゆっくりゆっくり食べている。
そういえば、よねも食べるのが遅かった。
そんな事も思い出しながら、気をそらそうとしても、
グルグルグルグル・・・腹の音は、早まっていく。
「おっ、うんこ、完食したな。えらいぞ。」
我慢の甲斐あって、ようやく、うんこは食べ終わった。
私は、うんこの頭を撫ぜてやろうと手を伸ばしたが、
寸でのところで、私の手は止まった。
そして、開いていた掌は、見えない藁を掴むように固く握られていた。
「出て・・・もうた。」
尻の括約筋には、食い止める力は残っておらず、
うんこはお構いなしに、とりあえず、切れの良いところまで、出てしまった。
よねの2回目の命日を思い出した16日の朝、
私はうんこを漏らした。
なんか・・・よね、ごめんって思った。色んな意味で。
長い話になってしまったが、
要するに、うんこを漏らし話でした、ごめんなさい。
よね、ごめんな。
うんこの事だったからかな?
うんこ繋がりみたいな感じで、出ちゃったんかな?
こんな感じで、現れてくれたんかな?
命日を忘れたって、君のことは忘れないよ。
忘れられない、不思議な猫だ。