昨日から連休に突入したが、
動かない・・・か・・・体が
体がまったく・・・うごかな・・・い
ゴロゴロのし過ぎで、体が思うように動かない。
このペースでいくと、3日目には日本語を忘れると思うんです。
嫌な予感するな~怖いな~。
ということで、おはようございます。
稲川順子です。
あれは、ある秋の事だったと思うんですがね。
当時、以前少しだけ、いい感じになりかけたけど、
それは私の勘違いだったとう、男がいたんですよね。
その男が、ある日、相談があるだなんて、
メールして来たもんだから、あたしゃ、
いつもより3割増しで化粧して待ち合わせ場所に行った訳です。
すると、がっちりしてたはず男が、
馬でも肥える季節だというのに、痩せこけていたんです。
「ど・・・どうしたんですか?」そう聞くと、
男は、息も絶え絶えな様子で、訴えてきたんです。
最初は、二回り以上も年齢が離れた若い女性に現を抜かし、
ちょっと火傷した程度の話だと思って聞いていたんですよね。
「とにかく、彼女からの金の無心が酷くて、
ぼく、ついに会社の金にまで手を付けてしまっているんだ」と。
「いや、渡さなければいいだけの話でしょ?」そう言うと、
男は、
「そうなんだけど。どうしても断れないんだ」と、
泣きそうな顔で訴えてくる。
この男は、世間では出世した、分別のある大人の男で、
それが、二十歳の女の見え透いた嘘を見抜けないはずもないが、
もはや、完全な支配下に置かれていたんです。
「彼女、可哀そうな子なんだよ。
周りの人は、なぜか、どんどん亡くなってしまうの。
もう一人の彼氏も、この前、突然亡くなったんだ。」
もう一人の彼氏というのも引っかかるが、
それより遥かに恐ろしい事に気づいて、聞いてみた。
「あなたも、先日、お母様を亡くされてるよね?
まさか、そのお母様と彼女とは面識ありますか?」と。
「面識ってほどではないけど・・・」
無いけど?
無いけど何?
「問い詰められて、母には正直に言ったんだ。
それで、彼女を1度だけ母に合わせたよ。
母が、彼女に身を引いてもらうよう説得してくれたんだ」
その次の日に、男の母親は突然亡くなっているという訳です。
聞いてみれば、その女の周囲の人は、
みーんな、同じ症状で突然死しているんですよね。
私も、さすがに、背筋がぞーっとしたんです。
そして、そのぞっとさせる正体が、
彼女に憑依した強大で悍ましい何かではないか?そう感じたんですよね。
私は、考えた。
この男は、もう、その何かに飲み込まれそうになっている。
いずれ、死んでしまうかもしれない。
ならばと思い、
「次に彼女からの連絡が来たら、
ある場所に待ち合わせの約束をして。
私も、そこで落ち合って、彼女と話してみるわ」と男に伝えたんです。
いえね、私には、何の力も自信も無いんですよ。
ただね、あたしゃ、腹が立ってね。
下心丸出しで近付いた男の事なんて、自業自得ですがね。
その女の子は、まだ20歳でしょ?
しかも、たぶん、何の自覚も無いままなんですよね。
悪霊だか何だか知らないが、
こんな娘さんを利用して何しやがるんだってね。
ましてや、何人もの人の命を奪ったとなりゃ、
許しておけねーって、腹が立っちゃったんですよね。
あたしだって、こう見えて、
ひとはだ脱いだら凄いだぞって思ったんです。
私が脱いだら、地獄絵図の亡者みたいなんですからねって。
その数日後、
私は、家で静かな休日を過ごしていたんです。
そこに携帯電話が鳴りました。
「おかっぱちゃん、彼女から、また金の無心が来た。
助けて、おかっぱちゃん、俺もうだめだ。助けて」
そこで、私は、
「しっかりして!とにかく私が会って、やっつけてやるから!」
と、怒り心頭のまま、約束を取り付けろと促して一旦電話を切ったんです。
私は、ふーっと息を大きく吐き、
これからやってくる戦いに武者震いをした。
と、その瞬間。
ドドドドドドドーーーン!
窓が割れんばかりに、叩かれた。
もちろん、姿は見えない。
しかし、部屋中が震えるほどの音に、
まったり昼寝していた猫達が、一斉に散った。
膝の上の猫は、仁王立ちになり総毛立っている。
やつが来た・・・
そして、
もう来たの?
ねえ、すげー早くね?
まだ宿主とも会ってないのに、
あんただけ来るって、せっかち過ぎない?
そう思ったんです。
あたしゃ、すっかり驚いちゃってね。
そして、やつに負けず劣らぬ程のせっかちな私は、
「わし、勝てない」と早急に判断を下し、
実家の母さんの所へ全速力で走った。
私ね、こんな時だけ、足が速いんですよね。
ベンジョンソンかってくらいのフォームで走ったんですよね。
私は、実家に着いて、開口一番、
「母さん?お経を唱えてくれ」と叫んだ。
「なんでや?おまえ、また変なもんに関わったんか?」
そう呆れた顔で言う母に、事情は言わなかったんです。
言ったら、母さんにも害が及ぶような気がしたんですよね。
「とにかく、何も考えず仏壇の前で、3回唱えてやってくれ」と
頼みました。
ちなみに、我が家は
特定の宗教を深く信仰している訳ではないんです。
いわば、一般的な仏教徒でしてね。
母は年齢的に、私世代よりは信仰心があるようですが、
普段は、仏壇に花を供えて手を合わせる程度でね。
私は、気が向いた時だけ、おはぎを買って供える程度でして。
ただ、母は昔から、俗にいう、霊感の強い人でした。
私の方は、霊感が強いというより、
無鉄砲に関わり過ぎて、たまに罰が当たってるって所でしょうかね。
その都度、母にお経をあげてもらうと、
不思議とスッキリするという訳なんです。
「わしはよ、こんな大層な事、いやなんやぞ。
わしは神さんでもないのに、こんな事して恐縮なんや。
仕方ないから、嫌々やっとるんや」
母は、そうブツブツ言いながら、仏壇に蝋燭を灯し、
お経を唱え始めた。
こうして、
途中、「あれ?わし、ここ唱えたっけか?」
「えーっと、これはなんと読むんだっけか?」
と、荘厳とは言い難い、緊張感のない読経が終了した。
それでも、私は、こんな読経の最中、
何度も嘔吐していたんですよね。
やつは、強力だ。
そして執念深い。
やつが誰かも分からないが、私にはそう思えて、
母さんの事が心配になってしまったんです。
その日の夜は、さすがに、
なかなか寝付けずいるのが本来でしょうが、
私は、普通に熟睡しちゃったんです。
そして、目覚めて、すぐ、実家へ向かったんです。
「母さん?大丈夫か?なんか怖い事なかったか?」とね。
腹が減っている朝は、だいたい恐ろしく不機嫌な母さんにしては珍しく、
この日は、穏やかなほほ笑みを湛えて、こう言ったんです。
「夜中に、蛇が、ぎょうさん出てきたぞ。」
へびが沢山?
母さん、ごめん。
私のせいで、怖い思いしたやろ?
「いや、わしが見てたらよ。
そのうち、全ての蛇がクターッと、死んだ」
死んだ?
「うん、死んだ。アハハハハァ~」
その時、私、思ったんですよね。
もう大丈夫やなって。
そして、本当に強力で恐ろしいのは、
母さん、なんだなってね。
うんこ「男と彼女は、どうなったの?」
男は、すっかり立ち直って、幸せに暮らしてるみたい。
女性の方は、どうなったかな?
結局、私は会う事なく、あの日を境に、
男にもぱったり連絡が無くなったんだってさ。
恐ろしいな、母さんって。
あや「そんな事言ってる暇があったら」
うんこ「床の掃除をしなさいよ、母さんめ!」
おっそろしや~!
稲川順子の怪談でした。
リクエストくださって、ありがとうございました。
では、またフフフフフフ