空から降ってくるのは、
雨や、雪、鳥のフンとは限らない。
時々、猫も降ってくるのです。
カラスが咥えて飛んでいる最中に、落としてしまった子猫。
まるでフンのごとく落ちてきた。
当時、離婚直後の私は、何もない小さな部屋に
猫3匹と暮らし始めていた。
厄介な事だとは思ったが、一応、育ててみた。
その子猫を、うんこと名付けて・・・
すぐさま動物病院へ行き、名前とその由来、保護の経緯を伝えたところ、
優しい獣医は機転を利かせて、こう言った。
「この子は、フンという意味の、うんこじゃないよ。
運がいいから、うんこなんだよ。そーだよね。」
本当に心根の優しい獣医は、必死だった。
バカな飼い主の付けた名前の由来をごっそり捻じ曲げて
カルテにも、こう記した。
そのおかげで、うんこは、再び2度の危機を乗り越えた。
相次ぐ感染症を患い、空に帰りかけ、
避妊手術の縫合後、腹膜が破れて、
また空へ帰ろうとした。
それでも、うんこは、この世にとどまった。
とどまって、元気になって、
そして様々な仕事を成し遂げていった。
「部屋中を雲の上 計画」
箱テッシュ、トイレットペーパーを残らず駆使し、
疲れて帰った私を雲の上へと、いざなった。
私は、トイレットペーパーを買いに走った。
「紙吹雪 計画」
本も雑誌も、重要書類も、
粉々にして、その上を走り回り、
紙吹雪で、私を出迎えた。
私は、ゴミを拾いながら、半泣きで部屋を回った。
「オープンハウス 計画」
帰宅したら、扉という扉、引き出しすべて、オープン!
私は、カバンから携帯電話を出した。
寸でところで、警察を呼ぶところだった。
そうなると、もしかして、あの仕事も?
タンスの裏に、ドライフードを、おてんこ盛りに隠したのは?
うんこ:「うんちゃんだよ」
ついでに、その中に私のブラジャも紛れていたけど?
うんこ:「うんちゃんだよ」
帰宅したら、玄関のドアが全開だったのは?
うんこ:「うんちゃんだよ」
冷蔵庫のドアのパッキンがすべて紛失したのは?
うんこ:「ふんひゃんひゃよ」
壁紙ベローンは?キャットタワー破壊は?
饅頭が猫トイレに埋まってたのは?
うんこ:「う・うん・・ちゃ・・・んだ・・・よ」
全部、知っとったわー!
ということは、
最近のトイレットペーパー全長が全滅も?
おたま:「それは、ぼくだよ」
それも知っとったわー!
仕事といえば、子猫の面倒も上手なほうだが、
うんこが育てると、
なぜかちょっと個性的な猫に育つんだった。
あやとか、おたまとか・・・。
何はともあれ、
あれから、もう10年。
お前の手の込んだ仕事ぶりに、
私は、叱ってばかりだった。
でもいつか、お前が本当に空に帰る日が来たら、
あの時みたいに、
まだ逝くなって、叱ったりはもうしないからな。
それだけは、約束しよう。