私には、
忘れられない景色がある。
おはようございます。
どこで生きていても、自分の居場所が見つけられず、
堪らなくなって、目指す当てもないまま車を走らせた。
だからといって、知らない土地を彷徨う意気地のない私は、
結局、生まれ育った土地へ向かった。
あれは春だったか、秋だったか、覚えていない。
うんと昔のことだ。
大通りが渋滞になったせいで、自分の心まで渋滞につられた。
「この先、どうしよう・・・」
のろのろ運転にぐったりした私は、ひょいっと左折して細道へ逸れた。
その細道は、私が通ったことのない道だった。
延々と続く田園を分ける細道だ。
しかし、左折した数秒後、私は思わず停車する羽目になった。
一瞬のうちに、私の目がコスモス色に染められたからだ。
果てまで続く田園は、すべてがコスモスに埋め尽くされていた。
その時、私は生まれて初めて、
ただ純粋に、美しいという感情の涙を流した。
「こんなことで、どうして泣けるんだろう?」
若い私は、苦しくて悲しくて淋しい時の涙しか、それまで知らなかった。
あれから25年経ち、なんだかんだで、
今、私は毎日、その道を通っている。
会社から帰るに、便利な抜け道なんだ。
あれ以来、この道でコスモスを見ることは無いけれど、
今も、この道の景色に時々励まされる。
結局、自分の居場所はいまだ見つかっていない。
どこへいても、私は後ろめたい気分になる。
「別に、それでいいじゃん?
自分の居場所なんて見つからなくても、
この星には、泣けちゃうくらい美しい景色がある。
それで充分だ。」
それを思い出すために、私は時々停車する羽目になる。
落っこちて来そうな雲
目がくらむ一面の黄金色
チャー坊が逝ってからというもの、
私は毎日、こんな景色を眺めながら、
必死にスマホの中のチャー坊に縋りついていた。
あの被毛を、あの視線を、どうしても忘れたくなかった。
彼はまるで、私の居場所みたいな存在だった。
そんなある時、来たもんね~。
チャー坊が戻って来たもんね~。
制作場所は、こちらへどうぞ→ねこなんて大っ嫌い
ままん、ありがとうございます。
これで、毎日、あの道で泣く羽目にならなくなった。