久しぶりに、
パソコンを起動させた。
おはようございます。
しばらく記事も更新していませんでしたので、
ご心配下さった方もおられるかと思いますが、
申し訳ありませんでした。
うめと愉快な仲間達は、すこぶる元気です。
元気でなかったのは、実家のカズコさんでした。
いや、元気はある。
手術を嫌がって、暴徒と化し、手術時間を3時間も遅らせたってほど、
お元気なのです。
この場を借りて、お詫び申し上げます。
「脳外の先生、ごめんね。」
始まりは、17日の火曜日だった。
私は、カズコを連れて、
認知症の名医である精神科医のいる病院を訪れた。
カズコは数年前から、とっくのボケていたが、
故きく(狂犬と呼ばれた猫)みたいなカズコを、
病院へ連れて行くのは至難の業だった。
それがついに、令和3年8月17日に叶ったのだ。
しかも、楽しそうに助手席に乗って、病院へもすんなりと入って行った。
これは、凄い奇跡だった。
「カズコさんの未来は、明るいぞ~」
私は思わず、カズコの両肩を掴んで、そう歓喜した。
その後、カズコは幾つかの検査も上機嫌で乗り越えた。
そして、ついに名医の診察が始まった。
私の第一印象としては、キャラの濃いおもろいおっちゃんといった名医だったが、
何がおもろいか、もうここでは表現できない。
世間話がひと通り終わった後の診断で、世間話の記憶は
きれいさっぱり、ぶっ飛んでしまったからだ。
「カズコちゃんは、おそらくアルツハイマー型なんだけど、
その前に、脳外科行ってきて~。
硬膜下血腫が、見つかっちゃったんだわ~。
けっこう大きいから、すぐ脳外科行って。
頭蓋骨をコンッと穴開けて、ピューッと血を抜くだけだから、
全然、大丈夫な手術だから、そっちを先に治しちゃおうな!」
カズコは、何を言われているか分からない様子だが、
キャラの濃いオモシロ名医の話に、とりあえず笑って頷いていたが、
私は、頭の中が真っ白になった。
そして、19日の木曜日、
名医からの紹介状を手に、私とカズコは巨大病院へ向かった。
その際も、カズコは、思いのほか上機嫌だった。
ここでも幾つかの検査を乗り越え、いざ、脳外科医の診察だ。
私の第一印象としては、キャラの濃いおもろい青年医師だった。
(これまた、キャラの濃い医者か・・・)そう思った。
そして、脳外科医は、オーバーな手振り身振りを加えながら、
「この血腫は手術せんと、どんどん悪くなっていくから、
すぐやろう。今日、やっちゃおう。
大丈夫!コンッと頭蓋骨に穴開けて、溜まった血をピューッと出すだけだから。」
と言った。
コンッと穴開けてピューという響きに、(デジャブですか?)と私は思った。
しかし、入院が8日必要ということから、
翌日に改めて決行することと相成った。
こうして、8月20日の金曜日の午後1時、
私はカズコを病院へ置いて去った。
コロナ禍の今、家族の付き添いは一切できない。
入院中の面会も、禁止だ。
認知機能が著しく落ちているカズコに、その全ては理解できない。
ほんの僅か、「今、自分は孤独である」ことしか、理解できないのだ。
その孤独の最中、
カズコはどんどん混乱していった。
ついには、医師や看護師に暴言を吐き、暴れて逃げようとした。
その時だ。
カズコは、持たせた携帯電話を必死で掛けた。
「真美か。ここはとんでもない所や。
わしは・・・戦う。独りで戦うんや。ほんだらな。」
「お母さん、落ち着いて。先生に代わって。ねえ、お母さん?おかあ・・・」
電話はその後、繋がらなくなった。
なにかあれば、病院から電話があるはずだ。
私は、待った。
待ちに待って夜の8時半、脳外科医から電話が鳴った。
「手術は4時の予定だったんですが、カズコさんのせん妄が酷くて、
すごい興奮状態から、落ち着いてもらうまで3時間伸びちゃいましたが、
手術は成功しましたから、安心してください。
明日から様子を見て、カズコさんがあまりに興奮したり暴れてしまうようなら、
そっちの方がカズコさんにとって危険ですので、
自宅療養に切り替える判断をせざるを得ないかもしれません。」
翌日21日、土曜日、
私と父は、迎えに行く心準備をして、待っていた。
「手術ができたんだから、それだけでも、よう頑張ったもんな。」
父は、すぐにも飛んでいく気満々だったが、脳外科医からの電話では
「今日のカズコさんは、すごい落ち着いてます。
昨日のことが、うっそみたいに落ち着いてくださってるから大丈夫です。
術後の検査にも心配する箇所もないので、安心してください。
とりあえず、このまま入院続行してもらってみます!」
と伝えられた。
しかし、私や父の携帯には、カズコから電話が鳴り続けていた。
「帰りたい、すぐ帰れんなら、勝手に出てく!」
カズコは、怒り狂っていた。
おそらく医師の言う通り、病院のスタッフの前では、
せん妄もなく暴言も吐いていないだろう。
カズコは正気の状態で、家族に怒りをぶつけていたのだ。
もともと、そういう人だ。
思い通りにならないと、とかく家族に八つ当たりをするタイプの人。
いくら、看護師さんが優しくしてくれたって、
酒も煙草もない世界なんて地獄でしかないと、怒りまくっているのだ。
長くなりましたが、こうして今日22日を迎えた。
私はスマホを、常に身近に置いているといった具合です。
そして明日には、病院へ電話をして、
医師から早期退院の相談を受けるより前に、
こちらから、退院を早めてもらうよう、懇願することになるだろう。
やれやれ。
まあ、手術ができたんだから、それで充分だ。
カズコは、社会のレールには乗れない。
今に限ったことじゃない。
狂犬カズコに、常識なんて通用しない。
カズコは昔から、カズコとして、カズコでしかない、
カズコの道をばく進してきたのだ。
けれど私は、今回ばかりは、社会のレールにカズコを乗せてみた。
きっと苦しむだろうと予想していた。
胸が痛んだ。
私の正しさがカズコの正義ではないことを分かってながら決行した。
例えるなら、
気ままに過ごしている猫を、突然捕まえて檻に入れたら、
その猫は混乱して牙をむくだろう。
それは当然のことだ。
「あなたのためなのよ」と言ったって、そんなのこっちの勝手だ。
カズコは今、その檻の中から牙をむき、
自分の自分だけの道を守ろうとしているだけなのだ。
これからも、こんな場面は幾度とあるだろう。
私は、母がカズコの道を笑顔でばく進できるよう、
社会とのバランスを取り持ちながら続けていこうと、改めて思った。
そして、想像するだけで、戦々恐々としているって訳だ。
いや、む・・・武者震いしてんだい!
こっちにもだ!
ベランダにもだ!!
セミー!
すごい音ですわ~。
おたまは大丈夫なのかい?
おたま「なにがだ?」
君、すごいね。
あやとたれのんは、押し入れに逃げたぞ。
うんこ「うんちゃんも、平気よ」
うん、うんこは昔、ベランダのセミを咥えて、
「かあさ~ん」って駆け寄ってきたもんな。
あの時、産まれて初めて、本当に卒倒したよ、あたしゃ・・・。