タレコミは、
続々と入って来ている。
おはようございます。
「向こうの工場の隙間に、白黒が入って行くの、見たよ。」
と言う人もいれば、
「下の倉庫の隙間から入ってるの、オレ見たっす。
絶対、あそこの中に子猫を隠しとるって。」
という情報も入る。
とにかく、弊社周囲の隙間という隙間についての情報が入ってくる。
猫のというより、もはや隙間情報だ。
私は、周囲に悟られないよう、こっそりと子猫を捜索しているのに、
どうして、みんな、私にタレコミして来てくれるのだろう?
バレてるのか?
もしかして、マアコにもバレているのか?
野良猫は、上手に子猫を隠す。
バレてしまうと、子猫の居場所を替えてしまう恐れがあるのだが、
しかし、実はもう、居場所は分かっている。
そのことは、誰にも言っていないから、タレコミが止まないのも仕方のない事だ。
気にかけてくれるのは有り難いことだけれど、
騙すのならば、まず身内からというではないか。
申し訳ないが、私はタレコミが入る度、
そこには居ないと分かっているくせに、わざわざ確認をしに走っていく。
そして、こう告げる。
「いないですね。もしかすると、引っ越した直後だったかも。」
けれど本当は、マアコには、とっくにバレていると思う。
少し前までは、子猫の居場所とは、
おそらく敢えて真逆の方向から姿を現していたが、
最近では、授乳直後に、そこから真っすぐ姿を現すようになったから、
いやでも分かる。
とはいえ、隠し場所は知っていても、子猫の姿はまだ一度も見ていない。
何匹いるかも、全く分からない。
無理やり入り込めば確認できるかもしれないが、今はしない。
マアコが連れて出てくるまでは、気付かないふりをしている。
日数を数えれば、今日で子猫らは生後1か月になる。
そろそろ、出て来るかな?
マアコのほうは、
ケージの中で寛ぐほど、ケージに慣れてきた。
そして、撫ぜられると「嬉しい・・・かも?」と思うようになったようだ。
撫ぜていると、
コロンと転がる。
マアコならではの、「あんたを信じてもいいのかも?」の表現だ。
マアコ、信じちゃダメなんだよ。
あたしなんかを、信じちゃダメなんだ。
私は、もうすぐしたら、貴女を騙すことをする。
私は、そう思いながら、
「マアコ、この手を覚えていて。お願い、覚えていて。」
と縋るように何度もつぶやいている。
そろそろ、今後の方針を決めなければならない。
子猫は保護、マアコはTNRだ。
保護した子猫らは里子に出し、マアコは気ままな地域猫。
それが理想だが、そのどっちも、実は簡単なことじゃない。
さて、そろそろ腹くくるぞ。
おい、君達は行儀よく並んでいるけども?
お刺身待ちなのね?
今は平和に過ごしてくれたえ、い・ま・は。