今日は、
月イチで通う、認知症外来の日だ。
おはようございます。
とはいえ、ここ数か月、
私は、認知症外来で出される薬をかずこさんに飲ませていない。
アルツハイマーは、症状を遅らせることのできる薬がある。
私は、その薬を飲ませていないのだ。
あれを飲むと、最近のかずこは変に覚醒してしまう。
妄想と現実の狭間に困惑する様は、傍から見ていて実に苦しそうだ。
もう、これ以上ボケないで欲しいと望む段階じゃないんだ。
彼女から見える世界が、楽しい妄想の世界であるなら、それでいいじゃないか。
病状の改善ではなく、QOLの維持を優先させてやりたい。
だから今は、主治医と話し合い、心を安定させる薬を優先的に投薬している。
昨夜、私はかずこさんにタバコケースを贈った。
かずこが好みそうなデザインだ。
それを見て、かずこは私の予想を上回る反応を見せた。
「うわ~、これはすんばらしい!こりゃええ!!うわ~すんばらしい。」
そして、更に私の予想をはるかに上回る回数の贈答式と相成った。
「このタバコケースは、お前のか?」
「これはね、母さんに買って来たんだよ。」
そう言うと、かずこは大喜びする。
という流れを、3時間の間に7度繰り返した。
かずこは、一度も手を抜かず、全力で歓喜する。
私と父さんは、それを大笑いしながら見つめていた。
さて、今朝はどうだろう?
まだ贈答式は続いているかもしれない。
もしかすると、どこかへしまい込んで行方不明になっているかもしれない。
それなら、それで、いいんだ。
そしたらまた、同じのを贈ろう。
そして、何度も贈答式をして、
今度こそは、かずこの首にタバコケースを括りつけてやろう!
笑っていた方がいい。
きっと、その方がいいんだ。
老い痴れたかずこは、私の心を写す鏡みたいだ。
理性を一枚ずつ脱ぎ捨てていく母は、まるで猫のようだ。
嘘はもう通じない。
優しい言葉を掛けたって、心が毛羽立っていれば、
その殺気にも似た内心を、猫のように見抜いてしまう。
気が急いてイライラしてるのを隠して、
優しく呼んだって、チャー坊は側へ寄って来ない。
そんな時、かずこは訳も分からずイライラしてる。
猫とボケ老人は、薄っぺらな理性なんかじゃ騙せないんだなぁ。
で、君は何をしているんだい?
おたま「仕方ないから、おばちゃんに見せるだ」
何が仕方ないんだ?!
うねうね、うねうね
ああ、アピールしてんのね?
えっと・・・
はい、可愛いね~。おたま可愛いね~
おたま「そんな適当な褒め言葉で誤魔化されないだ。」
おたま「誤魔化されて、たま・・・る・・・か・・・」