白ウサに踏まれた日

うさぎと人間のこと
うさぎブログ

キャタピラー

2010-09-06 01:01:08 | 映画と本
若松孝二監督のキャタピラーを観る。
戦争で負傷し、手足・聴覚・言葉を奪われた軍神として
戻ってきた夫を介護する妻の話。
江戸川乱歩の芋虫を思わせる設定。
ジョニーは戦場に行った、なんていうのもあったな。

反戦映画なのだが、夫婦の映画でもある。

江戸川乱歩の場合、おどろおどろしさと同時に
奇形になった夫とのセックスの描写が印象に残っている。
反戦のメッセージを受けた記憶にない。
本だからかもしれない。

この映画の場合、
芋虫状態の夫の姿が赤裸々に描写される。
あんまり赤裸々に描写されているので、そのうち慣れてしまう。
夫に食事を与え、下の世話、セックスまでしているのが、
まるで、飼わざるをえない、飼育動物に餌を与えているように思えてくる。

なぜなら、この夫と妻の間には人間同士の気持ちの触れ合いがない。
一方的に要求され続けるだけでは、コミニュケーションはない。

月日がたつにつれ、妻は苛立ちをあらわしていく。
だいたい、もともと愛情ある夫ではなかった様子も伺えるし。
勃たないペニスの上にまたがり、ののしり、叩く。
夫は戦争中、現地の女性を強姦したときの記憶をよみがえらせおびえる。

それでも、妻は夫の介護を続ける。逃げ出すことは許されない。
夫は、最終的に、逃げたけどね。

・・・

蛇足。

今は、戦時中ではない。軍神を称える人たちも居ない。
貞操を守り、夫の介護をするのが軍神の妻の努めと言う国防婦人会も居ない。

だけど。

同じようなことは、今もないわけじゃないなと、背筋が寒くなった。

・・・

読み直すと支離滅裂。

奇形になった夫とのセックス、動けない相手の支配にどす黒い興味を抱き、
コミニュケーションをとれない相手への終わることのない介護に恐怖を覚え、
国防婦人会の姿に、だけど、きっと、巻き込まれるであろう予感に幻滅を受け、

嫌な映画だ。