(早春の川辺・・・運が良ければカワセミに出会えます)
如月(2月)と言えば大炉の季節ですが、我が家には大炉がありません。
大炉は、裏千家11代玄々斎が北国の囲炉裏にヒントを得て創出され、裏千家独特のものです。六畳の間に逆勝手に切られ、炉の逆勝手の点前を基本とし、極寒の2月頃に用いられます。
大炉がないことを言い訳に大炉の稽古をしていませんでした。・・・でもね!その昔、N先生が炉を工夫して大炉の稽古をしてくださったこと、それに触発されて自宅でも大炉仕様の稽古を積んだことを思い出しました。
特に大炉の初炭と後炭は趣深い大好きな炭手前で、いつ指名されても出来るように一生懸命励んでいた日々を鮮明に思い出したのです。
(如月になって「灑雪庵」の御軸を掛けました)
「大炉仕様で大炉の稽古をやってみましょうか?」と提案し、暁庵でもやってみることになりました。「オンライン稽古と言い、大炉の稽古と言い、準備が大変!」と心の中でブツクサ言いながら、準備や自主稽古に精出しました・・・なんか!新鮮な自分自身を感じながら・・・。
先ずは今入っている五徳(鬼爪)と炉釜を上げて、小さな炉用五徳と風炉釜(真形)に変え、五徳を逆勝手の炉の右側に寄せて入れ、ケイ爪が反対の角(雪輪瓦の方)に向けて設えます。風炉釜を使用するので、炉灰をたくさん足して高さを調節し(これが大変でした・・)、風炉釜を掛けました。
雪輪瓦の代わりに巴柄の小皿を仕切りに入れて出来上がり。実際の大炉の大きさを知ってもらう必要があり、ピンクのテープを貼って分かるようにしました。
通常の炉は一辺が一尺四寸(約42.4㎝)ですが、大炉は一尺八寸(約54.5㎝)で約12センチも違います。
さて、稽古はT氏の初炭から始まりましたが、まず羽箒の掃き方、湿し灰の撒き方の割稽古をしてもらいました。いつもの炉の初炭手前とは違うのでなかなか覚えきれないのですが、頑張って覚えてもらいました。
初炭の特徴は、灰器を使わず雪輪瓦の向こうに湿し灰を入れ、灰匙をさしておき、そこから湿し灰を掬い取って撒きます。下火を置くと乾いてしまうので、湿し灰に少し霧を吹いて濡れ気味にし、始まる直前に炉中に入れてもらいました。
大炉は逆勝手ですが、炭斗中の炭の置き方や炉中の継ぎ方は本勝手と同じです。
羽帚の掃き方と湿し灰の撒き方の割稽古のお陰で、T氏は初めての大炉の初炭をスムースにこなしています。
(水仙を天平瓦(写)に生けて・・・)
次いでAYさんの薄茶と濃茶点前です。逆勝手の稽古は本当に久しぶりです。特に足の運び(客付きの足で出入り)、袱紗は右に付け、袱紗捌きや茶碗を拭く位置などいつもと逆の右側なので頭の体操のようですが、薄茶が終わるころにはだいぶ慣れて、安心して見ていました。
濃茶は2人分、練ってくださって濃茶をT氏と暁庵でたっぷり賞味しました。濃茶は明昔(さやかのむかし、一保堂詰)です。
(後炭・・・釜を上げた炉中の景色)
午後の最初にM氏に後炭手前をしてもらいました。炭(輪胴、丸ギッチョ、割ギッチョ、丸管、割管、枝炭など)を予め雪輪瓦の向こうに用意しておき、ほうろくを灰器に使います。とても風情のある後炭手前をM氏がこれまたさらさらと見せてくれました。
ただ、初炭で入れた胴炭を割ったので、炭をなおすのがとても熱そうで、一番大変だったのではないかしら? あの熱さは半端ではありません。私たち客は「きれいねぇ~」と炉中の美しさに見惚れていましたが・・・。
皆で交互に、逆勝手で点てて頂いた濃茶と薄茶を味わいながら、如月ならではの大炉の稽古に励んだ一日でした。おりしも我が家の梅に初花が・・・。
君ならで 誰にか見せむ わが宿の
軒端ににほふ 梅の初花 源実朝 (金槐和歌集)