暁庵の茶事クロスロード

茶事が好きです。茶事の持つ無限の可能性に魅了されて楽しんでいます。2015年2月に京都から終の棲家の横浜へ戻りました。

錦繍の茶事に招かれて-1

2013年11月14日 | 思い出の茶事  京都編

    おりたちてけさの寒さにおどろきぬ
      つゆしとしとと かきの落ち葉深く    伊藤左千夫

11月10日、西をめざす高速バスに乗りました。
秋は足早に深まり、窓の外は紅葉の盛りです。
柿の葉は既に落ち、枝に残る柿の実も残り僅かでした。
景色に見惚れていると、一転にわかに黒雲があらわれ、
嵐のような横殴りの雨に襲われました。
前回のKさんの茶会もそうだったし、到着の頃には雨は上るだろう・・・と。
幸い、上手に雨が避けてくれたみたいです。

相客Kさんがピックアップしてくださって席入は12時です。
もう一人の相客Hさんも早や車でいらしています。
二度目の訪問なので、落ち着いて周囲を眺めると、
土間にアンティークの箪笥が三棹あり、その一つ、車箪笥の上に
落ち葉がいっぱい飾られていました。
正倉院展へ行った折に拾ってきたそうで、秋色のエントランスです。

            

二階の寄付には大正浪漫の振袖が衣こうに掛けられ、
本箱にもカーテンのように着物が掛けられています。
八畳の待合で白湯を頂き、腰掛待合へ移動しました。
待合と腰掛の火入と灰形がステキでした。
吉向松月窯のあさぎ釉火入も気品がありましたが、
腰掛で前回一目ぼれの赤楽火入(池川みどり造)に嬉しい再会です。

躙口を入ると、二畳上げ台目(?)の茶室です。
台目の下座床に「関」の一字のお軸、紫野喝堂和尚筆です。
心新たに炉の時季を迎えるのにふさわしい禅語で、
「関」(さとりの境地)へ到達すると、そこは終着点ではなく、さらに
東西南北に自由に己を活かす道が拓けている・・・という意味でしょうか。
・・・わかったようなわからないような、大好きな禅語です。

和やかに挨拶が交わされました。
ご亭主の笑顔も素敵ですが、御召し物がとてもお似合いでした。
錦秋ではなく「錦繍」と呼びたい枯葉色の訪問着のご亭主が
いろいろな魔法をかけて、茶室というシンプルな空間を
秋の彩りに染め上げていきました。
それで、「錦繍」の茶事と名づけました。

           
                昨秋の清水寺の紅葉

炉の初炭手前が始まり、半年ぶりで新鮮です。
新鮮と言えば、煙草盆の灰吹き、青竹の蓋置、そしてふくべの炭斗、
青竹をご自分で切り、干瓢の中身を処理した自作とか、びっくりです。
炉を皆で囲んで、炉中の景色、湿し灰の風情、炭手前を拝見できるのも
ワクワクし、温かな雰囲気が好いですね。

釜は姥口刷毛目、寒雉造です。
香合は独特の緑がかった灰釉が見られる葛屋、
これも揖保川焼の池川みどりさんの作品でした。

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        錦繍の茶事に招かれて-2 へつづく   


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