待合に飾られた嵯峨面(今年の干支の辰)
2月18日(日)に早春の茶事へお招きいただきました。
1月17日に黒子切除の手術をし、退院しても鼻に大きな絆創膏をしていました。元気でしたが、絆創膏がなんともうっとおしく気持が沈んでいた時に茶事のご案内が届いたのです。茶事バカなので何よりの励ましに思え、嬉しかったです!
昨年7月の「曉雪の朝茶事(立礼)」へお招きしたFさまからでした。手術のことはお知らせしていませんが、茶事の日は術後1ヶ月経っているし、2回目の手術前なので、恐る恐る伺うことに決めました。
不肖暁庵が正客を仰せつかり、次客はYさま、詰Kさまと連れ立って(実際はKさまに連れて頂いて・・・お世話になりました)、初めてのFさま宅へドキドキ胸を弾ませて訪れました。
お手紙には「お茶を差し上げたく・・・」とありましたが、Yさまのお話ではリニューアルしたらしく、その時に茶室もいろいろ改築して茶室披きの茶事も兼ねているらしい・・・とのことでした。
素敵なマンションのお宅へ伺うと、リビングの一角が待合になっていて、辰の嵯峨面が飾られていました。そちらでお支度し、汲出しを頂戴し、詰Kさまが鈴を鳴らして迎え付けを待ちました。
すると、羽根を手に持ったご亭主Fさまが茶室への通路から現われて、緊張しながら無言で挨拶を交わしました。
茶室への通路(廊下?)を通リ、三畳出炉の茶室へ席入しました。
床の間には時代を感じる床柱や、ナグリのある脇柱など風情のある古材が使われていて、後で滋賀県まで茶室に使う古材を探しに行ったと伺って、Fさまの熱い思いを感じます。網代天井は前の茶室に使っていたものだそうですが、時を経て味わい深い色合いになっていました。
ご挨拶の後に伺った御軸のお話が今も心に残っています。
御軸には、宝珠の画と「應茶 如花」が書かれていて、不昧公御筆でした。
宝珠の画は目出度く、茶室披きのご亭主の喜びが伝わってきます。
でも一番心に響いたのは「應茶 如花」、
季節がめぐって来ると、何事もないように花が咲きます
そんな花のように、人がやってくると、何事もないように茶を点ててもてなします
・・・なんて、さりげなく素敵なことだろう!・・・不昧公の茶の真髄に思いを馳せ、そのお軸を掛けたご亭主の思いに感動しました。 (じ~んっ)
そして、ご亭主Fさまはサラサラと自然体で、まさに「応茶如花」のおもてなしをしてくださったのでした。
Fさまは小堀遠州流をお習いで、小堀遠州流の炭手前をすぐ近くで拝見することが出来ました。思えば、Fさまとのお出会いは前田さまの茶事での炭手前からだった・・・と懐かしく思い出しました。
炭の大きさや形、置き方、黒の枝炭など裏千家流と異なる炭や手前に毎回驚き、目を凝らして魅入ります。最後に点炭が胴炭の外にポツンと置かれ、「これにてお終い」の意味かしら?
釜は七宝文甑口釜、綺麗さびの小堀遠州流らしい優雅な釜に見惚れ、釜好きとしてはこちらも嬉しいお出合いでした。
香合を拝見すると、黄土色の亀香合で手びねりのような素朴な味わいがありました。大田垣蓮月尼作と伺って、もう嬉しくって何度も飽かず眺めてしまいます。
懐石は茶室への通路が相伴席になっていて、その工夫が素晴らしいと思いました。長い正座が苦手な暁庵はじめ客3人はそこに椅子を出して頂き、椅子に腰かけて美味しい懐石に舌鼓を打ちました。
食べるのが先になり、春の食材をふんだんに取り入れてくださった、目にも美しい懐石の写真がありません(汗!)。懐石は同門社中のIさまが手間暇かけて作ってくださったそうで、客冥利につきます・・・美味しく完食いたしました。
(懐石の向付(水月窯)やバカラのグラスが素敵です)
信州産のお酒やワインをたくさんご用意いただき、ありがとうございます。
暁庵とYさまは一杯を味見をする程度でしたが、酒豪(?)のKさまはきっと存分に楽しまれたことでしょう。 つづく)
早春の茶事に招かれて・・・(2)へつづく