2013年1月29日に、古河電気工業などの研究開発チームは、イットリウム系超電導ケーブルでの送電実験で世界最高となる275キロボルト、150万キロボルト・アンペアの実証試験に成功したと発表しました。
1985年に高温超電導ブームを起こした酸化物超電導材料がやっと事業化の見通しが立ち始めたようです。
今回の実証試験成功を発表したのは、古河電気工業と国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の3者です。経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構は平成20年から同24年度までの5年間にわたって実施されている「イットリウム系超電導電力機器技術開発」プロジェクトの研究開発費を支援しています。5年間で約140億円を支援します。
超電導ケーブル実証試験の具体的な内容の説明は後回しにします。今回、古河電気工業などがイットリウム系超電導ケーブルの実証試験成功を発表した背景には、日本と米国、フランス、韓国、中国などの企業・組織などが、イットリウム系超電導ケーブルの製品化・事業化で激しく競合し始めていることがあります。ハイテク技術のグローバルな競争です。
中国やアジアなどの新興国各国は、これからの一層の成長を図るためには、社会インフラストラクチャーとして電力網を築く必要が高まっています。その際に、その電力網構築事業を受注したいと、古河電気工業などは考えています。その目標時期は2020年ごろのようです。
今回、古河電気工業と国際超電導産業技術研究センターが発表したイットリウム系超電導ケーブルの詳細は、2011年6月に発表しています。クロム・ニッケル(CrNi)基合金のテープ状基板に、イットリウム・バリウム・銅(Y・Ba・Cu)などの元素で構成される酸化物超電導体を結晶成長させたものです。この結晶成長では、イオンビーム支援蒸着法を利用しています。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/36/4a/8e79abc3195070593fa7aaee7080118f.jpg)
開発段階では、フジクラが基板を、昭和電線が酸化物超電導体の蒸着を担当し、古河電気工業が超電導ケーブルに仕上げています。これは、国際超電導産業技術研究センターがプロジェクトの取りまとめをしている研究開発チームの企業分担構成だからです。
古河電気工業は今後、イットリウム系超電導ケーブル事業を始めるためには、製造設備を確保する必要があります。それが、2011年10月に発表した米国の超電導線材子会社のスーパーパワー社(ニューヨーク州)の買収でした。同社は、オランダのフィリップス社の子会社でした。買収額は50億円前後と推定されています。この企業買収によって、古河電気工業は超電導線材の量産設備を確保したとみられています。
スーパーパワーは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の研究開発部門からスピンアウトしたベンチャー企業です。米国には、イットリウム系超電導線材を製造できる企業としては、アメリカン・スーパーコンダクターがあります。将来、同社と古河電気工業は競合するとみられています。
今回の超電導ケーブル実証試験に使った長さ30mの超電導ケーブルは、古河電気工業とフジクラが折半出資で設立したビスキャス(本社東京)が製造したそうです。ここで製造した超電導ケーブルは、古河電気工業の100%子会社である中国瀋陽市の瀋陽古河電纜公司の敷地内で、長期課電・通電試験を実施し、成功しました。
従来は66キロボルトケーブルだったものを、約4倍の275キロボルトケーブルに高電圧化するために、「超電導導体の外側に巻く電気絶縁層を従来の6ミリメートルから22ミリメートルと厚くするなどの工夫を加えた」と説明します。電気絶縁層は絶縁紙を用いているそうです。
超電導体のテープは表面が銅の色になっています。超電導体テープは液体窒素(沸点がマイナス196度、摂氏)によって十分に冷却されるように、超電導体テープ表面に銀(Ag)をメッキし、さらにその上に銅(Cu)をメッキしているからです。
電気絶縁層の外側に、イットリウム系超電導線材製の超電導シールド層を巻いて、強力な磁力が外側に働かないようにしています。その外側に保護層と断熱層を設けています。断熱層はプラスチックフィルムにアルミニウム蒸着したものを巻いたものだそうです。いろいろな材料を、その役割ごとに多層に巻いてケーブルに仕上げていることが分かります。
電力電線ケーブルは日本国内市場では、代替需要向けが主体になり、需要は今後あまり成長しないとの予測です。このため、国外市場を求める成長戦略が練られているようです。国内の電線メーカーはグローバル市場向けの布石を打っているようです。酸化物超電導材料を軸にしたハイテク製品の事業化競争がやっと本格化しそうです。
1985年に高温超電導ブームを起こした酸化物超電導材料がやっと事業化の見通しが立ち始めたようです。
今回の実証試験成功を発表したのは、古河電気工業と国際超電導産業技術研究センター(ISTEC)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の3者です。経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構は平成20年から同24年度までの5年間にわたって実施されている「イットリウム系超電導電力機器技術開発」プロジェクトの研究開発費を支援しています。5年間で約140億円を支援します。
超電導ケーブル実証試験の具体的な内容の説明は後回しにします。今回、古河電気工業などがイットリウム系超電導ケーブルの実証試験成功を発表した背景には、日本と米国、フランス、韓国、中国などの企業・組織などが、イットリウム系超電導ケーブルの製品化・事業化で激しく競合し始めていることがあります。ハイテク技術のグローバルな競争です。
中国やアジアなどの新興国各国は、これからの一層の成長を図るためには、社会インフラストラクチャーとして電力網を築く必要が高まっています。その際に、その電力網構築事業を受注したいと、古河電気工業などは考えています。その目標時期は2020年ごろのようです。
今回、古河電気工業と国際超電導産業技術研究センターが発表したイットリウム系超電導ケーブルの詳細は、2011年6月に発表しています。クロム・ニッケル(CrNi)基合金のテープ状基板に、イットリウム・バリウム・銅(Y・Ba・Cu)などの元素で構成される酸化物超電導体を結晶成長させたものです。この結晶成長では、イオンビーム支援蒸着法を利用しています。
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開発段階では、フジクラが基板を、昭和電線が酸化物超電導体の蒸着を担当し、古河電気工業が超電導ケーブルに仕上げています。これは、国際超電導産業技術研究センターがプロジェクトの取りまとめをしている研究開発チームの企業分担構成だからです。
古河電気工業は今後、イットリウム系超電導ケーブル事業を始めるためには、製造設備を確保する必要があります。それが、2011年10月に発表した米国の超電導線材子会社のスーパーパワー社(ニューヨーク州)の買収でした。同社は、オランダのフィリップス社の子会社でした。買収額は50億円前後と推定されています。この企業買収によって、古河電気工業は超電導線材の量産設備を確保したとみられています。
スーパーパワーは、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の研究開発部門からスピンアウトしたベンチャー企業です。米国には、イットリウム系超電導線材を製造できる企業としては、アメリカン・スーパーコンダクターがあります。将来、同社と古河電気工業は競合するとみられています。
今回の超電導ケーブル実証試験に使った長さ30mの超電導ケーブルは、古河電気工業とフジクラが折半出資で設立したビスキャス(本社東京)が製造したそうです。ここで製造した超電導ケーブルは、古河電気工業の100%子会社である中国瀋陽市の瀋陽古河電纜公司の敷地内で、長期課電・通電試験を実施し、成功しました。
従来は66キロボルトケーブルだったものを、約4倍の275キロボルトケーブルに高電圧化するために、「超電導導体の外側に巻く電気絶縁層を従来の6ミリメートルから22ミリメートルと厚くするなどの工夫を加えた」と説明します。電気絶縁層は絶縁紙を用いているそうです。
超電導体のテープは表面が銅の色になっています。超電導体テープは液体窒素(沸点がマイナス196度、摂氏)によって十分に冷却されるように、超電導体テープ表面に銀(Ag)をメッキし、さらにその上に銅(Cu)をメッキしているからです。
電気絶縁層の外側に、イットリウム系超電導線材製の超電導シールド層を巻いて、強力な磁力が外側に働かないようにしています。その外側に保護層と断熱層を設けています。断熱層はプラスチックフィルムにアルミニウム蒸着したものを巻いたものだそうです。いろいろな材料を、その役割ごとに多層に巻いてケーブルに仕上げていることが分かります。
電力電線ケーブルは日本国内市場では、代替需要向けが主体になり、需要は今後あまり成長しないとの予測です。このため、国外市場を求める成長戦略が練られているようです。国内の電線メーカーはグローバル市場向けの布石を打っているようです。酸化物超電導材料を軸にしたハイテク製品の事業化競争がやっと本格化しそうです。