ヒトリシズカのつぶやき特論

起業家などの変革を目指す方々がどう汗をかいているかを時々リポートし、季節の移ろいも時々リポートします

人気ミステリー作家のジェフリー ディーヴァー の最新刊「スキンコレクター」を読み終えました

2016年01月04日 | 
 米国の人気ミステリー作家のジェフリー ディーヴァー (Jeffery Deaver)の最新刊の単行本「スキンコレクター」(文藝春秋社が発行)を読み終えました。

 2015年10月15日に文藝春秋社が発行した単行本「スキンコレクター」は、首から下は左手の薬指一本しか動かせない、四肢麻痺の元科学捜査官のリンカーン・ライム(現在は、民間の科学捜査員)が主人公のシリーズ最新刊です。



 この最新刊「スキンコレクター」の前半の3分の2を占める約400ページまでは、“スキンコレクター”と仮称される犯人の犯行について描かれています。

 “スキンコレクター”は、毒薬で被害者の肌に、謎の“言葉”の入れ墨(タトゥー)を彫り、殺害します。非常に短時間で、見事な出来映えの入れ墨を彫り上げる優れた技能の持ち主です。

 ニューヨーク市内の地下道に被害者を連れ込む犯人の“スキンコレクター”は、リンカーン・ライムが以前に捕まえた連続殺人鬼の“ボーンコレクター”を尊敬し、見習おうとしているようです。

 正確には、“スキンコレクター”は、民間の天才科学捜査員のリンカーン・ライムが入れ墨連続殺人の捜査に乗り出してくることを予想して、その現場検証時の証拠を残さないように工夫します。それどころか、この犯人は眼には見えない仕掛けの毒物を、殺人現場に仕掛け、現場検証の担当員などの殺害も試みます。

 “スキンコレクター”はニューヨーク市内の地下道に被害者を連れ込んで、連続して二人を殺害します。さらに、毒薬を入手するために侵入したと考えられる病院内で、ある被害者を襲いますが、未遂に終わります。

 リンカーン・ライムとコンビを組むニューヨーク市警刑事のアメリア・サックスの義理の娘の恋人も襲われますが、未遂に終わります。

 そして、ニューヨーク市内で私営の科学捜査室を営んでいるリンカーン・ライムの部屋にも、“スキンコレクター”は侵入し、毒薬を仕掛けます。後で判明することですが、パートナーのアメリア・サックスに対しても、毒薬が仕掛けられていました。

 つまり、これまでの作品といくらか異なり、探偵役のリンカーン・ライムとアメリア・サックスにも魔の手が伸びます(正確には、これまでのリンカーン・ライムシリーズでも、リンカーン・ライムとアメリア・サックスにも危機は訪れましたが、犯人側がリンカーン・ライムなどの二人が気がつかないように巧みに立ち回るのは初めてではないかと感じます)。

 今回の最新刊「スキンコレクター」は、リンカーン・ライムたちが捕まえた“ウオッチメーカー”が収容先の刑務所内で死亡したというエピソードから始まります。

 この最新刊「スキンコレクター」は、リンカーン・ライムシリーズの第一弾の“ボーンコレクター”と、またリンカーン・ライムが好敵手と感じた“ウオッチメーカー”という、シリーズの節目に登場した犯罪者が関係しているのです。

 以下は、最新刊「スキンコレクター」のネタばらしです。その前提で以下をお読みください。

 最後の約100ページ分は、実は“ウオッチメーカー”が仕掛けた犯罪で、刑務所内で仮死状態になる毒薬を飲み、病院で息を吹き返し、他人を身代わりにして脱獄していたのです。

 そして、“スキンコレクター”たちを手先に使って、ニューヨーク市の地下道を通っている上水道に多数の人を殺す毒薬を注入しようとするテロを計画します。

 リンカーン・ライムたちは、表面に浮かんでいる“スキンコレクター”の連続殺人事件のおかしな点に気づき、背後に隠されたテロ事件を見破り、間一髪、阻止します。

 最後の約100ページ分は、その前の約400ページ分が布石だったことに驚かされ、お得意の大どんでん返しを楽しみます。

 リンカーン・ライムシリーズ第一弾の単行本「ボーンコレクター」は、日本では1999年9月に文藝春秋社が発行しています。今回の最新刊「スキンコレクター」は、リンカーン・ライムシリーズの“総集編”的な作品です。この結果、若い読者でも単行本「ボーンコレクター」や単行本「ウオッチメーカー」を読んでいない方には、この2作品を読み始める契機になりそうです。

 結果として、リンカーン・ライムシリーズの過去の作品が一層売れるのではないか(大部分が文庫本に)、こうした狙いを込めた最新作ではないかと推理しています。