反トランプの面目躍如:
本日の午前中も寸暇を惜しんで、ジムのサロンで拾い読み。「今頃そんなことを言うか」と思わせられた記事もあったが「よくぞ書いてくれた」とささやかに評価した記事を紹介しよう。
Tariff(関税)の関連で:
北アメリカでもヨーロッパでも波紋を巻き起こしているtariffの問題点を指摘してあったのを初めて見た。いや、私以外にも取り上げた者が出たかというような話である。確か署名記事だった。
要点は「トランプ大統領は関税を払うのが嫌なら(と書き出して『払うのはアメリカ向けの輸出業者でも輸出国でもなくて、アメリカの輸入業者だ』という肝心の点を明らかにしていたが)アメリカに来て生産せよと公言するのは、アメリカの労働組合員のhigh wageとunskillfulな労働者の質という点を見落としている」なのである。
「今頃になって言うか」と批判するのには立派な根拠がある。その第一は何度も何度も繰り返して紹介してきたことで、1994年7月に当時のUSTRの長だったカーラ・ヒルズ大使が東京で「対日輸出を伸ばすためには品質の向上が必須。その為には労働者向けに初等教育を充実させることに加えて、識字率(literacy)を上げることだ」と公開の席で発言された故事だ。31年も前のことだから敢えて故事とした。
アメリカ連邦政府の上位の方がアメリカの製造業界が何故国際市場で劣勢に立っているかを承知しておられたという歴とした証拠だ。私はこのパネルディスカションの場にいて聞いていた。アメリカの製造業が空洞化してしまった最大の原因が、組合に圧されて上げたhigh wage(組合員は時間給だ)と労働力の質にあった。この頃にはトランプ氏は47歳だったのだから、知らなかったとは言わせたくない。
ウエアーハウザーの我が事業部は労働力の質の改善と向上なくしては、日本は言うに及ばず世界市場の#1シェアーホルダーになり得ないと、副社長の指令の下に全員で組合に「君らの働き質が向上すれば、製品の質も上がり世界の何処の競争相手(competitor)にも負けなくなり、君らの職も安定する(job security)のだから、これまで以上に努力してくれ」説いて聞かせていた。
私などは「日勤のシフト明けの午後4時から、夜勤明けの夜の12時から、深夜番明けの朝4時からと彼らに残業代を支給して、一日寝ずに“We know you guys are doing pretty good job but we ask you guy to make a little more effort in order to up-grade our quality. Then, our quality will surely be the world greatest and be the No. 1 share holder in the world. Thereby, your job will be secured.”という風に切り出したのだった。
アメリカ式は先ず褒めることから入って行くので、「君たちは良くやってくれていると承知しているが、もう一踏ん張りしてより良い仕事をして製品の質を上げてくれれば、レイオフなんて怖くないとなるのだから頑張って」と語りかけるのだ。彼らを貶してプライドを傷つけないことが肝心な点だ。
彼らに繰り返して語り掛けてみれば、英語が理解できていない者がいるのは見えてくるし、片言しか話せない東南アジアからのボートピープルが混じっているのも分かるのだ。アメリカはこのように移民を受け入れて職を与えていたのは良いことだったが、生産の現場には言葉も通じない者たちがいるような事態にもなっていたのだった。折角、懐の深さを見せたことの「コインの裏側」が出ていたのだ。
私が不思議で仕方がないことは「私のようにこういう現場を見て、経験して、アメリカの製造業の問題点を指摘し続けてきたのに、宮嶋茂樹氏風に言えば『学者センセイがた』は何故この点をはっきりと論じないのか」と思っている。要するに「トランプ大統領が言われることに従って、アメリカに生産拠点を移せば、如何なる壁にぶつかるかは明らかだから、トランプ氏は間違ったことを言っている」のではないか。
He’s not a king.
これも署名記事だった。筆者は閣議に黒ずくめの服装をしたイーロン・マスク氏が参加して主役のようだったことも例に挙げて、憲法第Ⅱ条まで持ち出して、トランプ大統領の振る舞い方をあげつらうのだ。その締めのセリフがHe’s not a king.だったのだ。特に目新しい話題でもないが、つい先日はemperorと形容したかと思えば、本日はkingだったという点に興味を感じた。
NY Timesは何時もこういう論調なのは、十分以上に承知している。だが、トランプ大統領の辞書にはhigh wageとunskillful laborが抜け落ちてはいないかと気になった次第。
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