とにかく書いておかないと

すぐに忘れてしまうことを、書き残しておきます。

書評『蜂蜜と遠雷』(恩田陸・作)

2017-06-05 08:16:21 | 読書
 おもしろい小説でした。

 ピアノ新人コンクールの書類選考落第者に対するオーディションから始まり、1次予選、2次予選、3次予選、そして本選を時間軸に沿って物語は進行します。話の流れは明確であり、小説の骨格は揺るぎようがありません。しっかりとした物語進行の中で、主要登場人物が、コンクール出場者のが音楽を聴き、その感想がつながっていきます。一つの時間軸にたくさんの視点が描かれていき、各人の心の動きが渦をまくように全体の物語を形成していくというのが作者の発明です。コンクールの進行に従って、各人が刺激を受け、心を揺さぶられ、成長していくのです。

 音楽を言葉で表現するので、なんでもありで、音楽に対して申し訳ない気もします。しかも作者の意図に従って現実の様々な雑音的なものを無視しているような気がして、リアリティに欠けるような気もします。ちょっとマンガ的すぎるかなというのが一方ではかんじられました。

 しかし、そこまでやったらこの小説のよさも失われてしまいます。音楽を媒体としながらお互いが刺激し成長する、すがすがしい青春小説として読むべき本です。感動が残るすばらしい作品でした。
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